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今宮純のF1決勝インプレッション:“神ワザ”連発。19歳が魅せたオーバーテイク・ショー

2016年11月15日

 有視界走行を許されるのはごく一部の者だけだった。後ろになればなるほど、水煙がたちこめるなかを突進していかねばならない。めったにないフル・ウエットレース、今年サンパウロの空は泣き続けた。


 4年ごとに雨がらみになるブラジルGP、12年(勝者バトン)、08年(マッサ)、04年(モントーヤ)と繰り返されてきた。単なる偶然かもしれないが『16年決戦レース』がまたそうなるような気がしてならなかった。


「やっぱりここがリスキーだ」。ルコネサンス周回が始まってすぐ、12〜13コーナーでロマン・グロージャンがクラッシュ。ドライなら全開でも濡れると、この坂は上から雨水が流れてくる“鬼門”に豹変する。堂々予選7位を得た彼がやるとは、それにしてもフェラーリPUのドライバビリティは中回転域がややピーキーに感じられた。レースでキミ・ライコネンがクラッシュ、セバスチャン・ベッテルもスピン、彼らもそれに苦しんだのではないか。


 10分遅れSCスタートは当然だろう。2分オーバータイムで周回中に、4番手マックス・フェルスタッペンが3コーナーのアウト・ラインをしきりに試し、セクター2でレコードラインをわざと外す動きを繰り返すのに気付いた。またレッドブル2台は後方に一段高く水煙を吐き出すのが印象的で、ダイナミック・ダウンフォースに優っているのが一目瞭然(前方メルセデス2台よりも)。


 7周目、SCペースが1分58秒台に上がり、水中戦開始。あっさり1コーナーでフェルスタッペンがライコネンをとらえる。これがこの日の“オーバーテイク・ショー”の始まりだ。


 衆目の二人対決、10周目に2番手ニコ・ロズベルグは1.791秒まで接近した後、2.918秒、3.025秒と離れていった。このコンディションで深追いを慎み、長くなるはずの71周をじっくり行こうという考えだ。12周目にマーカス・エリクソンが13コーナーから大きくスピン、クラッシュ。再びSCラン、2分オーバータイムからは路面状態がまた悪化方向にあると見てとれた。


 20周目、SCが戻ったその矢先にライコネンが高速スピン、ピットウォールに激突。前に述べたPU特性だけでなく、3番手だった彼はメルセデス2台がかき分けた水量にのってしまったのだろう。視界不良な背後の者は、それが視認できないケースが多々ある。


 この瞬間をフェルスタッペンは素早く回避、ニコ・ヒュルケンベルグはパーツ残骸を避けられなかったが、多重接触事故を免れたプレーはふたりならでは。ピット前ストレートは客席が近く、もし後続マシンが次々にぶつかっていたら大惨事に……。


 赤旗25分中断。この間、決戦のメルセデスのふたりは好対照の動きを見せた。1位ルイス・ハミルトンは緊張を隠せずにいたのに、2位ロズベルグはバナナをかじり時には笑顔も。胃が痛くなるようなときにとった行動に性格の違いを見た。


 2度赤旗中断と5回SC出動、長いウエットレースはふだんの2戦分かかった。良くも悪くもならないコンディションでレース続行を進めたFIA関係者、コースサイドで任務を遂行した現地マーシャルたち、さらには傘をささずビニールカッパで見つめた観客たち。レース後半もドライバーたちは闘いに集中し続けた。


 38周目、上り坂でスピンしたフェルスタッペンがガードレール寸前で危機回避(そのクロス・カウンターステア操作は神技に近い)。54周目、レッドブル・チームはリカルド同様インターミディエイトに交換、彼は14位に下がった。この時点でアロンソも12コーナーでスピン、最後尾17位に落ちていた。そこから11台抜きで3位を勝ち取ったフェルスタッペンと、7台抜きで10位挽回したアロンソ。


 地元パウリスタでいっぱいのスタンドの中には今もセナ信奉者が多数いて、次々抜いてくるふたりに喝采の声を上げた。もうひとりのヒーローが、アロンソを抑え9位2点をザウバーにもたらしたナッセ。上位メンバーと同じ作戦で今季初入賞は表彰台に値する。


 3時間01分01秒335を戦い抜き通算52勝目、10年目の内なる挑戦ようやく結実。「楽勝だった」とハミルトンは述べたがそれは12点リーダーのロズベルグを意識した心理戦コメントだろう。昨年までのニコだったらそれを真に受けて落ち込み、不機嫌になっただろうが今は違う。


 ――初冠か4冠か、第67代王者を決する場は初めて21戦目に持ち越された。



(Text:Jun Imamiya)




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