「メルセデスを脅威に感じることはあまりなかった。マシンのハンドリングは素晴らしく、セブの後ろについて走ってもタイヤが性能低下を起こすことはなかった。最終コーナーの手前で1回、最終コーナーで1回、スナップが出たくらいだったかな……」
フェラーリが賢明だったのは、トラブルを抱えたベッテルをライバルの目の前に差し出すようなミスを犯さず、健全なマシンのライコネンを信頼し、“フェラーリを守る”役割を任せたこと。
トラブルの報告を最小限に抑えたベッテルの意図を察し、ステアリングについて多くの詳細を要求しなかったこと。そしてライコネンに対しても、説明を最小限に控えたこと。
ライコネンが素晴らしかったのは、少ない情報から賢明にすべてを理解し、ベッテルに多くを要求せず、あくまで自分の状況を説明するかたちでチームの意図を汲み取ろうと努めた姿勢だ。
「無線ではいろいろ話したけど、自分たちが何をしようとしているのか、分かっていた方がいいと思って」
マシンは最高だったと、ライコネンは何度も言った。今日は勝てるペースがあった。でも、それが叶わなかったのは、予選で──小さな──ミスを犯した自分のせい。
昨日はセブが一番で、今日も1位で逃げ切った。チームは僕らの順番がどうであろうと、1-2位という結果を目標にしていたんだから、目標は達成された。もちろん、僕の目標は勝つことだから満足はできないけれど、不満を言うとしたら相手は自分自身だ。
偽りも装飾もなく淡々と語る言葉には、チームプレイ云々以前に、何よりも大切なスポーツ精神が溢れていた。ファンがキミを愛するのも、ドライバー仲間が彼に敬意を抱くのも、そしてキミ自身がレースを楽しめるのも、この精神があってこそ──。
シルバーストンではタイヤトラブルで貴重な結果を失ったフェラーリ。ハンガロリンクでの復活劇は、もちろんコース特性や高い路面温度にも支えられたが、批判に負けないふたりのドライバーの強い意志と、見事なドライビングに拠るところも大きい。
XPB Images
対するメルセデスは、長所を活かす機会が少ないツイスティなコースと、高い路面温度に苦労した。決して遅いわけではないけれど、マシン的にもタイヤ的にも熱対策が必要になると完璧なマシンのどこかで譲歩が必要で、それはボッタスよりもハミルトンのドライビングに影響する。
マックス・フェルスタッペンの10秒ペナルティによって第2スティントで4番手を獲り戻したハミルトンは「マシンにはスピードがあるから、このスピードを使いたい。タイヤも第1スティントでは問題なかったし、最後まで保つと思う」と、ボッタスとのポジション交替を求めた。