フォーミュラニッポンでの実績を認められて、正式にスーパー・ライセンスを発給されたはずの井出有治、その彼がなぜ? 僅か4戦で実質的な「出場停止」ともいえる「アドバイス」をFIAから受けなければならなかったのか?
FIA、スーパー・アグリ関係者ともその詳細を明らかにしようとはしないが、今回の決定がバーニー・エクレストン、ジャン・トッド、フランク・ウイリアムズをメンバーとする「FIA F1パーマネント・ビュロー」の決定によるもののようだ。
FIA F1パーマネントビュローとはF1に関して緊急を要する問題が発生した場合、できるだけ素早い対応をするために設けられているもので、スーパーライセンスの発給基準もそうした案件のひとつ。以前、キミ・ライコネンのF1デビューに際して、ライセンスの発給を最終的に決断したのもこのパーマネントビュローだった。
今回、パーマネントビュローが異例とも言える形で井出の出場に「物言い」をつけた背景には、ウイリアムズやトッドなど、チーム側の声が大きく反映されていた可能性が高く、他のドライバーが抱いていた井出のドライビングに対する不安が前回のイモラの事故で一気に表面化し、チーム側から何らかの対処を求める声が上がったためではないかと思われる。ただし、そのイモラの事故に関してもスチュワードの裁定は「指導」のみ、井出へのペナルティもなく、結論としては「レーシングアクシデント」の範囲内と判断されたはず……。チームにとっても、またドライバーにとっても大きな影響を与える今回の「アドバイス」がなぜ、このタイミングで出されなければならなかったのか?
仮に井出のドライビングがF1にふさわしくないものならば、なぜ、ライセンスの取り消しといった公式な判断ではなく、今回のような「アドバイス」という形を取ることになったのか? 今のところ、その明確な理由が示されていないだけに釈然としない部分が残っていることは確かだ。