メルセデスのDTMマシンを手がけるHWAが、マクラーレンに代わってF1チームを運営する計画があるとのうわさがドイツで流れている。
ドイツのフォーカス誌によると、HWA(メルセデスのパートナーであるAMGのモータースポーツ部門)がF1へのステップアップに関心を示しているという。ただしそれは、必ずしも新しいチームとして、ということではなく、メルセデスとの関係を利用し、マクラーレンに代わり、メルセデスのF1チームの運営を請け負おうとしていると、推測されているのだ。
HWAは、2000年以来メルセデス−ベンツのDTMマシンを製造し、走らせてきた。マクラーレンはメルセデスの現行のSLR(価格60万ドル)のデザインおよび製造に協力したが、次期スーパーカーについては、メルセデスとHWAのコラボレーションで製造されることになっている。
こうした背景と、HWAのトップに立つのがメルセデスの元CEO、ユルゲン・フバートであることから、メルセデスがマクラーレンチームの残りの株を買収して、2009年から完全な“ワークス”チームを作るのではないか、というウワサが生まれている。
チームボスのロン・デニスは、自分が永遠にチームの運営を続けるつもりはないことを公言しており、9月に行われたスパイ事件に関する2度目の聴聞会の後で、自分の右腕を務めているマーティン・ウィットマーシュに後を継がせる計画がすでに決まっているとほのめかした。
メルセデスは、1999年に数百万ポンドでマクラーレンの株40パーセントを取得、チームに参与した。しかし、今年1月にマクラーレン・グループ・リミテッドの株式の30パーセントを、バーレーン王室のメンバーが所有する持ち株会社、バーレーン・マムタラカト・ホールディング・カンパニーが取得することで合意したとの発表が行われていることから、チームを完全に買収する計画は、より複雑なものになるかもしれない。
この合意は、デニスと、メルセデスの親会社であるダイムラー・クライスラーAG、および長期にわたるマクラーレンのパートナーであるTAGグループとの交渉の末に成立したものだ。各株主の所有割合を見ると、ダイムラークライスラーが元々の40パーセントという最大の持ち分を保有し、マムタラカト・ホールディング・カンパニーが30パーセント、デニスとTAGが15パーセントずつとなっている。
もちろん、HWAの計画にマクラーレン側から抵抗が起こるとすれば(デニスが少なくともルイス・ハミルトンの初ワールドタイトル獲得までは現職に留まりたいと願うことは大いにありうる)、別チームをターゲットにする可能性も浮上してくる。プロドライブは、カスタマーカー問題の解決まではF1参戦を延期することになり、ルノーは、マクラーレン本部から持ち出されたデータを所持していたと認めたために、世界モータースポーツ評議会より重い制裁を科せられる可能性に直面しているのだ。
しかし実際には、HWAにとっては、どちらも手堅い候補とはいえないだろう。プロドライブについては、HWAもカスタマーカーに頼らざるをえず、プロドライブと同様の問題を抱えることになる。プロドライブはウィリアムズをはじめとするチームの提出した抗議のなりゆきを見守っている。
一方ルノーは、メカクロームとのエンジン供給契約を3年間延長したと発表した。つまり、世界モータースポーツ評議会から多額の罰金が科せられる可能性があるものの、F1から撤退するつもりはないということだろう。
しかしながら、罰金ではなく出場停止処分となれば、“理論上は第三者への売却も可能であり、新たな名称のもとで参戦を継続することも可能だ”とgrandprix.comが指摘している。1990年代半ばに参戦を休止し、メカクロームに後を譲ったのと同じようにだ。とはいえ、ルノーが、メルセデスのパートナーに喜んで身売りするかどうかは明らかではない。
一方、HWAは、F1参戦のうわさを否定している。
「全く真実ではない」とディレクターのユルゲン・マテスはsport1.deに対し、コメントしている。
「完全に推測にすぎない。現時点で、私たちはF1参戦の野心を持ってはいない」