F1カレンダーで最も有名な開催地であるモナコは、対照的な性格を持つサーキットだ。モンテカルロの公道として毎日使われているその道は、とても狭くて、ラップスピードはシーズン中最低。2004年に勝ったヤルノ・トゥルーリ(ルノー‐ミシュラン)の平均速度は145.880km/hで、他のサーキットよりかなり低めとなっている。しかし観客にとってはコースとの距離が近いので、どこよりもスピード感がある。
ヨットがマストを並べる地中海の港の雰囲気と、輝かしい歴史の数々が、このグランプリを選手権の頂点に押し上げている。ドライバーなら誰でも勝ちたいと思うレースだ。今週末、ミシュランはF1通算81勝目を目指す。パートナーチームは開幕から連勝を続けており、今週末は昨年から続く7連勝を狙うことになる。
他のグランプリが時代とともに開催地を変えているのに対して、モナコはある意味で時代錯誤的なコースともいえるだろう。最終コーナーに名を残すアントニー・ノゲによって考案されたこのサーキットは、1929年に初めて使われ、1950年の第1回F1世界選手権にも組み込まれた。翌年カレンダーから落とされたが、55年に復活。以来、F1シーズンの欠かせない一戦となっている。
全長3.340kmのサーキットは、長年の間にもほとんど変わっていない。1973年に控えめな拡張が行われ、昨年新しいピット施設が完成したのが、大きな変化といえるくらいで、今年は世界選手権として52回目の開催になる。
ミシュランはモナコで優秀な成績をおさめており、2001年にF1復帰して以来、負けたのは1度だけ。モナコでは通算6勝しており、1勝目はジョディ・シェクター(フェラーリ)だった。彼はその年の世界タイトルを獲得し、その後、1981年ジル・ビルヌーブ(フェラーリ)、1984年アラン・プロスト(マクラーレンTAGターボ)、2002年デビッド・クルサード(マクラーレン・メルセデス)、2003年ファン‐パブロ・モントーヤ(ウイリアムズBMW)、2004年ヤルノ・トゥルーリ(ルノー)が、このF1至高のサーキットをミシュランタイヤで制した。
ピエール・デュパスキエ(ミシュラン・モータースポーツディレクター)
「高速コーナーが連続するバルセロナの次は、一転して低速コーナーばかりの狭いモナコです。モナコ・グランプリにむけて準備するのは、簡単にはいきません。特性が似ているサーキットなど、世界中どこを探してもないからです。本当に独特のコースです」
「モンテカルロ市街地コースはアスファルトが継ぎはぎだらけで、普段は一般の乗用車やトラックが走っています。多くの区間は頻繁に再舗装されていて、それがどのような影響をもたらすかは推測でしかわかりません」
「1周の平均速度がそれほど高くなく、路面の摩耗性もたいしたことはないので、モナコではかなり柔らかめのコンパウンドを使えます。しかし低速コーナーからの脱出で全開加速を繰り返しますから、リヤタイヤの状態には気をつけなくてはいけません。トラクションコントロールが適切に設定されていないと、摩耗率に大きく影響することがあります。リヤがフロントより早く摩耗しはじめると、クルマはオーバーステア傾向になり、とくに低速コーナー出口などではスロットルの開け方が難しくなります」
「とにかくモナコでは、タイヤの摩耗を管理するのが最大の問題です。しかしミシュランは伝統的にこのレースに強く、過去3年間は連覇しています。その記録を継続できるように、パートナーチームに全力で協力していくつもりです」
ウィリー・ランプ(ザウバー・ペトロナス、テクニカルディレクター)
「市街地コースであるモナコの路面特性は、一般的なサーキットとは異なるし、グリップもあまりない。平均速度も低く、速いコーナーは存在しない。そのためタイヤは柔らかめのコンパウンドが使える。摩耗を抑えるために、ダウンフォースは最大の設定になる。また、アンダーステアでもオーバーステアでもない、スムースでバランスのとれたハンドリングになるセットアップも重要だ」
「私たちは先日のポールリカール・テストで、タイヤの選択を決めた。ミシュランは仕事のやり方がプロフェッショナルで、多くの情報を提供してくれる。私たちの関係は1年目から良好だ」