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GP topic:今季のトラブルは攻めた結果、パワーユニットはトークン以外でも進化する

2016年4月22日

 2016年のパワーユニットは、全21戦となったことで年間5基までペナルティなしで使用することができる。単純に1基あたり4戦は使用することになる計算だ。ところが第3戦の中国GPを終えて多くのドライバーが2基目を投入している。すでに3基目に突入している者もいる。ここまで2基目以上のコンポーネントを使用したドライバーは次のとおりだ。


ルイス・ハミルトン:ICE(2) TC(2) MGU-H(2) MGU-K(2)
セバスチャン・ベッテル:ICE(2) TC(2) MGU-H(2) MGU-K(2) CE(2)
キミ・ライコネン:TC(2) MGU-H(2) MGU-K(2) CE(2)
ダニール・クビアト:ES(2) CE(3)
ケビン・マグヌッセン:CE(2)
ジョリオン・パーマー:ES(2) CE(2)
マックス・フェルスタッペン:CE(2)
フェルナンド・アロンソ:ICE(2) TC(2) MGU-H(2) MGU-K(2) ES(2) CE(2)
ジェンソン・バトン:ICE(2) TC(2) MGU-H(2) MGU-K(2)


注:ICE(エンジン) TC(ターボチャージャー) CE(コントロール・エレクトロニクス) ES(エナジーストア=バッテリー)


 アロンソはオーストラリアGPの大クラッシュが原因、ほとんどが「予定外」の交換である。パワーユニットはギヤボックスのように連続して使用しなければならないわけではないが、メルセデスを使う多くのドライバーやルノー勢ではダニエル・リカルドが、まだ1基目で走り続けていることを考えると、3戦目で2基目の投入というのは少し早すぎるペースと言っていいだろう。


 現在のパワーユニットが導入されて今年で3年目を迎えたにもかかわらず、なぜ、いまだにトラブルが起きるのか。あるエンジニアは次のように話す。


「今年のトラブルは、昨年までとは内容が違う。2014年と2015年は新しい技術に対する未熟な部分が露呈して起きるトラブルだった。しかし、今年はチャレンジした結果のトラブルなんだ」


 2月28日にホモロゲートされたパワーユニットは、その後どのメーカーもトークンを使用した改良版を投入していない。しかし開幕戦で使用したものと、3戦目の中国GPで使ったパワーユニットでは使い方が異なっているという。制御系のソフトウェアをアップデートしているからだ。


「昨年まではソフトウェアのアップデートに関しては制限がなかったが、今年からマニュファクチャラー間で『年間10回』と制限した。そのため1回1回の変更が、ややアグレッシブな傾向となっているんだ。つまり耐久性ギリギリのレベルで使おうとしている。それがトラブルを誘発している可能性が高いと考えられる」


 たとえば、バトンの1基目に起きたトラブルは、MGU-Kのモーターを支えるベアリングの損傷だった。ベアリングは消耗品で、もともとホンダは2戦ごとに新しいものに交換する予定でいたが、問題は2戦目の決勝で発生してしまった。まだ原因はわかっていないが、中国GPでも同じ仕様のものを使用したことを考えると、個体の不具合というよりは、かなり攻めた使い方をしていた可能性が考えられる。ホンダは今後ベアリングを1戦ごとに変える予定だ。


 某エンジニアによれば「制御系ソフトウェアのアップデートによって、すでに開幕戦の仕様からコンマ3秒のゲインを得ている」という。これが本当なら、10馬力以上の性能向上を果たしていることになる。フェラーリ代表のマウリツィオ・アリバベーネは言う。


「昨年、我々が2016年の計画を立てたとき、ふたつの選択肢があった。信頼性を優先するか、あるいは性能を上げるかだ。フェラーリにはメルセデスを倒さなければならないという使命がある。だからリスクを覚悟して、後者を選んだ」


 ルノーもホンダも信頼性には、ある程度の目処がついた。これからは性能向上を目指した新しい戦いが、パワーユニット間で勃発する気配を感じる。



(Text : Masahiro Owari)


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