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今宮純による、2016年F1後半戦の「ホット・ポイント」

2016年8月14日

「賞味期限ぎりぎり」vs「メンタル改造中」の王座争い

 2016年のF1シリーズ後半戦は、タイトルを争うふたりにとって「苦しむ場」になっていくだろう。第12戦ドイツGPまで4連勝した現在の首位ルイス・ハミルトンが217点、2位ニコ・ロズベルグは198点と、19点差に広がった。このリードは小さくないが、大きくもない。


 ハミルトン本人は自覚している。すでにパワーユニットのターボチャージャーとMGU-Hは年間使用リミットの5基目、エナジーストア(バッテリー)とコントロールユニットも4基目。いずれもロズベルグは、まだ3基目だ。もし新たに6基目のコンポーネントを投入すると10グリッド降格のペナルティが下る。いまのハミルトンは時限爆弾を抱えているようなものだ。


 ハミルトンは2014年にピットスタートから3位に食い込む、離れ技レースをやってみせた。それくらいライバルに対してメルセデス・パワーにアドバンテージがあったから可能だった。現在は、どうか。マシン総合戦力でレッドブルとフェラーリは競合、彼らのパワーユニットは2年前ほどメルセデスに大きく劣ってはいない。10グリッド降格あるいは、それ以上のペナルティをハミルトンが受けた場合に、彼ら2チーム4台すべてをかわし、表彰台まで這い上がるのは決して容易ではないだろう。6位は8点、7位では6点にとどまり、そこでロズベルグが勝てば25点、ハミルトンが7位だと点差はゼロとなり、リードは消滅する。


 後半戦はパワーユニット全開率約70%の高速コース、スパ・フランコルシャンとモンツァから始まる。“賞味期限ぎりぎり”のリーダーは前半戦、最後のドイツGPではフリー走行の周回数を抑え、予選ポールポジションを逃し、決勝での最速ラップもない。4連勝で2位とのタイム差は5秒台、8秒台、1秒台、6秒台……独走せずにセーブを心がけていたことが伝わる。


 苦しいのはロズベルグも同じだ。ベルギーGP、イタリアGP、シンガポールGP、マレーシアGP、日本GPは、これまで勝ったことがない。昨年は予選でも鈴鹿以外すべてハミルトンの後塵を拝している。


 後半戦、再開後のロズベルグ未勝利グランプリが鍵となる。メルセデスに優位性がある高速スパとモンツァでは初勝利が欲しい。手段として、ここでフレッシュなエンジンを入れて、ハミルトンを揺さぶる戦術もありえよう。シンガポールとマレーシアは昨年フェラーリが制している。ハミルトンだけでなく他チームも要注意で、混戦パターンを警戒する必要もある。


 接近集団バトルになったとき、戦況を冷静に読み、ハミルトンの位置を意識した戦いに徹すること。オーストリアやドイツのように目前の敵に熱くなりすぎると失うものは大きい。ゲーム全体像を見きわめ、先を見通した「レース・メイキング」を実行するために、ピット無線規制緩和を巧く利用した緻密なコミュニケーションも重要だ。


 前半戦のロズベルグには時として、熱しやすく冷めやすい気性が見られた。それを後半戦は是正し、苦しいときこそ集中力=メンタル・パワーアップだ。今年からマネージメントを担当しているゲルハルト・ベルガ―の「コーチング」も役立てたい。

中堅チームで移籍ラッシュ? 2017年「シート争いの変」

 メルセデス勢によるタイトル攻防のほかに期待したいのは、2017年ストーブリーグの動向だ。ビッグ3チームは確定済みなので、個人的に変動をイメージしてみよう。


 ウイリアムズ:バルテリ・ボッタス+ジェンソン・バトン、フォース・インディア:ニコ・ヒュルケンベルグ+パスカル・ウェーレイン、ルノー:セルジオ・ペレス+エステバン・オコン、マクラーレン:フェルナンド・アロンソ+ストフェル・バンドーン、ザウバー:フェリペ・ナッセ+エステバン・グティエレス、マノー:アレクサンダー・ロッシ+ジョーダン・キング、ハース:ロマン・グロージャン+シャルル・ルクレール。こんな移籍や新人抜擢による新ドリームチーム体制は、いかがだろうか?

チャンピオン経験者をそろえたマクラーレンだが、チームが完全復活する前にコンビ解消となってしまうのか?
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ホンダの「10トークン」とマクラーレンの「2秒ストップ」

 さらに注目ポイントを順に挙げよう。新たにタッグを組んで1年半、ここまで31レースを戦ってきたマクラーレン・ホンダには、今季の残り10トークンを活用した大幅バージョンアップを期待したい。エンジン本体の開発(燃焼系)と同時に、さらなる燃費向上も待たれる。マクラーレンにはピットストップ作業の迅速化。ウイリアムズが実現したことを、彼らにも見せてほしい。常に上位で戦う状況になったとき、コンスタントに2秒強でピットを終える力は、間違いなくアロンソとバトンを鼓舞できるはずだから。


 ベルギーGP以降は、ピレリが昨年より軟らかなスペックのタイヤ投入を発表している。スパとモンツァにスーパーソフト、シンガポールにウルトラソフト、セパンと鈴鹿にソフト。タイヤ・マッチングの要素もフリー走行から注視したい。


 最後にレース・コントロールの問題になるがドライバー出身スチュワード(審査委員)について。今季は相次ぐルール変更や解釈をめぐる論議が多発しているだけに、経験と知見ある人物に公平で適切なジャッジを望む。これまで7名が務めているが、個人的には第12戦ドイツを担当されたエマーソン・フィッティパルディ氏を、もっと起用していただきたく思う。



(Text : Jun Imamiya)




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