ジョーダンのティモ・グロックは、サードドライバーとしての通常の仕事をするつもりでカナダを訪れた。ところが、カナダGPで彼は初めてF1決勝に出場することになったばかりか、2ポイントも獲得してみせたのだ。
ウイリアムズとトヨタの4台が失格になったために7位に繰り上がったという意味では“タナボタ”とも言えるが、デビュー戦を慎重に走り切ったという点は評価できるだろう。カナダGPを終えたグロックが、思いがけなく訪れたF1デビュー戦について語った。
Q:今年初めてF1に乗ったにもかかわらず、これまで大きなミスはイモラの1回目のセッションで激しいクラッシュを喫してしまったことくらいですね。順調に進歩していますか。
「1ラップ1ラップ学ぶことがあるんだ。特に序盤戦はどんどん進歩できた。それまでテストしていなかったからね。2時間のプラクティスでは十分な経験を積めるとは言えない。でも、イモラでは多くのことを学んだよ。新しいサーキットへのアプローチの仕方が分かったんだ。モナコの前に、ポール・リカールで2日間テストして1000km走りこんだ。ニック(ハイドフェルド)がアクシデントに遭ったからね。この時はかなり進歩できた。やはり走行距離を重ねることが大事なんだ」
Q:サードドライバーとして毎戦走っているわけですが、レースに出たいという気持ちは当然あると思いますが。
「それは夢だよ。でも、だからって、他のドライバーにトラブルが起こるのは見たくない。僕のマネージメント担当者のプランとしては、金曜テストをやっていって、来年にレギュラーの座を目指すというところだったんだ」
Q:カナダGPの金曜日、レギュラードライバーのジョルジョ・パンターノが金銭上のトラブルのため走行できませんでした。あの日、あなたはどうしていましたか。
「通常の仕事をしたよ。そして、『今日は早く寝るように、よく寝るように』と言われた。『明日出走してもらうことになるかもしれないから』とね。信じようという気にはならなかったけどね」
Q:そして土曜日の早朝になって、正式に出場が決まったわけですね。大騒ぎだったのではないですか。
「レセプションに6時30に行って、(チームのスタッフに)車を取ってきてくれるようにキーを渡したんだ。でも10分待っても15分待っても、戻ってこない。『フリー走行があるんだ、今すぐサーキットに行かなくちゃ!』って僕が言ったら、『車が見つからない。ガレージがふたつあるんだけど、ひとつはすごく遠いんだ』と言われた。のんびりしてたんで、急かしたよ! 戻ってきたら6時55分になってて、ちょっと遅れちゃったよ。7時にミーティングだったんだ。ホテルから全開で飛ばしたよ」
Q:規則によってパンターノのエンジンを使わなければならなかったんですよね。でもエンジンをあなたのシャシーに載せかえるのではなく、パンターノのマシンをそのまま使うことをチームは決めました。かなり大変だったでしょう。予選ではハイドフェルドの約1秒落ちのタイムでしたね。
「目標はニックの0.5秒落ちだったんだ。でもマシンがあまり良くなかったし、僕自身も良くなかった。タイヤの温度を上げようとセッティングを変えたんだが、そのせいで予選はうまくいかなかった。ニックはビデオを見て『なんだよ、ひどいクルマだな!』って叫んでたよ。でも、問題はドライバーにもあったと思う。僕がアグレッシブすぎたんだ」
Q:1ラップ予選も難しかったことでしょう。
「あの日は一日けっこう大変だったよ。『ジョルジョじゃなくて、ティモが走ってる』と騒がれてね。頭をすっきりさせて自分の仕事に集中するのが難しかった。1ラップ予選というのは特に、経験がモノを言うからね。金曜日はプレッシャーなんてないけど」
Q:レースでは、1コーナーのアクシデントなど、いろんなことが起こりましたよね。
「スタートはすごくよかったんだ。1周目を終えた時点で10位か11位まで上がったんだよ。1コーナーでは右側にいて、2コーナーではイン側にいたんだ。でも、フロントウイングはちょっとダメージを受けて、そのせいで1回目のピットストップまでは厳しかった。アンダーステアがひどくて、ニックにかなりの遅れを取ってしまったんだ」