F1は今シーズン中に、何度か裁判沙汰を経験することになるかもしれない。来季の新ルールを作成するための、10チームの代表による話し合いがいっこうにまとまらないからだ。
エディー・ジョーダンは、ハンガリーGP開催中に開かれる話し合いで合意に達してほしい、という書簡を、各ライバルチームに送っていた。また、ジョーダンと、やはり弱小チームの代表であるポール・ストッダートとは、同じ懇願を金曜の記者会見の席でも繰り返していた。しかし、それにもかかわらず、各ライバルチームは、ブダペストに到着したときの考え方の相違を少しも解消できないまま、話し合いを終えることになってしまった。
英タイムズ紙によれば、各チームはまだ、FIAに提示された案に対抗できるような、全員一致のアイデアを見つけだせずにいるという。9月6日の期限までに代案が提出できなければ、FIAの案が強制的に施行されることになる。実際のところ、記者会見でほのめかされていた解決に近づくことのないまま、チーム代表らはハンガリーを離れることになった。
そのうえ、交渉に加わっている特定の団体が、ルールブックのある部分を現在のとおりにしておくために訴訟を起こすかもしれない。特に、タイムズ紙によれば、コストおよびスピードの削減と安全性の向上を目指してFIAが提案している、3リッターV10から2.8リッターV8へという変更に反対するために、エンジンマニュファクチャラーのBMWとメルセデスは法的手段をとる用意があるということだ。
F1の技術作業部会は、FIAの提案に対する実行可能な代替案をもう少しでまとめられそうだと考えている。フェラーリのロス・ブラウンは、ハンガリーGPの金曜日に、そう説明しようとした。
ブラウンは次のように語った。「空力に関するレギュレーションは、事実上合意に達していると思う。それは実現しうるレギュレーションだと、私はかなり確信を持っているよ。5つか6つのチームがすでにFIAに書簡を送り、それが彼らの望むレギュレーションであって、ほかのレギュレーションを準備することはないと伝えているはずだ」
「またタイヤのレギュレーションも実現可能だと思う。というのは、ミシュランとブリヂストンがFIAに書簡を送って、とある解決策を求めたが、それをFIAが受け入れたからだ。私が知る限り、ただ一つ議論の的になっているのは、エンジンレギュレーションだ。特に2つのチームがその提案に異を唱えている。しかし、マシンを製造し、来季のタイヤがどうなるかを知るということに関しては、もう問題はなくなっていると思う」
ストッダートも、技術作業部会がFIAの要求に応える解決策を見出すために努力しているのは認めているが、2005年のルールを最終決定する上で問題点は別にあると考えている。
「技術作業部会はまったく有能だと思うし、独自のやり方ができれば、この件の解決策などとうの昔に見つけられていたはずだ。何もかもうまく行かなくなるのは、次のレベルに進むときだ。計画はいろいろありすぎるし、意見はあまりにもバラバラだし、チーム代表らの全員一致が必要になればなるほど、技術作業部会の仕事は困難になる。それを解決するのは、彼らの力に余ることだ。これは何カ月も前にできていたはずのことなのに」と、ストッダートは述べた。
ジャガー・レーシングのCEO、トニー・パーネルの見解によれば、それぞれ自分のチームの成功を求めている10人にレギュレーションを決めさせるなど、混乱を招くだけだということだ。
パーネルは、タイムズ紙に次のように語った。「委員会では、何の合意も得られない。私たちに真に必要なのは、独裁者だ。ただし、善意の独裁者だね。チーム代表の会議のような民主主義は、最初から失敗するに決まっている。このスポーツの多くの面は改革が必要だし、私たちには透明性が必要だ。このまま続けていくことはできないよ」
ジェンソン・バトンの問題は、すでに契約認証委員会の独立した裁定に委ねられているが、F1界にとって「不満な冬」がもうそこまで来ているのかもしれない。