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【特集】バトンは来年、日本で走るべき? 「F1休養期間のバトンに勧める6つのプラン」

2016年11月19日

 2017年シーズン、ジェンソン・バトンはフルタイムのF1ドライバーの仕事から離れる。マクラーレンのリザーブドライバーとして残留し、チームとエンジンサプライヤーのホンダにおいてアンバサダー的な役割を務めるが、F1レースドライバーとしての仕事は少なくとも1年は休むことを決めた。


 300戦以上に参戦し、15勝を挙げ、タイトル獲得経験を持つ、36歳のバトンには、F1でやり残したことは何もない。1年休養というF1では異例の決断をしたバトンは来年をどう過ごすのだろう。英AUTOSPORTの6人の執筆メンバーが「F1休養中のバトンにしてほしいこと」を自由に語った。

「バンドーンと交代し、スーパーフォーミュラへ」

by ミッシェル・アダム


 2017年、マクラーレン・ホンダはバトンを外し、ストフェル・バンドーンをレギュラーとして走らせることを決定しており、これは十分にうまくいきそうに見える。では逆に、スーパーフォーミュラでバトンを走らせるというのはどうだろうか?


 今シーズン、バンドーンはマクラーレンのガレージで礼儀正しく笑顔を見せるか、バーレーンGPでフェルナンド・アロンソの代理を務めた場面以外では、日本でのレースに専念していた。マクラーレンはこれをGP2タイトル獲得後の「F1参戦のための良い準備」だと認識しており、バンドーンもまた順調に適応してみせた。デビューシーズンで見事2勝を挙げ、チャンピオンから6点差のランキング4位を獲得したのだ。


 バンドーンは日本の、非常に優れた、スピードのあるレースカーを楽しんだ。今年のはじめに英AUTOSPORTが、世界各地で行われる全カテゴリーのスピードを調査しランク付けをしたところ、スーパーフォーミュラはF1に次ぐスピードを有することが判明し、インディカーやLMP1よりも速いという結果となった。


 F1でテストドライバーを務めていたジェームス・ロシターもスーパーフォーミュラに参戦、ダラーラシャシーでのコーナリングには、タイヤ戦争が激化していた2000年代中盤のF1マシンに匹敵するほどの速さがあると、彼は主張する。この時代のF1はバトンにとっても親しみのあるものであり、良い時代だったとたびたび振り返っている。

2016年スーパーフォーミュラ ストフェル・バンドーン
2016年スーパーフォーミュラ ストフェル・バンドーン


 バトンは間違いなく、スーパーフォーミュラを楽しむことができるだろう。同シリーズにおけるホンダエンジンの性能はトヨタを上回るものではないが、その性能差は彼が2シーズンに渡ってF1で直面してきたほど大きくはない。バンドーンと同じように、競争力を存分に発揮できる下地はあると言える。4月下旬から10月下旬にかけて、鈴鹿での2戦を含む7戦で構成されるスーパーフォーミュラの日程は、まったく過酷なものではない。たとえ参戦を決定したとしても、ひとりの人間として家族と過ごす時間は十分に取れる。


 また、実現すればホンダにとっても大いなる戦力となる。すでに日本と多くの関わりを持つF1チャンピオンが、国内最高峰のレースに参戦する様を想像してみてもらいたい。グッズもホンダ車も、きっと飛ぶように売れることだろう。


 マクラーレンはバンドーンを2017年へ向けての即戦力として維持するために、今季は日本へと送り込んだ。2018年にバトンを再度レギュラードライバーとして起用することを真剣に考えているのであれば、スーパーフォーミュラのシートを与えることで、お互いにとって楽しくウィン−ウィンなシチュエーションが築けるのではないだろうか。

「ル・マンへの挑戦で将来のキャリアの可能性を開く」

by グレン・フリーマン


 現役F1ドライバーとして2015年にル・マン24時間を制したニコ・ヒュルケンベルグは、数週間に渡ってF1のグリッド上でライバルたちの羨望を浴び、フランスの歴史あるレースへの憧れに火をつけた。そして彼らの多くが、シングルシーターでのキャリアを終えた後にスポーツカーへと転向することを、前向きに考えるようになった。バトンもそのうちのひとりであり、2017年にグリッドから退くことを発表したとはいえ、ル・マン参戦は望みのひとつだと繰り返し述べている。


 ヒュルケンベルグはル・マン参戦を真剣なものと捉えて、レース環境に慣れるために5月に開催されたスパ6時間にもポルシェで出場している。マクラーレンでの役割を考えれば世界耐久選手権にフルタイムで出場するのは無理だとしても、少なくともヒュルケンベルグ的なアプローチをするだけのスケジュールの余裕はあるはずだ。

2016年ル・マン24時間表彰台
2016年ル・マン24時間表彰台

 1台で複数のドライバーが出場できるスポーツカーレースでは、スポット参戦が可能だ。バトンがバンドーンにシートを譲った大きな理由のひとつには、より余裕のあるスケジュールを求めたという側面がある。二度の長距離レースへの出場は、スケジュールに余裕を残しつつも、レースへの欲求を満たすものとなり得るだろう。


