F1シーズン序盤の3戦でフェラーリが連勝した後、フェラーリのテクニカルディレクター、ロス・ブラウンは自分が“難しい立場”にいるのを感じると語った。
ブラウンは、僅差の優勝争いを切望するF1ファンの気持ちも理解できるし、ティフォシたちを満足させたいという彼の欲求との間で矛盾した感情があると述べた。
「私の中にも矛盾がある」と、彼は英国のデイリーテレグラフ紙に対して語っている。「エンジニアとしては、最高のパッケージを手に入れるために努力している。だが、ひとりのレース愛好家として一歩下がって見ると、もっと激しい競争があった方がよいとも思うんだ」
「フェラーリの圧倒的な支配がF1界全体にとってよいことではないと言う人々にも共感できる。ただ、私たちにはフェラーリが勝つことを楽しみにしている巨大なファン層がある。もし私たちが負けたら、そうした人々はたいそう不満を感じるだろう」
フェラーリの2つのホームイベントのひとつ、サンマリノGPを間近に控えてブラウンが語ったところによれば、F2004はすばらしいパッケージであることが証明されつつあり、それはチームの予想をも上回っているという。
「1月にこの車を発表したとき、失望したという声が多かった。相対的には何の変哲もない車に見えたからだ」とブラウン。F2004が発表されたとき、あのラジカルなルックスのウイリアムズFW26がベールを脱いでからまだ何日も経っていなかったのだ。
「その後、シーズン開幕直前には新しい部品をたくさん取り付けて、イモラでとてもいいテストができた。自分たちの好調さを自覚したのはそのときだね。予想を上回るデキだった。一応わかっているつもりでも、やはりハッキリと自信の持てない部分があるものなんだ」
ブラウンは、序盤の連勝には幸運な面もあったことを認めている。特に決勝レースを迎えて気温が急激に下がり、ミハエル・シューマッハーに有利に働いたことが大きいという。しかし、同時に彼は、彼もチームもライバルの動向に影響を及ぼせるわけではないとも主張する。
「他のチームにはそれぞれ別のプライオリティがある。まず第一に今までよりも速くなることだ。そうでなければ、他のライバルたちに勝つことができない。つまり、私たちの競争相手は、急速に進歩するためにより大きなリスクを冒さざるをえない」
「開幕からの3レースの条件は、ミシュランユーザーには不利なものだった。ヨーロッパラウンドでは、その差が正常な状態に戻るだろう。レース当日のコンディションという点で、今のところ私たちは厳しい目には遭っていない。だが、シーズンが進むにつれて、いつか過酷な試練に直面する場面もあるだろう」
「一部の人々が、もう今シーズンは終わったかのように書いているのは残念なことだ。私たちは決してそう思ってはいない。今はすべてのチームが全力を尽くして見応えのあるレースを提供すべきときだ」