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小松礼雄コラム 第11回:悔しい判断ミス。自己管理の難しさと夏休み

2016年8月11日

 新生ハースF1チームに移籍し、チーフエンジニアとしてチームのレース部門を統括する小松礼雄氏。ハンガリーでは小松エンジニアがまさかの判断ミスで、順位を落とすことに……今回はハンガリーGPとドイツGPの2連戦を振り返るとともに、新生ハースの前半戦を総括し、小松エンジニアの休暇の考え方に触れます。F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム第11回をお届けします。

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やっとスタート、新人チームの前半戦総括
小松エンジニアの、ハンガリーでの大きな判断ミス

 ハンガリーGPとドイツGP、今回は連戦となったこのふたつのレースについて、お伝えしたいと思います。まずはハンガリーですが、残念ながら僕の判断ミスで戦略を誤ってポイントを逃してしまいました。ロマン(グロージャン)は予選11位からスタートして、ピットイン前には10番手の位置にいましたが、ピットストップのタイミングが早すぎて、コースに戻ってからソフトタイヤで第1スティントを伸ばしていた(フェリペ)マッサと(ダニール)クビアトを抜けず、かなりタイムロスをしたことでレースが決まってしまいました。結局、マッサが25周目でピットインするまでずっとつかまってしまい、26周目までソフトで走っていた(ジョリオン)パーマーにまで抜かれてしまいました。

 誤算だったのが、19周目以降のマッサのペースの落ちがひどかったことです。ウチがピットインする前にマッサのペースを見たら、そこまで悪くなかったので、彼の後ろでコースに戻ってもそこまで悪くないと思っていました。ところがマッサのペースが19周目くらいからガクッと落ちて、その後25周目まで後ろに詰まってしまったのが、僕らのレースが終わったほぼ唯一の要因です。
 
 ロマンは特に(ニコ)ヒュルケンベルグと戦っていたから、ヒュルケンベルグをアンダーカットしようと思って14周目に入れたけど、完全に裏目に出ました。仮に逆にヒュルケンベルグにアンダーカットされちゃっても、ヒュルケンベルグはマッサとクビアトにつかまるので、その間、ウチは前が開いた状況でできる限り長く(少なくとも18周目くらいまでは行ける計算でした)走っていれば良かったんですよね。ホント、抜けないハンガロリンクで、この失敗は痛かったです。特にレース前のブリーフィングで「こういう状況だけは避けましょう」って話した状況に嵌ってしまったので、ちょっと情けないなって反省してます。


 このハンガリーでは他のもっと難しいことを上手くこなせていたので、レース中のこのミスはさらに残念です。先ずはタイヤの選択が簡単ではありませんでした。5月の時点でのピレリのデータでは、もしかしたらグレイニングがひどくなるかもしれないと思ってたから、一応カバーするためにエステバンはミディアムでロングランする予定にしてあったし、ソフトタイヤも余計に選んでおきました。しかし、木曜の路面計測データでそれはもう必要ないと思ったから、FP1でミディアム1セットとソフト1セットを捨てて、FP2は2人ともソフトとスーパーソフトに集中しました。

 この判断は正しかったし、レースに向けてソフトを2セットとっておくという判断も合っていました。さらに大雨で始まり、赤旗が何回も出た末にドライで終わった大混乱の予選ではチームとしてほぼ完璧に作業ができました。

 結果、ロマンがハミルトンからコンマ1秒遅れの11位。これはドライだったら行けていない位置です。こういう難しい予選でこの結果を出せたということはチームとしてかなり成長した証なので、とても嬉しかったです。だからこそ、特にポイントにつなげたかったけども、一瞬の判断ミスで結果を出せませんでした。

 この2戦、良い意味でのちょっとした驚きはエステバンの頑張りです。ハンガリーでもFP2の乗り出しから速かったし、ドイツではエース格のロマンを予選で上回りました。今までもそんなに精神的に強いタイプではないし、結果をまだ出せていないので、テストドライバーのシャルル・ルクレールがシルバーストーンでFP1乗り出してから、精神的にさらに厳しくなるかなと思っていました。

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