F1の商業権を握るバーニー・エクレストンと、株式の過半数を保有するドイツの3銀行は、長い間権力争いを続けてきたが、このたび将来の訴訟を回避する合意に達した。
双方は秘密の条項に同意した。つまり、契約の詳細はほとんど明らかにされないということだが、その結果として、5月初旬に予定されていた訴訟が取りやめられることになった。この訴訟では、事実上グランプリシリーズを運営しているフォーミュラワン・アドミニストレーション(FOA)とフォーミュラワン・マネージメント(FOM)をエクレストンが所有し管理していることについて、銀行側が異議を申し立てようとしていた。
どのような合意が成立したのかが秘密にされていることで、自然の成り行きとして、誰がこのスポーツを支配することになったのか、という疑問が生まれる。両者が協力し合っているのか? 銀行側が支配権を渡されたのか? バーニーが銀行側所有の75%の持ち分を買い戻したのか? 誰がFOAとFOMを運営するにしても、バーニーが引き続きF1の表看板を務めることになったのか?
現在74歳のエクレストンは、F1を商業的に成立させた功績を広く認められている。このスポーツが、ほとんどテレビ中継もないレースを開催し、経済的な副産物を生むこともなく世界中をさまよっていた時代に、エクレストンはテレビや他の商業権を管理するようにした。内部の者には考えられないことだが、銀行側が今、それらの管理責任を負うことになれば、その経験なしにやっていくことになる。
しかしその一方では、F1の現在のあり方に反対し、フェラーリが優遇されていることに反感を持つ他の9チームは、エクレストンなしのグループと契約を結ぶことに対しより積極的になるかもしれない。2008年に深刻な分裂が起こる前に、F1を再編する可能性を高めるためだ。GPWCがライバルシリーズの立ち上げに成功すれば、3銀行が所有する株はみな価値が激減するだろう。
F1のウェブサイト、grandprix.comによれば、「F1に参戦している自動車メーカーが明らかに真剣になってきている今、自分たちの資産を守るために」エクレストンと銀行側が協力し合うことになるだろうという。
「3銀行は、戦いの末に支配すべきものが何も残らないのなら、支配権を握ろうと試みても意味がない。しかしそれと同時に、彼らが大きな勝利を得られそうなところまで行っていれば、エクレストンが妥協したかもしれない。これからの何カ月かは、交渉相手が本当は誰なのかを知らないままに、各チームはエクレストンと交渉していくことになるかもしれない」