Hondaはシーズン後半、何とか復調に成功した。その勢いを来季につなげて、トップ争いをしたい。しかし来季からのブリヂストンタイヤへのワンメイク化は、Hondaを含む旧ミシュラン勢には高いハードルになりそうだと、中本STDは言う。
−後半の開発ペースが最初からあったら、ルノー、フェラーリと、三つ巴で戦えていたと?
「初期段階から絶対的な性能差はありましたので、三つ巴は難しかったと思います。でも状況次第では、勝てるレースも何度かありました。少なくとも最終戦を見る限り、ミシュラン勢ではトップの速さでした。けれどもシューマッハのあの速さは、特別でした。あのレースでは、ブリヂストンタイヤが1周1秒は速かったです。とはいえシーズン前半には、ミシュランの方が優勢だったときもあるわけで、われわれはそのチャンスを活かすことができませんでした。みすみす逃していました」
−シーズン後半の勢いで、来シーズンも戦えそうですか?
「そうしなければいけませんね。せっかくここまで勢いがついてきたんですから。この勢いでやっていくことができれば、開幕までにはルノーと並べると思います」
−来季もやはり、フェラーリ、ルノーが目指すべきライバルになりそうですか?
「来年はフェラーリだと思います。タイヤのアドバンテージが大きいですから。なんやかんやいっても、ブリヂストンを使い続けたことは、有利ですよ」
(注:来季からタイヤはブリヂストンのワンメイクになり、今季までミシュランを使っていたルノー、Honda、マクラーレンなども、すべてブリヂストンユーザーとなる)
−ここ数年で、ブリヂストンとミシュランのタイヤ特性は、ずいぶん近づいてきたといわれていますが、それでもやはり違いは大きい?
「確かに、ものすごく近づいています。でもコンパウンドはもともと、ブリヂストンが優秀です。非常に柔らかいゴムが使える上に、耐久性もあります。そういうタイヤ作りが得意です。それを支える基本の構造は1種類で、その基盤に、違う種類のゴムを張り替える作りです。一方のミシュランは、ゴムの種類は少ないのですが、クルマに合わせた基本構造を何種類も用意します。チームごとに、基本の構造自体が違うんです」
−それがミシュランの強みだったと。
「そうです。それに対してブリヂストンは、相変わらず構造は基本的には1種類だと思いますが、それとゴムとの組み合わせが絶妙でした。(ワンメイクとなる)来年も構造は1種類で、そこに何種類かのコンパウンドを合わせることになるでしょう。その場合やっぱり、ブリヂストンのゴムを使い慣れているチームが、どうしても有利になります。タイヤの摩耗とひとくちにいっても、表面を見てわかる磨耗と、肉眼では確認できないレース中の劣化による磨耗があるわけです。しかも、ブリヂストン特有の磨耗です。たとえばGP初日の路面が悪い時にひどいグレーニング(ささくれ磨耗)が出ていて、あれでレースはどうするんだろうと思っても、実際のレースではまったく問題なく走り切るんです。そういうのは、ミシュランではありえませんでした」