パナソニック・トヨタ・レーシングのシャシー部門テクニカルディレクター、マイク・ガスコインが、フランスGPを振り返ると共に、今週末に行われるイギリスGPについて、選手権争いの展望についてなど、様々なことを語った。
Q:フランスGPでは、ヤルノ・トゥルーリが5位入賞という好成績を挙げました。とはいえ、予選は2位だったわけで、この結果はあなたにとって喜ばしいものだったのでしょうか?
マイク・ガスコイン(以下MG):大喜びというわけではないが、満足はしているよ。マクラーレンは、予選時の燃料搭載量から考えても、ずっと強力だったからね。キミ(ライコネン)は着実に順位を上げていったし、ミハエル(シューマッハー)もそうだった。フロントロウを取れたのは素晴らしいことだが、これは何よりもヤルノが予選で速いということからきているといえるだろう。私たちは、ルノーやマクラーレンよりも速いなどと言うつもりはないが、フェラーリに匹敵する速さは持っていると思う。決勝では、リヤエンドが安定しないという問題があったために、ヤルノは苦戦し、レースペースが上がらなかった。
Q:アロンソはあっという間にギャップを築いてしまいましたが、あれには驚きましたか?
MG:彼の積んでいる燃料の量を考えると、驚きだったね。ヤルノはマシンのパフォーマンスに苦しんでいた。レース中はだいたい1分18秒台で走行し、ベストラップは1分17秒7くらいだったが、金曜朝のプラクティスでは、同じくらいの燃料を積んで、約1分16秒17を楽に出すことができたんだ。我々はこの状況で最高の結果を出すべく、レースでは守りに入った戦略をとらざるを得なかった。2回ストップと3回ストップの選択肢があったわけだが、いいパフォーマンスが発揮できなかったため、2回ストップを選択せざるを得なかった。これにより、他のドライバーは、コース上で我々を抜いていかなければならなくなる。1回目のピットストップの際に、ミハエルの前のポジションをキープするようにもできたんだが、そうすると、すぐに後続グループに抜かれてしまうことになりかねなかったので、ミハエルは前に行かせて、バトン、フィジケラ、バリチェロを押さえ込むことにした。結局はそれがうまくいったと思う。
Q:最近のレースを見ていると、3回ストップと決めれば、その戦略で行かざるを得ない感じがしますが、そのようにレース中にフレキシブルに戦略を決められるというのは、今シーズンは珍しいことではないですか?
MG:ピットレーンが短く、タイヤは1セットしか使えないということで、2回も3回もそれほど変わりはないんだ。実際に、最適な戦略を考えた場合、両者とも有効だ。最適な形として3回ストップを選んでもいいし、少し短めのスティントを含む2ストップを選んでもいい。後者にすれば、グリッドも妥協しないで済む。フランスでは、3回ストップにして燃料をあまり積まなかったドライバーも何人かいたようだ。しかし、バリチェロの場合を見ると、3回ストップを敢行した彼は、2回ストップを選んだ我々に押さえ込まれて、戦略を生かせず、入賞できなかった。そういった意味では、我々の戦略はうまくいったと思う。バリチェロは最初のスティントではヤルノのすぐ後ろを走っていたが、最終的にはラルフ(シューマッハー)の後ろに順位を落としてしまった。我々は両ドライバーとも2回ストップでいった。ヤルノの後ろで押さえ込まれた3回ストップのドライバーたちは、ラルフの後ろにまで脱落したというわけだ。
Q:ヤルノが何台ものマシンを押さえ込んで走り続けることがよくあるというので、批判している人たちもいますが、これについてはどうお考えですか?
MG:ウチのマシンを抜くためには、後ろのドライバーたちはもっと頑張らなければならないというわけだね。決勝でマシンのペースが上がらず苦戦しているのは事実だが、我々はそれを乗り越えてポイントを挙げているわけで、いい仕事をしていると思う。今回のレースでも序盤からトラブルを抱え、それを十分に解決することができなかった。現状、ヤルノがマシンのパフォーマンスに苦戦を強いられているのは承知している。路面温度が上がるについてバランスがどのように変化していくのか、もう少しうまく予想できていればと思うよ。
Q:ラルフにとってのフランスGPはどうでしたか?
MG:予選で最初にアタックしなければならないという状況では、結局は、それによるダメージをどれだけ軽減できるかにかかってくる。1戦欠場すると、2戦は後方で苦戦させられるんだ。(予選で)ヘアピンでミスをしたが、それ以外はとてもいいラップだった。あとコンマ4秒縮められれば、モントーヤの前のグリッドが取れただろう。決勝では7位でフィニッシュし、2ポイントを獲得して、次戦の予選ではそこそこの出走順を手に入れた。