セパンがタイヤに厳しいサーキットであるのは今に始まったことではない。だが、世界中のさまざまなサーキットでテストを重ねても、温度が高くなったときには成功は保証されないという事実を、ブリヂストンは身をもって確認することになった。
ミハエル・シューマッハーとフェラーリが7位に入るのがやっとだったとはいえ、少なくともブリヂストンはライバルであるミシュランとの差を詰めるために何を改善すべきなのか、多少なりともハッキリとした考えを持ってマレーシアを離れることができた。
ブリヂストンユーザーの6人のドライバーのうち、タイヤの磨耗が原因でリタイアを強いられたのは2台目のフェラーリを駆るルーベンス・バリチェロだけで、皮肉なことにその間接的な原因はキミ・ライコネンの車から飛び散ったミシュラン製のラバーにあった。ミナルディのパトリック・フリーザッハーはジェンソン・バトンが撒いたオイルに乗ってコースオフ、そして2台のジョーダンとクリスチャン・アルバースが乗るもう1台のミナルディはチェッカーフラッグを受けることができた。
「言うまでもなく、今週末私たちのタイヤの性能がいつもの高い水準に達していなかったのは残念なことだ。だが、私たちはいくつかのポジティブなフィードバックを得てマレーシアを離れる。こうしたフィードバックは今後のタイヤ開発に生かされる」と、テクニカルマネージャーの菅沼寿夫は言う。「成績が良くなかったときほど、私たちのタイヤに関する価値ある洞察が得られることがしばしばある。この週末はまさにそうしたケースだった」
「私たちのタイヤの性能が十分ではなかったのは確かだが、この苛酷な気象条件の中で安全なタイヤを供給できたことには満足している。次の予定としては来週ムジェロでテストがあり、そこで来るバーレーンGPに向けたタイヤの仕様の査定を行うことになっている。私たちは現在の状況を逆転するために、可能な限り迅速に対応するだろう」
これに対して、当然のことながらミシュラン陣営のムードは明るい。なにしろ彼らはポールポジションとファステストラップを記録した上に、決勝でのトップ6を独占したのだから。ジャンカルロ・フィジケラとマーク・ウエーバーの2人が絡んでリタイアし、ジェンソン・バトンもエンジントラブルで早々に戦列を去ったことを考えると、ミシュランの優位はさらに圧倒的なものになっていた可能性もあった。タイヤに関係するトラブルに見舞われたのはライコネンだけだったが、それも原因は磨耗ではなくバルブの故障だったことが明らかになっている。
「猛烈な暑さとタイヤに厳しい路面との組み合わせにより、これがタイヤメーカーにとっては年間を通じて最もチャレンジングなレースだったと言われることはまず間違いない。そしてミシュランはこの試練を堂々たる成績で通過した」と、モータースポーツマネージャーのピエール・デュパスキエ。「それは今季残りのレースに向けての良い前兆だ」
「このレースのために選ばれたタイヤはきわめて効果的だったことが証明され、今回も多くのパートナーチームが上位の争いに加わった。パートナーのマシンがタイヤのトラブルに見舞われるという懸念は全くなかった。タイヤの磨耗率は2週間前のオーストラリアよりも高かったが、ミシュランを装着した全ての車はまだタイヤの寿命を残した状態でレースをフィニッシュした」
「私たちにとってはとてもいいレースだった。そして私たちのライバルにはとても悔しいレースだったに違いない。私たちはこうした極限的なコンディションの中でも1レースを走りきれるタイヤを作れることを実証した。今後はこれから迎えるサーキットに合わせてファインチューニングをしていくことになるが、それはどちらかと言えば楽な仕事だ」