マクラーレンの発表によれば、今年のニューマシンMP4-22のコンセプト開発のプロセスは、2006年型マシンが走り出すよりも前、すなわち2007年のレギュレーションがまだ決まっていない段階から、すでに始まっていたという。
その後、タイヤサプライヤーのミシュランが予定よりも早い撤退を決め、このニューカーのコンセプトにはもうひとつの変数が加わることになったが、マクラーレンとエンジンパートナーのメルセデスは、MP4-22が新加入のフェルナンド・アロンソと新人のルイス・ハミルトンの2人にルノーやフェラーリと対等に戦える機会を与えるだろうという自信を示している。
マクラーレンはニューマシンの発表に先立って、このクルマが“高度なエンジニアリング・コンセプト”を特徴とし、きわめて長い時間をかけて開発が進められてきたことを明らかにした。そのコンセプト段階は、先代のMP4-21が実際に走り出す前から始まっており、空力コンセプトの初期的なスケッチや、クラッチとギヤボックスの設計に関する最初のディスカッションは2005年12月にまで遡る。
設計のプロセスにおいては、性能、信頼性、効率を改善するために、このクルマの11、000点にも及ぶ部品のすべてが、細部に至るまで入念に検討された。MP4-22は最新の研究開発手法のコンセプトを代表するマシンであり、初期的なアイデアのCADシステムでの開発は2006年3月半ばに、そしてコンピュータによる流体力学シミュレーションはその月の後半に始まり、5月には風洞実験プログラムが開始された。
「(新しいクルマは)まだあまり見ていないけど、ものすごくポテンシャルが高そうだ」とテストドライバーのゲイリー・パフェットは言う。
「昨年半ば以降、マクラーレン・テクノロジー・センターで膨大な量のシミュレーション作業が行われきたし、開発はとても順調に進んでいると思う。HPE(メルセデス・ハイパフォーマンス・エンジン社)はV8エンジンを深く理解していて、彼らのエンジンもいくつかの面でかなり進歩しているようだ。ウインターテストでの感触から言えば、僕らは昨年の今ごろよりも強力なパッケージを手に入れているように思える。MP4-22が僕らに何を与えてくれるのか、この手で確かめるのが楽しみで仕方がないよ」
ニューマシンの設計には、規則で義務付けられたクラッシュプロテクションのための3つの新しい要素が取り入れられた。完全な新設計のリヤクラッシャブルストラクチャーは旧型よりも明らかに幅が広くなり、ドライバーセルの側面には、他車の部品などが貫通しないように規則が要求する厚さ6mmの積層パネルが接着されている。また、クラッシュテストでの衝突速度が毎秒14メートルから15メートルに引き上げられたため、フロント周りのドライバー保護能力も改善された。
マシンの設計に影響を与えたその他の規則変更としては、エンジンのホモロゲーション、そしてワンメイクタイヤへのスイッチがある。ブリヂストン・ポテンザの構造とプロファイルは、MP4-22のシャシーダイナミクスだけでなく、空力にも大きな影響を及ぼしている。タイヤの形状はフロントホイール後方の空気の流れを左右するからだ。チームのエンジニアたちは、熱と流体の流れのシミュレーションを行うCFDソフトウエアを利用して、新しいタイヤを最大限に生かすための最適なソリューションを考え出した。
MP4−22の開発には、4、500点の部品図と3、500点のパターンや生産用工具の図面を必要とした。さらに休むことなく続けられる空力開発プログラムにより、発表されたニューマシンの出来上がったばかりのボディワークも、開幕戦までにはそのおよそ3分の1がアップデートされる予定になっている。そして、その後もシーズンを通じて3〜4週間ごとに新しい空力コンポーネントが投入されるはずだ。
MP4−22の初テストの後も、3月18日にアルバートパークでこのマシンがレースデビューを迎えるまで、開発はサーキットとマクラーレン・テクノロジー・センターの両方で続けられる。