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【レースの焦点】姑息なほどに、頭脳的で緻密なメルセデスの戦略、感情的で短絡的だったベッテルのアンダーカットへの挑戦/F1第15戦シンガポールGP

2018年9月19日

 予選Q3が始まってすぐ、最初のアタックで圧倒的なトップタイムを記録した時点で、ルイス・ハミルトンは勝利のチャンスをつかんでいた。手中に収めたこのチャンスを逃さないためには、自分のレースに集中するのみ。

 今回も、メルセデスは理路整然と彼らの仕事を進め、ハミルトンがドライビングだけに集中できる環境を維持した──。シンガポールのようなコースでは、とりわけ重要な要素だ。

 優勝すると必ず、ハミルトンは“ここにいるチーム”“そしてファクトリーでハードワークを続けているチーム”への感謝を口にする。ドライバーがチームを代表して最後はひとりでコース上をいきマシンの操縦の責任を負うとしたら、レースチームもまた、ファクトリーで働く1500名の仕事を代表し、レース現場のコンディションから最大限の結果を引き出す責任を負う。スパ・フランコルシャンで苦汁を味わった後、驚異的な速さで問題を解決したファクトリーの努力を無駄にはしない──。そんな当たり前の事実がとても新鮮に感じられるほど、メルセデスの仕事ぶりは鮮やかだった。

 フェラーリにももちろん、同じ意志があるはず。しかし今回も、その意志を目に見えるかたちで表現することはできなかった。仕事のメソッドが原因なのか、彼らのアルゴリズムに決定的に何かが欠けているのか、あるいはモンツァの敗北の後、ひとりひとりの士気がわずかに下がった結果、チームとして元気を失ってしまったのか。シンガポールのフェラーリには、いつもの覇気が感じられなかった。

XPB Images

 予選Q1をウルトラソフトで戦い、14位というぎりぎりのポジションでQ2に進んだハミルトンは、それがタイヤ選択の段階での戦略ミスをカバーするためだったと言った。

「他のみんなは僕らより多くのハイパーソフトを選んでいたけれど、僕らはFP2までハイパーソフトを使うことができなかった。タイヤの差は思った以上に大きく、Q2とQ3にハイパーソフトを残すため、Q1はウルトラソフトで戦うしかなかった。あのタイムしか出せなかった後は、ちょっと冷や冷やしたよ。だから逆に、フェラーリが(Q2で)あのタイヤを使った理由が僕には分からない」

 ハイパーソフトのライフが短いからといって、ウルトラソフトでQ2を戦う戦略はメルセデスにはなかった。自分たちのQ1を見ればフェラーリにもそれは分かっただろうに……。実際、Q2の1回目のアタックにウルトラソフトを投入したフェラーリでは、キミ・ライコネンが“このタイヤでは遅すぎる”と言って攻めずにピットに戻った。セバスチャン・ベッテルのウルトラソフトのタイムはQ3に進めるものではなかった。

 他のどのコースよりも予選が重要なシンガポール。リスクの大きなコース。セッション中に路面温度が低下していくという他とは逆の環境。どこかに一貫性を作り、ドライバーがマシンと一体になって“リズム”をつかむことがとても大切な要素になる。ハミルトンはQ2でハイパーソフト2セットを使ったことが有益だったと言ったが、Q3最初の完璧なラップはそこで得た情報と感覚の結晶──。このコースでは“人間”の要素が大きいからこそ、Q2からQ3にかけて1秒以上のタイムアップが可能になる。

 他のサーキットでさえ人一倍“リズム”を口にするベッテルは、予選を通してマシンの能力を引き出すことが叶わなかったと言った。順調に進めれば「ルイスを倒せなかったとは思わない」とも。