 ホンダと提携するドライバーがトヨタに乗ることは考えづらいが、それ以外との交渉はそれほど難しいとは思わない。マクラーレン・ホンダからの承認は必要ではあるものの、非常識とは言えないレベルでの、稀なケースが見られる可能性はある。最初のチャンスとなるレースでの取り組みで、バトンがどれだけル・マン出場を真剣に望んでいるかが見て取れるだろう。またこれによって、将来に向けてバトンのスポーツカーでのキャリアが開かれることにもなる。

「父親が活躍したラリークロスでシリーズを盛り上げて!」

by スコット・ミッシェル


「ラリークロスがしたいんだ」とバトンは言う。ならば、乗ればいい!


 ジャーナリストとしては、公平であることはかなり重要だ。しかしリデンヒル(ラリークロスの聖地)に育ち、バトンのデビューと同時にF1ファンになった者にしてみれば、36歳の彼がラリークロスに出ると聞いたら、子供のようにうれしくなってしまう。


 父親であるジョン・バトンが成功を収めたカテゴリーは、バトンにとっては大きな思い入れのあるものだ。同様の成功を手にするだけのポテンシャルは高いうえに、アメリカを拠点とするグローバル・ラリークロス選手権ではフォルクスワーゲンがビートルでのワークスプロジェクトを展開している。なんならジョンが彼のビートルとともに飾ったAUTOSPORT誌の表紙を再現するよう、編集者に働きかけたい。


 バトン対セバスチャン・ローブ対ペター・ソルベルグ対マティアス・エクストロームの勝負がもし見られるなら、モータースポーツに少しでも熱をあげたことのある者にとっては、まるで天からの贈り物だ。


 当然ながら問題として浮上するのは、どこで乗るかだ。父親との繋がりがあるとはいえ、バトンの務めるアンバサダー的な役職が、アンドレッティ率いる米国拠点のフォルクスワーゲンとのタイアップを禁ずる可能性もある。しかし実質的には、バトンが泥にまみれての戦いを好むか否かにかかってくるだろう。


セバスチャン・エリクソンのホンダ・シビッククーペ
セバスチャン・エリクソンのホンダ・シビッククーペ

 今年はじめ、ホンダはシビッククーペをベースとしたRXマシンを発表、グローバルRXに参戦し、表彰台を獲得している。つまり、ホンダベースのマシンとしてはこれがバトンにとって最も競争力のあるオプションのひとつということになる。


「F1とは大きく違うけれど、だからこそ好きなんだ」とバトンは以前語った。「どこでレースをしたいかに関しては、まだ不確かだ。グローバルなのか、世界選手権なのか」
 ただ、もしも(この「もしも」は当然ながら非常に大きな仮定ではあるが)ホンダでグローバルに出場するならば、ワールドRXのリデンにワイルドカード参戦してほしい。2014年にシリーズが生まれ変わって以来、リデンは多くの観客を魅了してきた。バトンの参戦は、すでに上質な雰囲気を持つシリーズを、さらなる高みに導くことだろう。

「ブランドルやクルサードより優秀かも? メディアの仕事に適任」

by マット・ビアー


 ジェンソン・バトンは、自身のF1ドライバーとしての絶対的なピークが過ぎたことを認めている。しかし、いったい彼は次に何をすべきであろうか? バトンは未知の、高いポテンシャルを内に秘めている。信念が強く、聡明で、好感度が高い。F1のニュアンスを伝えることに長けていて、チームとも親しい。テレビに出るべき人間だ。


 バトンはすでに、実況中継のオーディションのようなものを通過している。2015年のバーレーンGPで、マクラーレン・ホンダのマシンがグリッドにつくことができなかった際に、不機嫌になるでも帰宅するためのチケットをいち早く入手するでもなく、レースの実況ツイートを始めたのだ。


 彼の洞察はとてつもなくユニークなものだったとはいえないが(「マシンからの火花がいいね」など)、トップを走るマシンの戦略を説明し、無線でのメッセージを解説し、「ルイスはチームメイトがベッテルに抜かれるよう仕向けているのかな?」などと投稿し、当時話題となったメルセデスについての論争にも興奮した様子で触れた(注:中国GPにおいて、トップ走行中のハミルトンが故意にペースを落とし、2位のロズベルグと3位のベッテルの差を縮めようとしたと言われていた)。


 バトンはレースをうまく要約し、その展開を読む能力があることを証明した。また140文字以内で饒舌には語れないことなど、誰もが承知している。

インタビューに応えるジェンソン・バトン
インタビューに応えるジェンソン・バトン


 現在、イギリスの放送局はドライバーから転身したコメンテーターに不足してはいない。マーティン・ブランドル、デイビッド・クルサード、アンソニー・デイビッドソン、アラン・マクニッシュらは全員が優秀なコメンテーターだ。イギリスにおけるF1中継は短期間ではあるもののチャンネル4が担っているが、2019年からはすべてがスカイスポーツに移行することになっており、コメンテーターの人数も縮小となるだろう。それでもバトンは、現在のコメンテーターとは比較にならないほど近代F1での経験を持つため、職を得ることは難しくはないはずだ。


