今年ザウバーチームは、フェラーリとの関係を存分に生かして“青いF2003”でシーズンをスタートし、それなりのパフォーマンスを発揮するものと思われていたが、序盤はフェラーリの好成績にははるかに及ばず苦労を強いられた。
しかし、スイスのヒンウィルで新しい風洞が本格的に稼動し始め、新ラインナップのドライバー、ジャンカルロ・フィジケラとフェリペ・マッサが徐々にチームになじんでくるに従って、ここ数戦、ザウバーチームはどんどん強くなってきている。アメリカGPでは、レースの終盤、フィジケラがパンクに見舞われポイントを逃したものの、現在、チームはコンストラクターズ・チャンピオンシップでマクラーレンにあと2ポイントに迫る6位に位置している。
Q:シーズンも半分終わりましたが、ここまでのところ2004年シーズンの評価はいかがですか?
ペーター・ザウバー(以下PS):総括的に考えて、チームは前半9戦の結果にかなり満足していいと、私は思っている。これまで獲得した15ポイントは昨年の現時点より多いし、コンストラクターズでも6位に付けている。マクラーレン・メルセデスにはあと2ポイント及ばないが、明らかにトヨタ、ジョーダン、ジャガー、ミナルディより上にいる。
Q:スペインGPまでは少しスピードが足りなかったようですが、その理由は?
PS:その説明は簡単だよ。3月まで新しい風洞が稼動しないのが分かっていたから、4月下旬のイモラでのサンマリノGPで新しいエアロパーツを投入することを目標にしていたんだ。我々は目標を達成し、スペインGPでその効果がすぐに目に見えるリザルトとなって現れた。それ以来、C23の空力的な進歩を継続的に行っており、それでパフォーマンスが上がっているのだよ。
Q:ただ、マシンの見た目は、あまり変わってないようですが……。
PS:それこそが、エアロダイナミクスの素晴らしいところだよ。小さな変更が大きな違いを生むのさ。例えば、ブレーキダクトの最適化に取り組んでいるんだが、これによってブレーキングだけでなく、加えてエアロダイナミクスのパフォーマンスも向上した。これらの変更は、肉眼ではほとんど認められない。しかし、この進歩こそ、原寸大の車を風洞でテストすることがどれほど重要か、そのことを示している。50〜60%スケールモデルでは、風がブレーキダクトからその上部やホイールに流れるのを完全にシミュレートすることは不可能だからね。
Q:次にどんな変更をなさるつもりですか?
PS:フランスGPで新しいフロントウイングを、その1週間後のイギリスGPで新しいエンジンカバーを投入予定だ。
Q:C23は、フェラーリと同じエンジン、同じギヤボックスを使い、去年のフェラーリに似ているようですが、外部から見ると、そのわりにはザウバーとフェラーリのパフォーマンスはかけ離れ過ぎている、と感じる人間もいるようです。これについて、どのようにご説明なさいますか?
PS:いいか、現実的に言って、マシンのパフォーマンスは、エンジンとギヤボックスだけに起因するものではないのだよ。もっとも重要なファクターはエアロダイナミクスで、その点、我々は開発を始めたばかりだ。さらに、フェラーリは独自のリソースを持っているうえに、ミハエル・シューマッハーがいる。ミハエルはひときわ優れた能力を持つドライバーであり、今年はこれまで以上にいい仕事をしていると思う。まあ、その「何故こんなにフェラーリは速いのか」という意味の質問は、おそらく、今年こそチャンピオンシップを、と願いながら今シーズンに入ったチームにこそ向けられるべきだね。
Q:2人のドライバーについては、どのくらい満足していらっしゃいますか?
PS:とても満足だね! ジャンカルロはどんどん速くなっている。当初、彼は苦労していたが、C23が速くなればなるほど、彼のすばらしい能力を発揮できるようになってきた。ジャンカルロはベストドライバーの一人だとずっと思ってきたんだが、彼のパフォーマンスはその意見を裏付けているね。
フェリペは、初めて我々と組んだ2002年から成長を続けている。基本的な速さは持ち合わせていたが、昨年フェラーリのテストドライバーを務めたことでテクノロジーに詳しくなり、エンジニアに貴重な情報提供をできるほどだ。それに加え、ちょっとだけ年を取り、しっかりしてきた。フェリペはすばらしいポテンシャルを秘め、将来的に成功するドライバーだと、私は確信しているよ。
Q:ご自身は、ザウバーチームが今と同じレベルでシーズン後半を終えられると信じておられますか?
PS:ああ、信じているとも。一部の“ワークス”チームで行われている莫大な投資にはちょっと戸惑いはあるけれど、我々にはそれにチャレンジできるほどの強さがある。資金やリソースの面でディスアドバンテージを背負っている分、より有能でなくてはならないがね。チームは、サーキットでもヒンウィルのファクトリーでも一丸となって、とても頑張っている。さらに、風洞が的確にマシンのパフォーマンスを上げるのに、十分活用されている。
Q:つまりはコンストラクターズの5位を狙っているということですか?
PS:アメリカGPでは我々が非常に不運だったせいでマクラーレンに抜かれてしまったが、マクラーレンの技術面、金銭面を考えれば、当然といえば当然じゃないか。もちろん、簡単に負けを認めたりはしないがね。当面はトヨタ、ジョーダン、ジャガーを直接のライバルだと思っている。その中で、ジョーダンは我々と同じタイヤを使っている分、他の2チームよりも予想しやすいね。