ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル・ホンダの走りを批評します。今回はF1第15戦バーレーンGPと第16戦サクヒールGPの週末を甘口の視点でジャッジ。
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バーレーンはホンダがパワーユニット(PU/エンジン)を供給するレッドブルにとって、あまり相性がいいサーキットではない。特にハイブリッド時代に入ってからは、表彰台に一度も上がっていなかった。それはバーレーンGPのコースレイアウトが、直線を低速コーナーでつないだ形となっており、レッドブルが得意とするコーナーでのアドバンテージをあまり活かすことができていなかったからだ。
それがホンダと組んで2年目の今年、レッドブルは第15戦バーレーンGPで表彰台を獲得した。マックス・フェルスタッペンが2位、アレクサンダー・アルボンが3位に入った。
このバーレーンGPでは、ホンダのパワーユニットを搭載する4台が、予選でトップ10に全車入った。これは今年の第13戦エミリア・ロマーニャGP以来のこと。エミリア・ロマーニャGPの舞台のイモラもパワーサーキットとして名高い。
さらに、その1週間後に行われたサクヒールGPでも、ホンダ・パワーが炸裂した。サクヒールGPは、同じバーレーン・インターナショナル・サーキットが舞台だが、使用するレイアウトが変更となった。バーレーンGPでは全長5.412kmの通常コースが使用されたが、サクヒールGPの舞台となったアウター(外周)コースは、1周が3、543mと近年F1が行われてきたサーキットの中ではモナコ市街地サーキットに次いで2番目に短い。
そのサクヒールGPの予選で、レッドブル・ホンダのフェルスタッペンがポールポジションに肉薄した。今年のレッドブル・ホンダが最もポールポジションに接近したのは、ポルトガルGPの予選で、ポールポジションのメルセデスとのギャップを今シーズン最小の0.252秒まで縮めたマックス・フェルスタッペンだった。
サクヒールGPではその差を、なんと0.056秒まで縮めた。
確かにサクヒールGPの舞台となったアウター(外周)コースは、1周が3、543mと近年F1が行われてきたサーキットの中ではモナコ市街地サーキットに次いで2番目に短く、それでいて平均速度は時速約235kmと速いため、タイムは必然と接近する(モナコGPの平均速度は時速約168km)。
それでも、全長5.412kmのコースで行われた前戦バーレーンGPの予選でのポールポジションのメルセデスとの差は0.414秒だったから、サクヒールGPではその差を大幅に詰めたことは間違いない。
アウターコースはコース数が通常コースよりも4つ少ない11個しかないため、「F1版ショートオーバル」と呼ばれたが、実際には全開率は通常コースとほとんど変わりなかった。メルセデスのデータによれば、アウターコースのラップタイムに占める全開率は65%と通常コースと変わりなく、1周の距離に占める全開率は逆に1%少なく、74%だった。
つまり、それはアウターコースの中で最もコーナーが多いセクター2でいかにスロットルを開けて走ることができるかがラップタイムに大きく影響するということを意味する。サクヒールGPで多くのチームが、事前に想像していたよりもウイングを立ててきたのはそのためだ。
その中でも、ダウンフォースをつけてきたのがレッドブル・ホンダだった。それはサクヒールGPの予選での最高速を見れば、わかる。レッドブル・ホンダの2台は20台中、マックス・フェルスタッペンが19位で時速325.6km、アレクサンダー・アルボンに至っては最下位の時速323.2kmだった。
それでも、フェルスタッペンが予選でトップと0.056秒差の3番手だったのは、セクター2の区間タイムが全体3位、セクター3の区間タイムが全体トップのスピードがあったからだ。そして、ストレートスピードを犠牲にしてでも、ラップタイムを稼ぐという戦略をホンダも納得し、それに合わせたセッティングを的確に調整できたからこそ、レッドブルとアルファタウリはサクヒールGPでもトップ10に3台のマシンを入れることができた。
しかし、こうして手にした予選3番手というフェルスタッペンのポジションは、スタート直後のアクシデントによって台無しとなり、アルボンはダウンフォース仕様を予選寄りに振ったにもかかわらず、Q2で敗退。アルファタウリはダニール・クビアトが7位入賞したものの、ピエール・ガスリーはバーチャル・セーフティカー(VSC)が不利なタイミングで出てしまい、11位に終わった。
結果は残せなかったが、確実に進歩していることを確認できたバーレーン2連戦。いよいよ、次はシーズン最終戦。アブダビでどんな走りをホンダ勢4台が披露するのか、楽しみにしたい。
(Masahiro Owari)