ヨーロッパGPにおいて、不運に見舞われたマクラーレンのキミ・ライコネンに代わって優勝を手にすることができたのは、ルノーのフェルナンド・アロンソであった。ルノー・チームは、どのライバルチームとも異なる戦略を選んでいたのだ。
こういった見解を示したのは、エンジニアリング・ディレクターのパット・シモンズである。ヨーロッパGP後、シモンズは、アロンソのマシンがレース後半で速さを発揮するようなストラテジーを採っていたことを明かした。その戦略はうまくいった。ライコネンのマシンはタイヤにできたフラットスポットから発生する振動によって最後はコントロールを失い、最終ラップでターン1のバリアに衝突したのだ。
「今回の勝利は、チーム全体にとって素晴らしいものではあったが、キミとマクラーレンの仕事ぶりも立派だったと思う」と、シモンズは寛大な発言をしている。
「我々は今週末、どことも違った戦略を用いた。レース終盤で功を奏するような戦略だ――実際には、予想以上にうまくいったね」
「フェルナンドは、最初のピットインまでにかなりタイムロスをしてしまった。第1コーナーでラルフ・シューマッハーに衝突されてポジションを落とし、その結果、最初の20周の間はデイビッド・クルサードの後ろで抜きあぐねることになった。だが彼は、これまで何度も見せてくれた安定したレース運びを行った。最後にはもちろん、マシンの強さが発揮された」
タイヤのトラブルで苦しんでいたライコネンは、振動のせいで視界がぶれてしまい、追走者たちに比べて1周あたり何秒も遅いラップタイムしか刻めなかった。その間、アロンソはライコネンを追い抜いて1位でフィニッシュするためのセットアップを最大限に活用した。最終ラップ、アロンソはライコネンまでわずか1秒ほどのところまで迫ってきた。だが、アロンソがオーバーテイクできたかどうかは、ライコネンの身に起きたアクシデントによって現実的に明らかになることはなかった。
「マシンは絶好調だったよ」とアロンソは語った。
「ドライブしやすくて、戦略は紛れもなく完璧だった」
「最後のピットストップまで、2位という結果でも満足だと思っていた。でも、チームがライコネンにトラブルが発生した、プッシュしろと言ってきたんだ――コースオフしたのは、ちょうどこの時だよ。100パーセント全力を尽くしていて、ミスしてしまったんだ。それでも僕は、キミに追いついた。すると、キミが第1コーナーでクラッシュしたのが目に入ったんだ。その後は冷静に最終ラップを走りきり、チェッカーフラッグを受けるだけだった」
マネージング・ディレクターのフラビオ・ブリアトーレは、アロンソと喜びを分かち合い、ドライバーがふたりとも彼の考えた戦略を最大限に生かしたことを讃えた。
「今回の勝利は、チーム全体にとって素晴らしいものだった。フェルナンドは特に、最初から最後まであきらめることなく走り続けた」とブリアトーレ。
「レース前、他チームのマシンは燃料の搭載量が少なく、軽いと思われた。レースが始まり自分たちの予想が正しかったと知ったが、と同時に我々はポジションを上げることに成功し、自分たちが正しい戦略を立てていたことが判明した」
「ミシュランは優秀なタイヤを準備してくれた。我々は、そのタイヤをうまく活用し、最終ラップまでマクラーレンにプレッシャーをかけ続け、これが見事に成功した。我々は今日、マシンの速さを見せつけた――フィジコ(ジャンカルロ・フィジケラ)は最下位から14番手もポジションを上げ、6位でレースを終えている。よって私は、素晴らしい勝利を手にしたチームの全員におめでとうと言いたい」