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【レースの焦点】真夏のハンガロリンク、汗とルールブックぎりぎりの攻防

2016年7月26日

 今宮雅子氏によるハンガリーGPの焦点。スタート直後の迫力あふれるシーンに始まり、レッドブルとフェラーリの戦いがハイライトとなった。酷暑の70周を戦い抜き、晴れやかな表情でポディウムに上がったリカルド。またしても狡猾な守りを見せたフェルスタッペン。それに対抗したライコネンと雨で輝いたアロンソのチャンピオンふたり。ドライバーに厳しいハンガロリンクの主役たちを描き出す。

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 ハンガロリンクのスタートは、他のグランプリ以上に大きな意味を持つ。新舗装と土曜の雨のおかげで奇数列/偶数列のグリップ差が解消された今年は、トップ5台がクリーンに発進、ターン1〜2を抜けるまで見事な攻防を披露した。

「僕のスタートも悪くはなかったけれど、ルイス(ハミルトン)やダニエル(リカルド)に比べるとわずかに劣っていた」──ポールポジションのニコ・ロズベルグは「僕のレースはあそこで決まってしまった」と振り返る。

 赤いランプが消えた直後、2番手スタートのハミルトンがロズベルグの右に並んだ。同時に、3番グリッドのリカルドはロズベルグのスリップストリームを活かして真後ろに迫ったあと、大きくアウト側に出るラインを選択した。結果、ターン1のアプローチはイン側からハミルトン、ロズベルグ、リカルドの“3ワイド”に。

「イン側にはルイスがいて、2台の間に挟まれた僕はスペースがきつくて引き下がるしかなかった」
 メルセデス2台をかわそうとチャレンジしたリカルドは「アウトからターン1にアプローチしたときには、ルイスもニコも僕の死角に入っていて、はっきりとは見えなかった」と説明する。「だからエイペックスではリードを奪ったと思ったところ、出口でメルセデスの1台がすり抜けていった」。

 ターン2に向かうオーダーはハミルトン、リカルド、ロズベルグ。しかし首位ハミルトンが慎重にアプローチし、リカルドが後方に従うのを見た瞬間、ロズベルグは好判断でターン2アウト側の進路を選び、リカルドと並走。出口で2位のポジションを奪還した。

「少なくとも2位を取り戻せてうれしかったし、アウトから抜いたときの気分はクールだった。でも、僕はあそこで勝利を失ってしまったんだ」

 レース序盤に関してはハミルトン、ロズベルグ、リカルドというポジションが決まった。そしてニコが言うとおり、3台のポジションはゴールまで変わることがなかった。

ハンガロリンク勝敗の分岐点は、スタート直後に訪れた
XPB Images



 トップ3の後方では、4位マックス・フェルスタッペン、5位セバスチャン・ベッテルも好スタートを切っていた。

「ターン1に入っていくところではルイスに接近することができたと思ったら、スペースがなくてブレーキを遅らせることができなかった」と、フェルスタッペン。出口では道を探したもののリカルド、ロズベルグに従うほかなかった。

 ベッテルの場合は「スタートは良かった。というか、たぶん良すぎたと思う」と振り返る。「ここはターン1までが長いから、僕は早すぎるタイミングでスリップストリームから外に出ることになってしまった」
 リカルドがロズベルグのアウト側に動くより前にレッドブルに接近し、スリップストリームから脱出しなければならなかった。そして勢いを失ったところで前にトップ3台が、右のイン側にはフェルスタッペンが並び、ポジションを上げることができなかった。

 トップ3台の後ろはフェルスタッペン、ベッテル──慎重にタイヤを労わりながら、作戦に賭けることになった。

 メルセデスのふたりの勝負はスタート直後に決着したが、ハンガリーGPの醍醐味は、その後方で繰り広げられたレッドブル対フェラーリの攻防だ。予選ではレッドブルが速く、リカルドとフェルスタッペンが2列目を占めた。Q2でアタックのタイミングを誤ったキミ・ライコネンは14番手からのスタートになった。

 しかし晴天に恵まれた日曜日の路面温度は52度。土曜日より20度も熱くなった路面では、フェラーリが本来の速さを取り戻した──巧みな作戦でレッドブルの前に出て、その速さを活かさなくてはならない。

 トップグループのなかでも先頭を切ってベッテルがピットに向かったのは14周目。レッドブルにとって辛かったのは、ベッテルの3.3秒前方にリカルド、1.4秒前方にフェルスタッペンと、2台が接近して走っていたこと。ベッテルのアンダーカットを2台でカバーすることは不可能で、15周目には前のリカルドを先にピットに呼んだ。難を逃れたリカルドはベッテルの前でコースに復帰。ステイアウトしていたバルテリ・ボッタスにペースを阻まれたものの、ベッテルを抑え切ることに成功した。

 その一方で、ベッテルより2周長くステイアウトしたフェルスタッペンは16周目にピットイン。誤算は、ベッテルだけでなくライコネンにまで先行されたことだった。

 リカルドvsベッテルの第2スティントは2〜2.5秒間隔で、ほぼ同ペース。しかしソフトを履いたメルセデスのペースが上がらない様子を見たレッドブルは、ロズベルグの2.3秒後方に迫った時点、わずか18周で2回目のタイヤ交換を行うという勝負に出た。

「後方のセブが、さほど離れていないことはわかっていたけど、あれはフェラーリに対して守るというより、メルセデスに対してアグレッシブに挑むための作戦だった」と、リカルドは説明した。第2スティントが始まった時点で8秒あったロズベルグとの間隔が、1周あたり0.2〜0.5秒ずつ縮まっていたのだ。メルセデスのピットからは、ハミルトンに対してペースアップを促す無線が飛んでいた。「後ろが迫ってきているから、間隔を広げられないようならニコを先にピットインさせる」とも。

