今週シングルCDをリリースすることになり、ドライバーとしては初の“シンガーソングライター”となったジャック・ビルヌーブ。彼が、レコーディングに至ったいきさつ、音楽とのかかわり、アルバム製作などについて語った。
――あなたが曲を作ってアルバムのレコーディングをしたと聞いて、本当に驚きました。どうしてレコーディングをしようと思いついたのですか?
ジャック・ビルヌーブ(以下JV):ずっと音楽は好きだったんだ。祖父はピアノの先生だったし、父(ジル)はピアノやトランペットができた。妹はミュージシャンだ。だから、我が家では常に音楽が身近な存在だったんだ。僕は昔から曲を書いていた。今まではそれだけだったけど、今回、次の段階に進んでみたんだ。去年11月、シーズンが終わると何もやることがなくなってしまった。その時はまだBMWザウバー残留は発表されていなかったからね。それで、スタジオに入って、何人か集めて、(曲を)しっかり製作したらどういうサウンドになるのか、試してみようと思ったんだ。
――曲も詞も自分で書いたのですか?
JV:ああ。自分で曲を書いたよ。アルバム収録曲の半分は、自分で歌詞をつけたものだ。残りの半分は友達の歌とか自分が好きな歌で構成されている。自分で書いたものに限定せずに、違う要素を入れることも大事だと思ったんだ。また別の作用が表れるからね。隠れた宝というか、名曲がいくつかあって、これは製作すべきだと思っていたので、どういう音になるのかを試してみたくなった。
――どうやって歌を作るのですか?
JV:やりかたはひとつじゃない。眠りにつこうとしている時に何かを考えていて、それが頭の中をぐるぐる回ることがある。それで明かりをつけて、何行か書きとめるんだ。その数行からインスピレーションを得て、それを元に1曲作り上げるということもある。何かアイデアがあって、それをふくらませていくこともあるし、曲が先にできることもある。いろいろだよ。アイデアをひねり出すのがものすごく大変だった歌もある。基本的には(アイデアが)“空から落ちてくる”といったことはないよ。
――あなたが演奏しているのはどういったスタイルの音楽なのですか?
JV:アルバム製作では、1度ピアノを弾いただけだよ。プロのミュージシャンの方が演奏がうまいんだし、レコーディングでもその方がサウンド的によくなるからね。でも、歌を作ったのは僕だから、ステージに立ったら、好きなように演奏できるんだけどね。僕が弾くのは主にアコースティックギターだね。アルバムには何曲かデュエットも入っている。そのうち1曲は妹のメラニーとのデュエットだ。父が死んだすぐ後、彼女はそのことについて歌を作ったが、その時は完成しなかった。何年かたって、彼女は僕に完成させてくれと頼んできた。できあがった時、これをレコーディングしたら最高じゃないかと思い、デュエットとして製作したんだ。それから、別の歌だけど、下の妹のジェシカにも少し一緒に歌ってもらった。すごく楽しかったよ。ファミリーに加わってもらってよかった。
――バンドとして活動するのですか? それともソロ?
JV:ソロプロジェクトだよ。でも、アルバムの全曲で、ベースとドラムに関しては、それぞれ同じプレイヤーにやってもらったから、バンドみたいな雰囲気もあったね。僕らはうまく溶け込んでいたよ。
――レコーディングにはどれくらいの日数がかかったのですか? F1スケジュールとの掛け持ちはうまくいきましたか?
JV:毎日やって、まる1カ月かかった。クリスマスや大晦日にもレコーディングして、休暇はすべてスタジオで缶詰になっていたよ。ドライバーとしての仕事が始まったら、CD製作の時間なんかとれなかったからね。