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「鈴鹿でも結果を」密かに狙っていた選手権4位と、想定外の新規則予選の難しさ【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】
2026年3月23日
今年で11年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。開幕戦オーストラリアGPと連戦で行われた第2戦中国GPでは、オリバー・ベアマンが2戦続けて中団勢トップの結果を残した。これによりハースは2戦を終えた時点でコンストラクターズ選手権4位につけており、次の第3戦日本GPに向けて、同様に高いレベルでのオペレーションを実行することを目標に掲げている。
またオーストラリアと中国ではサーキットの特性が異なることで、新規則の与える影響にも変化があった。改善点があることに変わりはないが、小松代表は早すぎる規則変更の可能性を懸念した。
今回のコラムでは、第2戦中国GPを小松代表が振り返ります。
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■2025年F1第2戦中国GP
No.87 オリバー・ベアマン スプリント予選9番手/スプリント8位/予選10番手/決勝5位
No.31 エステバン・オコン スプリント予選12番手/スプリント10位/予選13番手/決勝14位
第2戦中国GPでは、日曜日の決勝レースでオリー(編注:オリバー・ベアマンの愛称)が5位に入賞し、開幕から2戦続けて中団チームのなかでトップの位置で終えることができました。結果だけを見ても最高ですし、めちゃくちゃいい週末でした。
今回すごくよかったのは、前戦オーストラリアGPの予選とレースで達成できた高いレベルのオペレーションを、FP1から実現できたことです。前回のコラム(編注:“基本に忠実”で中団トップの7位入賞。新規則初戦は予想通り「エネルギーがすべて」【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第2回】/2026年3月11日掲載)にも書いた通り、中国GPはスプリント・フォーマットでの開催なので、FP1から高いレベルのオペレーションをすることが必須条件で、それができたのでFP1でしっかりと基本の確認をしてスプリント予選に臨めました。これがスプリントと日曜日のメインのレースでいい結果を出せた一番の要因だと思います。
5位という結果は、一夜にして何かを成し遂げたから手にしたものではありません。遡って考えてみると、2025年にVF-25とVF-26の開発を並行して進めて、今年の1月にフィオラノでのシェイクダウンを間に合わせ、そしてバルセロナでのシェイクダン初日から154周を走ったこと、それらがすべてここまで繋がっているんです。もしフィオラノで走れていなかったら、シェイクダウン初日にあそこまで走行距離を伸ばすことはできなかったですし、2日目の早い段階で信頼性の問題を見つけることもできなかったはずです。さらにプレシーズンテストを終えた後のクルマの理解度やオペレーションの精度も今とは全然違っていたと思います。このようにひとつひとつのマイルストーンをクリアすることの重要さをチームのみんなが理解して一丸となってやってきたことが成果として表れたのがレース結果です。これを次の第3戦日本GPでも続けていきたいです。

もう少し詳しく中国GPを振り返ると、土曜日のスプリントでは、オリーはリアム・ローソン(ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム)に負けて8位でした。ローソンのようにハードタイヤを使う方がよさそうなのはわかっていましたが、僕たちは日曜日のレースに焦点を当てていたのでハードを温存することを選びました。というのも、もしレースの中盤以降にセーフティカー(SC)が導入されたら2セット目のハードタイヤが必要になるからです。
新規則での2戦目で、まだ信頼性も確保されていないので、レース中にSCが出る確率が高いと考え、決勝では2台の戦略を分けました。トップ10からスタートするオリーは、セオリー通りにミディアムタイヤでレース序盤のSCをカバー、逆にエステバンはレース中盤から後半あたりでSCが出た際にカバーできるようにハードタイヤでスタートしました。エステバンは長いことフランコ・コラピント(BWTアルピーヌF1チーム)を抜けず、その後のピットストップで作業ミスがありさらにタイムロスしてアンダーカット失敗、そしてコラピントのピットストップ直後に接触し14位に終わりました。ピット作業の問題がなければ8位か、少なくとも9位には入れていたと思うので、このポイントの取りこぼしは痛かったです。

オリーの方は、昨年の第20戦メキシコシティGPのような素晴らしい走りをしてくれました。2.5秒後ろにマックス・フェルスタッペン(オラクル・レッドブル・レーシング)が長いこといましたけど、まったく差は縮まりませんでした。僕はあの時フェルスタッペンよりもその後ろのピエール・ガスリー(BWTアルピーヌF1チーム)の方を懸念していて、もしフェルスタッペンが抜かれたらちょっとまずいなという感じでしたけど、最後までオリーはミス無くいいペースで走ってくれました。
これは誰にも言わずにいたのですが、実は土曜日の夜の時点で、僕の目標は選手権4位で中国GPを終えることでした。今回レッドブルがそこまで速くないのはわかっていたので、もし僕たちがきちんとやるべきことをやればレッドブルと戦えると考えていました。まあまだ序盤の2レースを戦っただけなので選手権の順位を考えても仕方ないのですが、今の時期はリタイアするクルマも多いですし、とにかく自分たちがいるべき位置に常にいることが大事です。オーストラリアGP、そして今回のスプリントとメインレースの3回のレースのなかで、僕たちは少なくとも1台はそういうところにいたと思うので、チームが成長している証拠だと評価しています。
次はいよいよ日本GPですが、正直に言えば結果を出したいですね。戦えるチームと戦って勝ちたいです。でも結果にこだわってもどうしようもないし、自分たちがやらなければいけないことだけに集中してやれば結果はついてくるはずです。それをこの2戦で証明しました。もちろん結果も大切ですが、僕たちがどうやって戦っているのか、ハースはどういうチームなのかというのをファンの方々に少しでも感じ取ってもらえたら嬉しいです。日本人の僕が代表をやっていて世界選手権で戦えているところを見て、それでもし「自分もやればできるのではないか」と思ってもらえれば幸いです。

