ジェンソン・バトンは、マクラーレンのチームメイト、フェルナンド・アロンソのオーストラリアGPでのアクシデントを論拠として、「ハロ」の2017年からの導入に反対するのは間違っていると述べた。
ハロのようなドライバーの頭部保護デバイスに批判的な人々は、その主な欠点として、アクシデントが起きた後にドライバーの救出の妨げになることをあげている。メルボルンのターン3でエステバン・グティエレスのハースと接触したアロンソのマクラーレンは、かなりの速度でグラベルトラップに突っ込んで横転し、裏返しになった状態で止まった。アロンソは自力でマシンから降りることができたが、もしハロがあったらチームメイトは脱出できなかったのではと質問されたバトンは、「今回は彼が無事だったから、そう思うんじゃないかな」と答えた。
バトンが言わんとしているのは、ハロがあればアロンソは自力で脱出できなかった可能性はあるものの、それはオープンコックピットに伴う危険性と比べれば小さな問題にすぎないということだ。
「あの状況では、彼が急いでクルマから降りる必要はなかった。クルマが裏返しになったときにどうなるかという話よりも、それまでにドライバーの頭に何かが当たるリスクのほうが大きい。燃料が漏れたりして急いで逃げなければならないケースはごく稀だ。最近のセーフティセルは頑丈だし、タンクも簡単には燃料が流れ出ないようになっている。だから、僕はハロがあったほうがいいと思うんだ。裏返しになって、ハロがあるために自力で降りられないとしても、すぐにマーシャルがクルマを起こしてくれるだろう。少し時間はかかるかもしれないが、それでもドライバーが無事なら問題はない」
アロンソ自身は、ハロがあったら脱出の妨げになったかについてはよくわからないと語っている。だが、今回のクラッシュの経験から、そうした保護デバイスを義務付けるならば、まず総合的な見地からの調査と研究が重要だと感じているようだ。
「確かにそれ(脱出の障害にならないこと)は大事だと思うし、いままでそういう面から考えたことがなかった」と、アロンソは言う。
「その点はしっかり調査して検討する必要がある。見ての通り、今回はわずかな空間があったおかげで、簡単に脱出できたわけだから。ハロを取り付けた場合、クルマから降りるのが難しくなるのかどうかを確認しないといけない」
またバトンは、いずれにしてもこのアクシデントは、F1の安全性に関する研究の重要性を思い出させるものだったと付け加えた。
「事故のあと、あそこを通過したときには、ものすごい煙と砂ぼこりが上がっていて、何が起きたのかはわからなかった。僕が最初に見たのは歩いている彼(アロンソ)の姿で、それからアクシデントの状況がわかった。これは現在のセーフティセルの丈夫さを証明した出来事であり、昔からしばしば起きてきた恐ろしいアクシデントだったと思う」