マーク・ウエーバーは日曜日の夕方、オリンピックの最終日ハイライトをＴＶで見ていると、見覚えのある顔がＴＶ画面に映し出され、デジャ・ブの感覚を味わった。
　ウエーバーがアップで見たのは、聖職を奪われた元宣教師コーネリアス・ホーランであり、まさしく昨シーズンのイギリスＧＰでシルバーストン・サーキットに乱入し、騒ぎを起こした男であった。ウエーバーは目を疑った。見覚えのあるオレンジと緑色のゲール人の衣装を身にまとった男が、オリンピックの男子マラソンで先頭を走っていた選手にラグビーよろしくタックルしたのだ。
「信じられなかったよ」とウエーバーはジャガー・チームのオフィシャルＨＰで語った。「すぐに言ったんだ、“シルバーストンに乱入した男と同一人物だ！”ってね。正直言えば、あんな衣装を身にまとった男を間違いようがないけど！」
「今朝新聞を読んでいたら、やっぱりあの男だった！　去年僕は、あの男は狂人だって話してたんだけど、もちろん僕の見方は変わってないよ！」
　ブラジル人走者であるバンデルレイ・デ・リマは、ホーランの乱入によって勢いを失い、最終的にペースを乱し３位でゴールした。しかし、デ・リマはフェアプレーと五輪の価値を卓越した形で示す「ピエール・クーベルタン・メダル」を贈呈された。一方、ホーランはアクシデントの直後に観客から取り押さえられ、後に警察が逮捕、裁判所から執行猶予付きの禁固１年を言い渡された。