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ファンを惑わせた“時限式”予選システム導入の顛末【F1黒歴史2016】

2016年12月22日

 2016年のF1は、ルールを巡ってさまざまな混乱が起きたシーズンでもあった。そのなかでシーズン開幕前から話題を集めたのが、新しい予選システムだった。


 F1の予選システムは、2006年にノックアウト方式が導入され、これまで10年間にわたって基本的に変わりなく行われてきた。ところが、メルセデスAMGの一強状態が2年間続いたこともあり、FIAはスタートポジションを少しでも混乱させてレースをエキサイティングにしようと、2015年末から予選システムの変更に乗り出した。


 F1界のボスであるバーニー・エクレストンは、リバースグリッド導入という過激な変更プランを希望していたが、ほぼトップチームで構成されるストラテジーグループによる会合で、この案が却下。そこでFIAのレースディレクターを務めるチャーリー・ホワイティングが、ノックアウト方式に変更を加えた“時限式”ノックアウト方式を提案した。


 これは第1セッションとなるQ1を16分に設定し、さらに開始から7分時点で、最下位タイムの1台が脱落し、その後90秒ごとにその時点で最も遅いドライバーを1台ずつ脱落させるというものだった。


 ウインターテストで多くのドライバーが反対していたにも関わらず、FIAは開幕戦に新方式を導入。しかし、グリッドは混乱するどころか、ほとんど変化が起きなかった。それは新方式が速いマシンにより有利に、遅いマシンにより不利になるように働いていたからである。


 例えば、従来の方式では時間内にベストタイムを刻めばよかったため、最低でも2回はアタックできた。そのため、遅いマシンでも路面コンディションが良くなったセッション終了間際の2回目のアタックで素晴らしい走りをしたり、逆に速いマシンは渋滞にはまるなど、波乱が起きやすかった。


 しかし、7分後から1台ずつ落ちていくというシステムでは、事実上、下位チームは1回しかアタックはできないのである。


 さらに残ったマシンが7分後からは90秒ごとに1台ずつノックアウトされるというこのシステムは、タイムアタックを行っている途中でも落ちてしまうため、見ているファンにとってもわかりづらいシステムとなって大きな不評を買った。


 そのため、開幕戦ではレース当日の日曜日の朝に、チーム代表らが緊急会議を開き、満場一致で新予選方式の全廃に同意した。しかし、FIAはチーム側の要求を受け入れず、2戦目のバーレーンGPでもまったく同じシステムを採用。だが、結果は火を見るより明らかだった。


 新予選システムに欠陥があることを認めたFIAは再度、全チームから出された要請を受け入れ、F1委員会および世界モータースポーツ評議会での承認を経て、第3戦中国GPから2015年までと同様の予選システムが復活したのである。


 予選システム以外でも、2016年に新しく採り入れられたものがある。それは新しいコンパウンドとアロケーション(分配)システムである。

2016年、新たに導入された紫のウルトラソフトタイヤ
2016年、新たに導入された紫のウルトラソフトタイヤ

 ピレリが16年に投入した新しいコンパウンドはウルトラソフトで、これは全コンパウンドの中でもっとも軟らかい。そのため、モナコ、シンガポールの市街地コースのほかカナダ、オーストリア、アブダビに投入された。


 アロケーションはこれまで各グランプリにピレリが指定した2種類のコンパウンドが持ち込まれ、レースでは2種類のコンパウンドを最低でも1回は履くこと義務付けられていた。それが16年はピレリは3種類のコンパウンドを指定。


 さらにその3種類のタイヤからピレリが“強制コンパウンド”を指定。ドライバーはこの強制コンパウンドを含む2種類のタイヤをレースで最低でも1回ずつ履かなければならないというルールに変更された。


 このルール変更は大きな混乱もなく、シーズンを通して採用され続けた。しかし、この変更によって、予選やレースがエキサイティングになったかというと疑問は残る。なぜなら、予選でメルセデスAMG以外のドライバーがポールポジションを獲得したのは、モナコGPのダニエル・リカルドただひとりだからだ。


 レースでメルセデスAMG以外が制したのも、スペインGPとマレーシアGPのレッドブル勢だけ。しかも、この2勝はいずれもメルセデスAMGが同士討ちしたり、スタート直後に最後尾まで下がったり、エンジンブローでリタイアしたという結果だった。


 レースをエキサイティングにしたいというFIAの気持ちは理解できる。しかし、一流企業の社員も顔負けの才能を持つF1の優秀なエンジニアたちは、どんなルール変更にも対応する能力があるということが今回の一件でよくわかった。


 今後、FIAには小手先のルール変更ではなく、チームのエンジニアにも負けない優秀なスタッフを取り入れ、レースがより盛り上がるような画期的なアイディアを発案してもらいたい。


 次回掲載予定の【F1黒歴史】では、厳格にマニュアル化された無線規制や、トラックリミット規制など、ドライバーを悩ませたルールについてお届けする。



(Text : Masahiro Owari)




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