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【GPプレ】マレーシアの不思議、セパンの苛酷

2014年3月28日

Sutton

 ヨーロッパから遠いフライアウェイ、ティルケ設計の近代的なサーキット。今ではお馴染みになった“新規開催”の先駆けとなったのが、1999年に初開催されたマレーシアGP。近代化を進めるマハティール政権の下、観光振興政策のひとつとして、F1は初めて熱帯の国に招かれた。

 1999年当時、何より心配されたのはスコール。炎天下では50℃を超えるコンディションのなか、厚いスーツを身に着けたドライバーが1時間半以上もの時間“戦い抜けるのか”という点もずい分、話題になった――そんなグランプリも今年で16回目を迎える。継続はグランプリ運営の大切な要素で、最初は招待客と一部の富裕層だけのものだったセパンも、今では周辺各国からのファンで賑わうようになった。

 グランドスタンドは高価でも、芝生の自由席はリーズナブル。ターン4のように貴重なポイントを芝生の丘から観戦できるのだから、世界でいちばんファン・フレンドリーなグランプリかもしれない。空港ターミナルに直結するホテルには大半のドライバーが宿泊しているので、エントランスで声援を送るファン――女性が中心――もたくさん。

 初開催の頃には、クアラルンプールと空港の間はほとんど熱帯雨林に覆われていて、夜は本物の暗闇に包まれた。99年の最初のフリー走行では大山猫がコースに出現、サーキット近くの路上にはオオトカゲがのんびり横たわっていた。この地に首都機能を移転するという、壮大な計画を知ったのも少し後のことだった。
 
 プトラジャヤはクアラルンプールの南、セパン空港やサーキットとKLの町の間に現れた超近代的な政治都市。今では総理府をはじめ、政府機関のすべてが、広大な人工の都市に置かれている。イスラム様式を採り入れた建物はもちろん、何より印象的なのはこの町の夜景――異なるデザインの7つの橋に白い光が灯る様は幻想的。驚いたのは、自然のものとばかり思っていた湖も人工で、そこに橋を架けるため(その景観を作り出すため)に建設されたということ。こんな光景のなかで道に迷うと、非現実的な世界に足を踏み入れてしまった気分になる……


 そしてプトラジャヤでは、よく迷う。一度迷うと簡単には抜け出せない。
町を縦横に抜ける高速道路が複雑、ジャンクションがトリッキー、それにマレーシアには地図というものがほとんど存在しない(売られているのを見たことがない)。デザイン画のような略図を見せてもらっても、自分がどこを走ってきたのかも分からない。

 ジャンクションでぐるぐる回るうえ、昼間でも太陽が真上にあるため東西南北の感覚が無くなってしまうのだ。他のクルマを見ても、影が完全にボディの下に入ってしまっている――今年はFP1とFP2の間、午後1時過ぎに“まっすぐ立てたものの影が無くなる”現象が起こるのだそう。

 木曜の午後5時前、現在の気温は33℃、路面温度は50℃。この暑さがどう影響するかが、マレーシアGPの大きなポイントになる。熱帯への対応は経験を積んできたチームも、今年のパワーユニットをこの条件で走らせるのは初めてのこと。ドライバーたちもみんな「メルボルンとはコースもコンディションもあまりに違うから、予測は難しい」と言う。熱対策に苦労しているチームにとっては条件がさらに厳しくなるが、一方で、トラブル続きでテスト距離の短かったチームにとっては、メルボルンの走行データをもとに改善できるマージンがとても大きいとも言える。開幕戦では大差をつけても、一度のレースシミュレーションもできないままのレッドブルが24秒差の2位でゴールしたことは、メルセデスも警戒しているはず――セットアップの時間もなかったはずなのに、RB10は“曲がり角を曲がる”のではなく、ちゃんと“コーナリング”をする。ボトムスピードが落ちなければ燃費も良くなる。それに、メルボルンとは異なって、セパンには高速コーナーがいくつもある。

 ダイエットに努めてきたドライバーたちの体力面も注目の要素。もともと全員が軽い脱水症状に見舞われながらゴールするこのレースで、ドリンクの供給が止まるようなトラブルがあると一大事。今年のマシンではコーナリング速度が下がったことによってドライバーへの身体的負担が小さくなっているものの、いつリアが滑っても不思議ではない状態で走り続けるには、これまで以上に集中力が必要になる。バックストレート手前のターン14は、フェルナンド・アロンソをして「世界でもっとも難しい」と言わせた難コーナー。

 そして、熱帯の厳しさにもっともさらされるのは、メカニックたち――ガレージは冷房が効かない。ドライバーだって「走っている間はいいけど、ピットに戻った瞬間にものすごい暑さに包まれる」と言うのだから、そこでハードワークを続ける彼らは本当に体力を消耗する。まとわりつくような汗にまみれながら、正確な作業を行うため、最後まで集中力を途切れさせてはならない。

 セパンは“暑い”と、毎年書いてきた。でも、マシンにとってもチームにとってもドライバーにとっても、こんなに暑さを感じるマレーシアGPは初めてかもしれない。


(今宮雅子)




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