シンガポールGPのパドックで噂になっていた、フォルクスワーゲンのレッドブル買収説。しかし内情に詳しいドイツ人ジャーナリストによると「いまフォルクスワーゲンはグループ全体で大幅な節約を断行しなければならなくなったため、F1参戦は絶対にありえない」という。
すでに一般メディアで報じられているとおり、フォルクスワーゲン・グループはアメリカの排ガス規制に関する試験をクリアするために違法ソフトウェアを用いていた疑いで大損失を被る可能性が出てきた。一説には2兆円以上の制裁金を課されると言われており、そのとおりになれば、とてもF1に参戦することなどできない。
仮に制裁金が予想よりも低く、フォルクスワーゲンがF1に参戦するとしても、おそらく2018年以降になることから、2016年のレッドブルのパワーユニットに関しては、依然としてクエスチョンマークが残る。レッドブルはルノーがロータスを買収してワークスチームになるのにともない契約の早期解除を求めており、メルセデスとの交渉は不調に終わっている。
こうなると、レッドブルにとって残る選択肢はフェラーリとホンダだ。すでにヘルムート・マルコは「コンペティティブなパワーユニットを手にいれることができなければ、F1からの撤退もありうる」と語っており、フェラーリに対してワークスと同等のパワーユニットを要求している。
マクラーレンのエリック・ブーリエはシンガポールで「レッドブル・ホンダの可能性」について尋ねられた際、「時間的に遅すぎる」とホンダの2チーム目への供給を否定した。しかし、ホンダ側のリアクションは「まだリクエストがないので答えられない」と少しニュアンスが違う。
そこでレッドブルのクリスチャン・ホーナーにホンダ搭載の可能性を聞いたところ「ゼロではないが、現時点では1%未満」という答えだった。現状から判断すると、フェラーリのパワーユニット搭載で落ち着く可能性が濃厚だ。ただし「政治的な問題によってフェラーリとの契約が叶わなかった場合、レッドブルがF1から撤退する可能性はゼロではない」と、冒頭で登場したドイツ人記者は主張する。
レッドブルは「2020年までF1に参戦する」という協定を結んでいると言われており、もし今季限りで撤退となれば、違約金を含めて大問題となることは必至。最終的に、どう決着するかは、まさに政治力の勝負となりそうだ。
(尾張正博)