■上海では新規則の影響が予選で顕著に。エネルギー管理中心の“本来の走り”とは程遠い現状
前回のコラムでは、エネルギーがすべてを左右するという話をしました。中国GPの舞台である上海インターナショナル・サーキットは、予想通りメルボルンのアルバートパーク・サーキットほどエネルギーの回収が難しいコースではなかったので、規則に改善の余地があることはもちろんですが、レースごとにみんなの規則に対する意見は変わるものだと実感しました。
今回僕が感じたのは、特に予選でドライビングがエネルギー使用に与える影響が大きすぎるということです。コーナーの出口でのアクセルの踏み方によって、エネルギーを無駄に使ってしまうかメインストレートまできちんと温存できるかが大きく変わってしまうんです。事前にシミュレーターでわかっていたことですが、中国GPでは想定していたのとは少し異なる悪影響がありました。
本来ならば、予選でタイムを出そうとして攻める走りをする際には、グリップが上がるにつれて早めにアクセルを踏んでいいはずですよね。これまではもし早く踏みすぎてリヤタイヤが滑ってしまった場合は、アクセルを戻して、コンマ数秒をロスするだけで済んでいました。それが現状では、コンマ数秒のロスに加えて、すぐ後の直線でエネルギーをかなり浪費してしまうんです。なぜかというと、今の規則では、ひとつのストレートで電気エネルギーを使いすぎないようにするために、段階的にMGU-Kの出力を絞ることになっています。アクセルを戻してから再度フルスロットルにするのが遅れれば遅れるほど、MGU-Kの出力を絞るのも遅れます。つまり、エネルギーを使いたくないところで使ってしまうことに繋がるのです。

すごく簡単に言えば、アクセルの踏み方のちょっとした違いによって、エネルギーを使いたくないところで余計に使ってしまう、という状況に陥るということです。本来、予選というのはブレーキングでもコーナー出口でもドライバーがグリップの限界を探りながら、ギリギリのところで走るものです。それが今の状況では、ドライバーは「ここでこれだけアクセルを踏んだら、次の直線でエネルギーはどうなるのか」、「こうするとエネルギーを浪費するから、そうならないようにしよう」と、とにかくエネルギー温存のためにドライブしているような状況です。ですから前回のコラムで、ドライバーがシステムの奴隷になっていると表現したのです。
このように改善すべきところはありますが、じっくりと何戦か様子を見ることも重要だと思います。たとえば上海では、オーバーテイクの質はオーストラリアGPよりかなりいいもので、日曜日のレースは見応えがあったと思います。次の鈴鹿はオーストラリアのようにエネルギーに厳しいので、またオーバーテイクの質が落ちる可能性もあります。ですから僕はあまり早い段階での規則変更には基本的には反対です。第4戦バーレーンGPと第5戦サウジアラビアGPがなくなったことで次の第6戦マイアミGPまで約1カ月空くので、何かを変えるタイミングができたようにも思えますが、メルボルン、上海、鈴鹿という3カ所のデータだけで大きな変更をするのは時期尚早です。唯一変えるべきことは先にも書いた「予選でドライバーがエネルギーに縛られずグリップの限界で走れるようにする」ということです。これは比較的マイナー変更のみでかなり状況が改善されるはずなので、これだけは早急に対処すべきだと考えています。


(Text : Ayao Komatsu)
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| 1位 | ジョージ・ラッセル | 51 |
| 2位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 47 |
| 3位 | シャルル・ルクレール | 34 |
| 4位 | ルイス・ハミルトン | 33 |
| 5位 | オリバー・ベアマン | 17 |
| 6位 | ランド・ノリス | 15 |
| 7位 | ピエール・ガスリー | 9 |
| 8位 | マックス・フェルスタッペン | 8 |
| 9位 | リアム・ローソン | 8 |
| 10位 | アービッド・リンドブラッド | 4 |
| 1位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 98 |
| 2位 | スクーデリア・フェラーリHP | 67 |
| 3位 | マクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チーム | 18 |
| 4位 | TGRハースF1チーム | 17 |
| 5位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 12 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 12 |
| 7位 | BWTアルピーヌF1チーム | 19 |
| 8位 | アウディ・レボリュートF1チーム | 2 |
| 9位 | アトラシアン・ウイリアムズF1チーム | 2 |
| 10位 | キャデラックF1チーム | 0 |





