2004年5月23日、地中海に面したモナコ公国内に特設されたモンテカルロ市街地コースでF1世界選手権第6戦が開催され、ファン・パブロ・モントーヤが4位入賞。ラルフ・シューマッハはマシントラブルでチェッカーフラッグを受けられず、10位に終わった。
BMW WilliamsF1チームのドライバーはともにモナコにも住居を構えており、今回のレースはホームグランプリとも言える。加えて、昨年はラルフがPPを獲得、モントーヤが優勝を飾っており、ふたりは「レースが楽しみ」と語っていた。しかし木曜日のフリー走行でいきなりトラブルが発生する。ラルフのエンジンに異常が確認され、エンジン交換を余儀なくされたのである。これでラルフはスターティンググリッドを10番手下げるというペナルティを課されることになった。しかしラルフは、その後は順調に走行を重ね、初日のセッションを12位で終える。モントーヤはセットアップに集中的に取り組み、10位につけた。
例年どおり、金曜日の休息日を終えて土曜日にセッションが再開。注目の予選で素晴らしい走りを見せたのはラルフ。最終アタックでPPのトゥルーリにコンマ3秒遅れの2位につけた。この結果、スターティンググリッドは12位となったが、ラルフは「明日は入賞を目指してベストを尽くす」と前向きに語っていた。一方、セットアップに苦しんだモントーヤは「最終コーナーでミスをした」というが、9位につける。BMWモータースポーツのマリオ・タイセンは「ラルフのタイムは、我々のマシンの高いポテンシャルを示している。それだけに、木曜日にラルフのエンジン交換は本当に悔やまれる」と語っていた。
日曜日の決勝は完走わずか10台という波乱の展開となった。まずスタートでトヨタのパニスがグリッドにつけず、レースは仕切りなおしとなる。これでレースは1周減算され、全周回は77周となって、2度目のスタートを迎えた。2台のFW26はオープニングラップをモントーヤ9位、ラルフ13位で終えるが、3周目に3位走行中の佐藤琢磨がマシン後部からものすごい白煙を上げながらスローダウン。後続のマシンは白煙によって視界を塞がれ、ザウバーとマクラーンがクラッシュ、セイフティカーが導入されることになった。
ラルフはこのタイミングでピットイン、16位でコースに復帰する。モントーヤは上位のマシンがクラッシュでリタイアしたために7位までポジションを上げている。レース残り70周のところでセイフティカーがコースを離れ、レースは再開される。ここでモントーヤ最高のスタートを決め、フェラーリのバリチェッロをパス、6位に浮上した。
今回のモナコで2回ピット作戦をとっていたモントーヤは13周目に最初のピットイン、10位でコースに戻るが、前をジョーダンに塞がれてしまった。本来のラップペースはモントーヤが圧倒的に速いが、モナコではなかなか前に出ることができない。25周目にようやくロウズ・ヘアピンの進入でジョーダンを抜き去ったモントーヤは、約5秒もタイムを上げ1分15秒台のハイペースで前を追う。しかし、この序盤に失ったタイムロスはあまりに大きく、今季3度目の表彰台に上がることはできなかった。
一方のラルフはギヤボックスにトラブルを抱えながらも、ポジションを上げていく。レース終盤にはルノーのアロンソに周回遅れにされる際、クラッシュに巻き込まれそうになる場面もあったが、ポイント圏内の8位まで浮上。しかし残り8周のところで、ラルフはマシン後部から煙を上げながらピットイン。そのままマシンを降りることになった。
終盤のセイフティカー導入中にミハエルと接触したモントーヤ
「彼がブレーキを暖めるためにハードブレーキしたので、それを避けようとしたらぶつかってしまった」
入賞目前にしながらマシンを降りたラルフ
「残念なレースだ。序盤からギヤが不調で、最後は4速しかなかった。残り数周だったが、リタイアするしかなかった」