ジャガー・レーシングは今までより大きなコントロールを受け、フォードをチーム名に据えるのではないかともっぱらのウワサであったが、実際はその逆で、フォードはチームの売却を進めている。
フォードは、F1のプログラムでさらに資金を投入するためにワールドラリーとの関わりを減らしてきていた。しかしジャガーチームのミルトン・キーンズの本部で従業員は、今朝突然に呼び出され、業務は即座に売却にかけられると話されただけだった。フォードは2000年、いわゆる‘ワークス’としてF1に参戦した。ジャッキー・スチュワートのチームを買い取り、有名なジャガーのリーピングキャットのロゴをつけてかつてのジャガーのイメージを強調させるようにブリティッシュ・レーシング・グリーンのカラーリングで走らせた。しかしながらチームはそのポテンシャルを発揮することができず、これまでに数度の表彰台フィニッシュを獲得したものの、コンストラクターズのランキングで7位を上回ることはついになかった。エディー・アーバイン、ジョニー・ハーバート、そして最近ではマーク・ウエーバーといったドライバーたちでさえ、チームに幸運をもたらすことはできなかった。
そしてついにフォードはこれまでF1に落としていた金を違うところに回したほうがよいという結論に至ったようだ。「熟慮を重ねた結果、フォード・モーター・カンパニーは、フォーミュラ・ワンにかかわるビジネスから撤退することを決定した」ジャガーのチェアマン、ジョー・グリーンウェルは声明の中でそう語っている。「その結果としてわれわれはフォーミュラ・ワンのビジネスを売却しようと考えている」「F1でのジャガーの存在はマーケティング上では価値があったし、またそのブランド認知という意味ではわれわれのメインマーケットであるアメリカ、イギリス以外で特に効果があった。しかしながら、今はわれわれの中核をなすビジネスに100パーセントの力を注ぐときだと判断した。今回の決定に至り、F1関係のビジネスの将来をよりよい形で残し、またそれにかかわっている従業員を残していくことを重要視した」
フォード・モーター・カンパニーは、現在乗用車販売で発生した損失の回収に努めているところであり、またモータースポーツのプログラムでは結果として苦しい状況にある。NASCARに関しては影響は見られないようだが、マルコム・ウィルソンが率いるM−スポーツによるWRCプログラムは、2005年以降の資金について結果は出ていない。
現在のF1チームの代表である、トニー・パーネルは、来シーズンに向けての予算は確保できていると述べていたが、彼の見方は少々楽観的だったようだ。このチームを買収する可能性があるのは、レッド・ブルとF3000のチャンピオンであるアーデン・インターナショナルで、現在は注意深く動向を見つめているところだ。
フォード・プレミア・パフォーマンス・ディビジョンのリチャード・パリー−ジョーンズはまた、フォードの子会社で、レース用エンジンを製作しているコスワース社をも売却すると発表した。コスワースは現在ジャガーとミナルディーの両チームにエンジンを供給しており、2005年にミナルディへ引き続き供給すると先週発表されたばかりだ。フォードは今シーズン、ジョーダンにエンジンを供与していたが、このチームもまた買い取り手を求めており、来年はトヨタと交渉を始めるのではないかと囁かれている。