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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る】得点のチャンスを逃した3連戦。F1に残るためには小さな後退も許されない

2021年7月15日

 2021年に7年ぶりに日本人F1ドライバーが登場した。アルファタウリ・ホンダからF1にデビューした角田裕毅だ。極めて高い評価を受け、大きな期待を担う角田を、海外の関係者はどう見ているのか。今は引退の身だが、モータースポーツ界で長年を過ごし、チームオーナーやコメンテーターを務めた経験もあるというエディ・エディントン(仮名)が、豊富な経験をもとに、忌憚のない意見をぶつける。今回は第7戦フランスGP、第8戦シュタイアーマルクGP、第9戦オーストリアGPの3連戦を振り返る。


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 F1で長く活躍して、うまくいけば日本人ドライバーとして初めてF1で優勝したい、そういう思いが角田にあるなら、私のアドバイスに従うべきなのだが、残念なことに、あの子にはそれが分かっていないようだ。モナコGPの後、私はこれ以上ないほどはっきりと言った。「高いところを目指すなら、小さな前進をこつこつと積み重ねていくしかない」と。


 2週間後のバクーを見る限り、彼はそのことを理解したかのように思えた。確かにQ3でクラッシュしたが、あの週末には他にも大勢がウォールにヒットしていた。決勝では、リスタートが少し甘くて、ふたつポジションを落としたけれど、モナコでの大失態と比べれば、大きな進歩だ。


 こうして若いドライバーにアドバイスを与えていると、昔を思い出す。私の的確なアドバイスのおかげで成長したドライバーが何人もいる。だが腹立たしいのは、奴らが成功した途端に私のことなどすっかり忘れてしまったことだ。なんという恩知らずだ。


……とにかく、裕毅へのアドバイスは、我ながら素晴らしかったと思う。昔馴染みのフランツがこれを知ったら、私を裕毅の育成係に雇ってくれるのではないかと思うぐらいだが、彼は、今自分が24時間厳しい監視下に置いてしつけている結果が出始めていると思っているようだ。本当にそうなのか、と思っているうちに、ポール・リカールのQ1最初のラップで裕毅はやらかした。フランツよ、もっとしっかり教育した方がいいんじゃないか?

2021年F1第7戦フランスGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)が予選Q1でクラッシュ
2021年F1第7戦フランスGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)が予選Q1でクラッシュ

 それにしても、なぜQ1でクラッシュしなければならなかったのか? 一体何を考えているのか、さっぱり分からん。ハース、ウイリアムズ、アルファロメオより速いのは間違いないのだから、普通に走っていれば楽にQ2に進めた。その後にプッシュすればよかったのだ。チームメイトのガスリーを見るといい。彼はQ1では余裕を持って走って6番手だった。だからそれより0.5秒遅かったとしても、裕毅は13番手でQ1を通過できたはずだ。

■ヘルムート・マルコが何を考えているのか、気にかかる

 フランスGPは決勝をスタートする前から台無しになってしまったので、オーストリアでのふたつのグランプリに目を向けよう。その1戦目の何と言ったか、ストーリアじゃなくて、ステレオじゃなくて……シュタイアーマルク? その変な名前のグランプリでの裕毅は、なかなかよかったと思う。フランツに恐ろしいやり方で脅されたのかもしれないが(具体的な話は、スコット・スピードに聞くといい)、予選では8番手、ガスリーから0.27秒差という上々の成績だった。ところがこの時は、チームがタイヤ戦略で大きなミスを犯した。そのせいで、ソフトタイヤでスタートした裕毅は、早々にピットインしなければならず、最終的に10位どまりという結果になったのだ。

角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第8戦シュタイアーマルクGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 もちろん普通なら、チームは第2オーストリアでは同じことはしない。だが驚くことに彼らはまた同じ戦略を取った。フェラーリのふたりはQ3には進まず、スタートタイヤを選んで、決勝でしっかりポイントを稼いだ。ところがアルファタウリは今度もQ3に進むことだけを考えた。角田はガスリーから0.16秒遅れだから前進したといえば前進したが、結局2回ストップで走らなければならなかったので、入賞は厳しかった。


 それでも彼がミーティングでちゃんと話を聞き、レースディレクターズノートに目を通していれば、ポイント圏内でフィニッシュできたかもしれない。決勝中、ピットレーンの白線に触れるなど(議論の余地なく、明らかに踏んでいた)、言語道断。しかもそれを2回繰り返したのだから驚く。

2021年F1第9戦オーストリアGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第9戦オーストリアGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 彼が自分がなぜペナルティを受けたのか分かっていなかったというのも解せない。白線カットはやってはならない行動なのだ。もしもプラクティスでやっていたのにチームの誰も気づかなかったのだとしたら、それもおかしい。私のチームでそんなことが起きたら、チームマネージャーかレースエンジニアに雷を落としただろう。


 結局、この3戦で角田が獲得したのはたったの1ポイントだった。彼とチームの両方がちゃんとした仕事をしていれば、10点以上は獲れたはずだ。レッドブルの育成ドライバーたちがF2やF3でいい仕事をしている時だけに、ヘルムートが今、何を考えているのかが気にかかる。裕毅、肝に銘じてくれ。君が目指すべきは、小さな前進の積み重ねだ。小さな後退は決して許されないのだ。


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筆者エディ・エディントンについて
 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。


 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。


 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。


 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちのある握手はバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。



(Eddie Eddington)




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