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【F1チームを支える人々:ハースPR責任者モリソン】「人生最大の狂気じみた出来事」はグロージャンの事故とマゼピンの不祥事

2026年4月27日

 F1チームには多数の人々が関わり、さまざまな職種が存在する。この連載では、普段は注目を浴びる機会が少ないチームメンバーに焦点を当て、その人物の果たす役割と人となりを紹介していく。今回取り上げるのは、ハースのコミュニケーション責任者を務めるスチュアート・モリソンだ。

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 ドライバーやチームを巡るストーリーと報道を管理することは、F1の運営において脇役的な役割に見えるかもしれない。しかし、このスポーツの人気が高まり、ファンによるアクセスや報道への需要が爆発的に増大している現状を踏まえれば、それは極めて重要な役割である。もちろん、従業員数という点でグリッド最小クラスのチームであるハースでもそれは変わらない。

■創設当初からハースを支えるモリソン

 ハースは2015年にジーン・ハースとギュンター・シュタイナーによって設立され、翌シーズンに参戦を開始した。新規参入チームが資金難により数年で消滅するという過去10年ほどの傾向に逆らい、数少ない成功例となっている。そのビジネスモデルは、フェラーリとの技術・エンジン供給契約、およびイタリアのサプライヤーであるダラーラとのシャシー提携に支えられており、いずれもチーム創設から10年を経た現在も継続中だ。「壊れていないものを直すな」という格言をそのまま体現しているわけだ。


 現在も人員規模は最小クラスの一つながら、創設当初からのオリジナルメンバーが中核を担っている。約300人の従業員のうち、F1参戦開始時から在籍するのはおよそ10人。その一人が、現在チームのコミュニケーション責任者を務めるスチュアート・モリソンである。社内外に向けたメッセージ戦略を統括する彼の役割は、直接コース上の結果をもたらすものではない。しかしハースの歩みは、その重要性を雄弁に物語っている。F1のインタビューやNetflixをよく見ている人なら、知らず知らずのうちに彼の姿を目にしているはずだ。

スチュアート・モリソン(ハース)
ハースF1コミュニケーション責任者スチュアート・モリソン

■モータースポーツ一筋、数十年のキャリア

 スコットランド出身のモリソンは、1997年にフォーミュラ・パーマー・アウディのプレスオフィサーとしてキャリアをスタートさせた。その後、自身のPR・コンサルティング会社を設立し、主にインディカーでジャスティン・ウィルソン、ジェームズ・ヒンチクリフ、ロバート・ウィケンスらと協働。短命に終わったA1 GPワールドカップ・オブ・モータースポーツにも関与した。時計ブランドのTWスティールでPR統括を務めた際には、F1のロータスおよびフォース・インディア、MotoGPのヤマハ、さらにはエマーソン・フィッティパルディ、ミック・ドゥーハン、ダリオ・フランキッティといった業界の伝説的存在とも仕事をしている。


 ハース加入当初、彼は文字通りの“ワンマンバンド”であり、メディア対応でドライバーに付き添う唯一のスタッフとなることも珍しくなかった。その後、小規模なチームを築いて日常業務の負担を軽減することに成功。現在の職務はチーム全体のメッセージ戦略の統括とブランドパートナーとの緊密な連携に及び、ギュンター・シュタイナーおよびその後任である小松礼雄とも極めて近い関係を築いてきた。

スチュアート・モリソン(ハース)とオリバー・ベアマン
ハースF1コミュニケーション責任者スチュアート・モリソンとオリバー・ベアマン

■危機の際に最前線に立って対応

 モリソンの豊富な経験はハースにとって不可欠であり、チームが直面した最も困難な局面において、報道陣との主要な――時には唯一の――橋渡し役を務めてきた。小規模チームであるハースの歩みは決して平坦ではなく、特に初期には外部資金に依存せざるを得なかった。これは時に深刻な問題を引き起こし、PRやコミュニケーションの担当者にとって、真価が問われる瞬間となった。


