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今宮純の決勝インプレッション:レッドブルの鋭さに「やられた」ベッテルの感情

2016年4月18日

 22台による「100%激戦」がコース上で展開された第3戦中国GP、見ごたえがあった。接触事故、セーフティカー導入、マルチストップ戦略などで荒れたレースに、マシンとパワーユニット戦力、チームとドライバー力が随所に表れた56周レースだった。


 全車完走は、とても珍しい。昨シーズンの日本GPで20台すべて完走はシーズン終盤のことで、今年は開幕3戦目で実現。11チーム、22人ドライバーのレベルが底上げされているから、この結果につながった。


 ロズベルグ6連勝は歴代3位に相当する。最多記録は9連勝(アルベルト・アスカリ/セバスチャン・ベッテル)、2位は7連勝(ミハエル・シューマッハー)、いま彼は、ここまできた。しかも初めて37.776秒リードの大独走ウイン。2014年パワーユニット時代になってから、これほどの大独走は誰もできなかった。“無敵感”をロズベルグはF1キャリア11年目で初めて知った。


 ライバルを襲った不運の連鎖によって楽勝できたように見える。だがロズベルグはQ2をソフトタイヤでアタックして3番手で通過、Q3はスーパーソフトで、きっちりポールポジションを決めた。フェラーリふたりが、そろってミスしたのに対して、2本目のアタックを丁寧に3セクターともミスなくまとめた集中力は、ずば抜けていた。


 注目のスタート、そつなくいったロズベルグ。予選2位のダニエル・リカルドに先行を許しても、あせらずチャンスを待ったのが、とても冷静だ。スタートに賭けていたフェラーリ勢は互いに接触で後退、ルイス・ハミルトンもフェリペ・ナッセと絡んで、ライバルが次々と落ちていく展開に。


 20周目にソフトへ、36周目にミディアムへ。落ち着きはらった2ストップ作戦は攻守わきまえた最善の動きだ。戦況を読み、ペースをコントロールした結果が37.776秒差の無敵独走。やるべきことを、やりきった。


 視点を変えよう。フェラーリは願ってもない好機を逃した。ハミルトンにはギヤボックス交換で5グリッド降格ペナルティがあり、さらに予選のパワーユニット不調で最後尾という事態に陥った。ロズベルグを「1対2」で包囲できる情勢だ。それなのに予選Q3アタックでキミ・ライコネンもベッテルもミスと、はやりすぎた。スタート直後の1コーナーでもライコネンが深く突っ込みすぎてアウトサイドへ、そこにベッテルがセンターサイドで行き、空いたインサイドにダニール・クビアトが。無茶な攻撃ではない。ベッテルは無線や会見で非難したが、審査委員アラン・ジョーンズ氏が「レーシングアクシデント」におさめたのは、まっとうな判断だと思う。


 フェラーリ勢が勝機にあせりミスを重ねた週末に、レッドブル・チームは粛々と取り組んでいた。驚いたのはレスダウンフォースの空力セッティングと、さらに強めた前傾車高姿勢でカーバランスを見出していったこと。パワー重視のコースに対し、非力な彼らはセクター3の1175メートルの直線に、それで対抗しようとした。そうするとブレーキング姿勢がナーバスになり、タイヤ・ロックアップ現象となるが、リカルドもクビアトもその挙動が無く、フリー走行からシャープな減速ができていた。


 オーバーテイクの最後の決め手はタイヤの履歴でも、デグラデーションの差異でもなく、サイド・バイ・サイドに持ち込んだ瞬間の「ブレーキング・スタビリティ」だ。これが今年のレッドブルRB12の切り札。スタート直後、1コーナー減速でクビアトにインから刺しこまれたベッテルは、かつて自分が乗っていたマシンだけに「やられた」と感じたのだろう。だから、よけいに感情的なコメントになったのかもしれない。


 あちこちでレッドブル勢は切れ味鋭いブレーキングを見せた。4周目に18番手まで転落したリカルドが、ずばずば抜いて、4位まで挽回したのは恐るべきブレーキング・スタビリティに、ほかならない。コーナー旋回速度でメルセデスに迫るレッドブルは、フェラーリをしのぐ減速力安定性も秘め、第3の存在へと、のしあがってきたような気がする。


 ロズベルグ開幕3連勝、ベッテル2位、クビアト3位、リカルド4位。上海で、きらりと光ったレッドブル勢のパフォーマンス。今シーズンの戦力構図は1戦ごとに現在進行形で変わりつつある。中間勢ではメルセデスのパワーユニットを使うウイリアムズとフォース・インディアが下落して、ひたひたとトロロッソが来ている。ロズベルグ大独走6連勝の裏に、2016年「春のチーム相関図」最新変動が見てとれる。



(Text : Jun Imamiya)




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