 これまでに行われた数々のテレビ特番で、バトンはクルサードとの生き生きとした掛け合いを見せてきた。最も有名なのはラリークロスのテストをした際のものだが、ふたりは互いを良く知る友人同士であり、軽口を叩いて視聴者を飽きさせなかった。


 コメンテーター、ピットレポーター、特集や分析番組などのいずれか、またはすべてにバトンは起用できる。ブランドルとクルサードは素晴らしいドライバーであったが、バトンはチャンピオン経験者だ。マイクを持たせても、長期間に渡って彼らより秀でた才能を見せるかもしれない。

「何にでも挑戦すればいい。何もしないのもいい」

by イアン・パークス


「好きなものは、ほどほどならば体に良い」というフレーズがある。


 2017年にバトンが何かをしなければならないと、決めつける必要はない。その代わりに、好きなことを何でもやってみればいい。もちろん、マクラーレンとどのような契約を結んでいるかにも大きく左右される。グランプリとグランプリの間やシーズンの合間に、ドライバーは何ができて、何をしてはいけないのかを、彼らは厳しく定めてきた。来シーズン、バトンが休養を取るにあたっては、これほどまでに厳しい取り決めがないと考えるのが自然であり、誰もがそう望んでいる。

 アンバサダーの仕事は大変にシンプルで、人を出迎えて挨拶をしたり、ビジネス的な握手を交わしたり、おかしなエピソードにも礼儀正しく頷いてみせたりするものだ。ただしマクラーレンや、さらにはホンダの一員である以上、他のマシンのハンドルを握る際には許可が必要となる。アンバサダーとしてマクラーレンやホンダといったブランドを代表する人間が、ライバルメーカーのマシンを走らせるわけにはいかない。おまけにマクラーレンとホンダは、それぞれが異なる形でGTレースに参戦しているため、これに参加するのは現実的ではないと思われる。


 道理にかなった計画で、自身のドライビング能力の範囲内であり、マクラーレンやホンダのプロモーションになることであれば、バトンは何でもできると誰もが思うだろう。ル・マンを少しかじってみたければ、そうすればいい。ラリークロスへのスポット参戦も問題はない。別の一面を見せて、メディアの仕事をしてみるもいいだろう。または、ただビーチでガールフレンドの横に寝そべるというのも、最高じゃないかな!

「あえて何もせず、引退後のシミュレーションを」

by エド・ストロー


 バトンは20歳から36歳までの間、F1ドライバーでありたいとの欲求を雄弁に語ってきた。彼はバーニー・エクレストンとともに歩み、F1は彼自身の人生に大きな影響を与えた。一方で、他のことに時間を使いたいとも願ってきた。


 おそらくほとんどの人間が、まったく共感しないだろう。バトンは他の誰もが夢見ることしかできないことを仕事にし、大金を稼いできた。しかしエリートのスポーツ選手としての人生は、大いなる献身と多大な犠牲を必要とする。どれだけの大金を積まれようと、暮らしぶりがどれだけ豪華であろうとも、彼が人間であることに変わりはない。


 だからこそモータースポーツの世界でいえば、バトンは何もすべきではない。純粋な楽しみのためだけに、あちこちでちょっとしたレースに出ることはあるかもしれない。しかし選手権へのフル参戦など、真剣勝負に専念すべきではない。バトンが語ったことに基づいて考えれば、これは復帰の可能性を残した「引退後」の、まったく真逆の人生を試してみる良い機会なのだ。

 マクラーレン・ホンダのアンバサダー的な役割を楽しみ、人生の他の事柄に焦点を当て、F1なしでも生きられることに気がつくかもしれない。そしてラリークロスやスポーツカーなどに転向する道を選ぶ可能性もある。もしくは人生の別の一面を補うことで活力を得て、純粋に復帰を望むことになるかもしれない。真面目に生きる38歳のバトンがF1の最前線を離脱すると言うのであれば、止めるものは何もない。


 2018年にマクラーレンに復帰する道があるか否か(それは多分にフェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーンの動向による)はひとつの要素だが、チームが復帰を望まなかったとしても、他のチームでレースをするチャンスには恵まれるだろう。だからこそ、バトンにとって現在のシチュエーションは素晴らしい。彼は引退後の現実を効率的に知り、それを好むか好まないか、1年の休息の後に情熱が戻るかどうかを確かめることができる。


「最後の数年間」を続けるか、やめるかを決めようとすると「感情が浮き沈みする」とバトンは話している。まっさらな休養期間は「暫定的な引退生活」を過ごす良い機会だが、彼には復帰の道が残されている。これがうまく効果を発揮するためには、1年間の休養は本当の意味での休息でなければならないのだ。



(AUTOSPORTweb)

この記事は国内独占契約により英 AUTOSPORT.com 提供の情報をもとに作成しています




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