 具体的には、2019年の有名なリッチ・エナジー騒動――英国の実業家が約束した資金を支払わなかった問題――への対処がある。さらに、ロシアのウクライナ侵攻後にはタイトルスポンサーのロシアエネルギー企業ウラルカリと、同社オーナーの息子であるドライバーのニキータ・マゼピンとの契約打ち切りという事態にも直面した。いずれも大きな論争を伴う出来事だった。

 モリソンは、率直で断固とした人物としてF1界で評価されており、難しい問題に対しても明確かつ簡潔な説明をメディアに提供し続けている。通常は下位チームに目を向けない大手メディアのスポットライトがハースに向けられた場面でも、その資質は遺憾なく発揮された。「この仕事では、戦いが次から次へと続くことがある」と、彼はインタビューで率直に語っている。

スチュアート・モリソンとケビン・マグヌッセン(ハース)
2023年F1アメリカGP ハースF1コミュニケーション責任者スチュアート・モリソンとケビン・マグヌッセン

■『Drive to Survive』に前向きに協力

 さらに印象的なのは、こうした出来事に対するチームの開放的な姿勢だ。ハースの苦境はNetflixのドキュメンタリー『Drive to Survive(邦題Formula 1: 栄光のグランプリ)』の記憶に残るエピソードの中心となってきた。モリソンは、2017年スペインGP前にこの企画が初めて持ちかけられた時のことを今でも覚えている。当時、このシリーズが後に与える影響を予測していたかと問われ、彼はこう答えた。


「まったく想像していなかった。どのようなものになるのか、見当もつかなかった。最初に話を聞いた時、一部のチームは関わるのが面倒だと感じていた。我々も、これほどの成功を収めると知っていたとは言えない。だが、小規模チームだった我々は、とにかく前向きに『イエス』と言う姿勢を取ったのだ」


 元上司のギュンター・シュタイナーは、ハースが惜しみなく提供した舞台裏へのアクセスによってシリーズ初期のスターの一人となり、リッチ・エナジーやウラルカリをめぐる論争も番組内で取り上げられた。2020年バーレーンGPでのロマン・グロージャンの炎上事故もその一つだ。モリソンは事故後にシュタイナーとともに病院を訪れ、その週の大半をメディア対応に費やした。彼の冷静かつ理性的な危機管理はF1界全体から称賛され、グロージャンは普段F1を報じないメディアにも出演することとなった。

2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 ロマン・グロージャン(ハース)が大クラッシュ
2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 ロマン・グロージャン(ハース)が大クラッシュ

■「人生で最も狂気じみた一週間」

 グロージャンの事故は広く記憶されているが、モリソンにとって最も過酷な瞬間は実はその1週間後に訪れた。バーレーンからアブダビへ移動し、グロージャンの代役としてピエトロ・フィッティパルディが出場、翌年に向けてマゼピンの起用を発表、比較的穏やかな週末になるだろうと見込んでいた時のことだった。


 しかし、マゼピンが交際相手とともに映った不適切とみなされた動画が公開され、瞬く間に論争へと発展。ハースへの批判は一気に広がった。「その頃には精神的に完全に消耗していた」とモリソンは振り返る。「ロマンの件を乗り越えて安堵したものの、何日にもわたる報道が続き、人生で最も狂気じみた一週間を過ごした。その直後にニキータの発表を行い、その後、猛烈な否定的反応が巻き起こった。精神的に対処できる状態ではなかったよ。その騒動はシーズン終了をまたいで2021年の開幕まで続いた」

 一見些細な出来事であっても、人間に大きな負担を与えることがある。そしてF1においては、どんな出来事も――小さく見えるものでさえ――チームの一員として働く誰かの肩に、確実にのしかかってくる。モリソンの言葉からそれを窺い知ることができる。



(Text : Nate Saunders)


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