「もしメルセデスが何かに苦労していて、彼らもまもなくピットインするのだとしたら、それまでにできるだけ接近していたかった」と、リカルド。「でも、僕がピットインした後、彼らはペースを上げていた。ポケットに隠していた速さがあったんだね」──。

 トライした結果、リカルドは37周という長い第3スティントを走ることになって最後はベッテルがDRS圏内まで迫ってきた。でも、3位表彰台を果たして、久しぶりに晴れ晴れとした笑顔。メルセデスの速さを確認したから、イエローフラッグに阻まれたQ3最後のアタックも、スタート直後に2番手を奪還されたことも、素直に受け止める気持ちになった。

「ここ何戦か、金曜から土曜の速さを日曜日につなげることができなかったけれど、今日は全部の力を出し切れたと思う」

 チームメイトとの勝負よりも、ポテンシャルを使い切れたことがチームへの信頼──爽快な表情につながった。

リカルドは、勝利を逃して笑顔のなかったモナコGP以来の表彰台へ
LAT



 ハンガロリンクには、夏休みを迎えたヨーロッパ各国からたくさんのファンが集まる。なかでもフィンランドから大勢の応援団がやってくることは有名。ライコネンの奮闘ぶりは、そんな彼らを熱くするのに十分なものだった。

 14番手からソフトタイヤを履いてスタートしたレース序盤は映像で捉えられることも少なかったが、大切だったのはオーバーテイクの困難なハンガロリンクで、セルジオ・ペレスやエステバン・グティエレスをかわして、どんどんポジションアップしていったこと。第1スティント後半は10位ロマン・グロージャンに抑えられたが、スーパーソフト組がピットインするとペースを上げ、1回目のタイヤ交換からコースに戻ったフェルスタッペンを抑え、28周目まで5位を走行した。29周目のピットアウト直後にはフェルナンド・アロンソに先行されたものの、フレッシュなスーパーソフトを活かしてターン1でオーバーテイク──DRSを活かしてマクラーレンの真後ろに迫り、ブレーキングでアウトに並び、スピードを維持しながらインにクロスラインを取って前に出る。その後は再度DRSを活かしてターン2までにリードを築く。

 ふたつのDRSをうまく利用した、お手本のようなオーバーテイクだった。しかし、それはアロンソがフェアに走行ラインを守った──少なくともライコネンに対して明確に意思表示をするドライビングであった──からでもある。

 50周目に2度目のピットインを行い、2セット目のスーパーソフトを履いたライコネンは、5秒以上先行していたフェルスタッペンに4周で追いついた。しかし57周目のターン2、アウトからオーバーテイクをしかけた際にはレッドブルの右リヤに接触して左フロントウィングの翼端板を失った。いったんは右に動いたフェルスタッペンが、ライコネンの動きを封じるように左側に戻ってきたため、避けきることができなかったのだ。

 その後もゴールまで、コンマ数秒間隔のふたりの接戦は続いた。「僕が行こうとする方向に、あとから動いてくる!」──ライコネンが、こうアピールする気持ちも理解できる。フェルスタッペンの走行ラインは絶妙で、要所では常に右にも左にも動ける位置。ライコネンが左右に動くたび、合わせるように微妙にラインを変えてくるのだ。レギュレーションの文言上ぎりぎり許される範囲であっても、後ろのマシンが動いたあとにラインを変えてくるのでは、キミが言うとおり「どうしようもない」。68周目のターン1でライコネンが右に入ろうとした瞬間にも、わずかに右に動き、フェラーリはブレーキロックしながらアウト側に逃げることになった。

 ライコネンにとって、問題はフェルスタッペンの動きが予測できないことであり、アタックするたびに接触を回避する行動を強いられたことだった。ハンガロリンクの特殊性を活かしたフェルスタッペンは、またしても類稀なレース勘を証明して5位を守った。しかし相手がライコネンでなければ、自らも接触の傷を負うリスクを冒していたことは認識しなくてはならない。

ウエットでは抜群の速さを見せたアロンソ、後半戦への期待も高まる
Sutton



 そんな攻防から40秒以上離れたものの、ふたりに続く7位でゴールしたアロンソはシーズンベストのレース内容。すべてのセッションで7位という記録ではあるが、その原動力はインターミディエイトのQ1で3位、インター〜スーパーソフトのQ2で4位というドライビングテクニックにある。Q3最後にはスピンを喫した。そしてレースでは3度、ターン4のトラックリミットを超えて警告を受けた──7位=6ポイントは、常に限界までアタックしながら、マシンを傷めることなく自らのレースを貫いたドライバーの汗の結晶。暑さのなか、コーナーが連続するハンガロリンクはドライバーを最も酷使するサーキットのひとつでもある。

(今宮雅子/Text:Masako Imamiya)




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1位マックス・フェルスタッペン110
2位セルジオ・ペレス85
3位シャルル・ルクレール76
4位カルロス・サインツ69
5位ランド・ノリス58
6位オスカー・ピアストリ38
7位ジョージ・ラッセル33
8位フェルナンド・アロンソ31
9位ルイス・ハミルトン19
10位ランス・ストロール9

チームランキング

※中国GP終了時点
1位オラクル・レッドブル・レーシング195
2位スクーデリア・フェラーリ151
3位マクラーレン・フォーミュラ1チーム96
4位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム52
5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム40
6位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム7
7位マネーグラム・ハースF1チーム5
8位ウイリアムズ・レーシング0
9位BWTアルピーヌF1チーム0
10位ステークF1チーム・キック・ザウバー0

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