スポンサー契約を打ち切ったハースF1、ロシア企業ウラルカリへの返金を拒否し、11億円の補償金を要求
2022年4月15日
ハースF1チームが元タイトルスポンサーであるウラルカリ社との契約を一方的に打ち切った後、契約金の扱いについて両者の意向に食い違いがあり、争いが法廷に持ち込まれる可能性が高まってきている。
ロシアがウクライナ侵攻を開始したことを受け、ハースはロシア企業であるウラルカリ社とのタイトルスポンサー契約、ロシア人ドライバーであるニキータ・マゼピンとのレースドライバー契約を解除した。ウラルカリ社の共同オーナー、ドミトリー・マゼピンはニキータの父親であり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と強いつながりを持つ。
プーチンとの関係から、マゼピン親子はアメリカおよびEUのブラックリストに載せられた。
ウラルカリ社は、2022年シーズン開幕前に契約を一方的に打ち切られたとして、3月9日に声明を発表、支払い済みのスポンサー料金の返金をハースに求める意向を明らかにした。
ウラルカリはハースに対し、1200万ユーロ(約16億円)の返還を求めている。しかしハースチームはこれを拒否したうえで、「契約解除による利益損失分」として800万ユーロ(約11億円)の支払いも要求した。
これだけ両者の意向が異なることから、ハースとウラルカリが近々法廷で争うことになるのは明らかだ。
ハースがウラルカリに送った書状の内容は広く知れわたっており、そこには「複数の法学者や判例法によれば一致して、相手方の違反により契約を解除した当事者は、契約に基づいてすでに受け取ったものを相手に返還する義務はない」との主張が記されている。
「従って、頭金12,000,000ユーロ(約16億円)の返還を求めるウラルカリ社の主張には根拠がなく、拒否される」
ハースは、ウラルカリが同チームのイメージを傷つけたと考え、それが契約違反であると主張しているようだ。
ハースの法務チームは、ウラルカリ社は“利益の損失”の補償としてさらに800万ユーロ(約11億円)を支払うべきだと主張、「前述の金額がハースに支払われない限り、ハース側がF1マシンを引き渡す義務はなく、F1マシン引き渡しは行われない」とも記している。このF1マシン引き渡しというのは、マゼピンには2021年にドライブしたシャシー1台を受け取る権利があると定めた契約条項のことを指しているものとみられる。
ハースはこの状況について公式コメントは出していない。しかし、チームに非常に近い人物が、オーナーであるジーン・ハースのこのスタンスにマゼピン家は驚いていると明かした。
「世界が困難な状況にあることは誰もが理解している。そのなかで、ハースが、契約において合意したサービスを一切与えることなく、一方的に契約を終了し、その契約によって支払われた金を保持する権利があると主張するのは、明らかに馬鹿げている」とその人物は述べている。
「彼らはロシアからの資金を使うことに問題を感じていないようで、それどころかさらなる支払いを求めている。そして彼らは同時にロシア人をそばに置くことは望んでいないのだ」
マゼピン家と過去数年、緊密に働いてきたある人物は、こう語っている。
「昨シーズン、チームが資金を切実に求めていた時に契約したタイトルスポンサーに対して、こういった仕打ちをするというのは本当にショッキングだ。良い結果を達成することを望み、チームスタッフに対して追加のボーナスを出すため、契約で決めた金額以上を提供しようと申し出た相手に対してだ」
この争いがどこの裁判所の管轄になるのかは不明だが、ハースはノースカロライナの管轄に属すると考えている。もし裁判がアメリカで行われるなら、ウラルカリは弁護士を見つけるのに苦労することになるだろう。アメリカ政府による制裁措置の関係で、アメリカの弁護士がウラルカリのために仕事をすることはできないからだ。
(Grandprix.com)
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