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【新連載】スタート出遅れが増えたのはなぜか。『プレスタート』の導入背景と時速50kmからの電力サポート/新時代のF1解説第1回
2026年3月15日
F1史上最大規模のレギュレーション変更が行われた2026年シーズンは、これまで私たちが見慣れてきたF1とは少し異なる様相を呈している。そこでそんな新しいF1を理解するために、様々なトピックを不定期で解説していきたいと思う。新時代のF1をより楽しく観戦する一助になれば幸いだ。
最初にとり上げるのは『スタート』だ。開幕戦オーストラリアではアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が2番グリッドから7番手までポジションを落としたり、8番グリッドのリアム・ローソン(レーシングブルズ)が発進直後にほぼ停止時容態となり、後方からスタートしてきたフランコ・コラピント(アルピーヌ)が危うく追突しかけるところだった。

このふたり以外にも、ポールシッターのジョージ・ラッセル(メルセデス)が、バッテリーが十分に充電されていなかったことで4番グリッドのシャルル・ルクレール(フェラーリ)にトップの座を奪われたり、3番グリッドのアイザック・ハジャー(レッドブル)も「発進時にバッテリーがほとんどない状態だった」と明かした。
最近のF1では、ほとんど見ることがなかったスタートでの出遅れ。それが開幕戦では1台のみならず、複数台に起きたのには、新しくなったレギュレーションが影響している。
昨年までは、MGU-Hが電動モーターとしてコンプレッサーを回転させ、ターボラグ(アクセルを踏んでからターボが効き始めるまでの時間差)を解消させる役割を果たしていた。しかし、今年からMGU-Hが廃止された。MGU-Kを使ってターボを回すことはレギュレーションによって禁止されている。テクニカルレギュレーションの第5条2項19では、「スタート前にグリッド上で停止している間、MGU-Kのトルクは負のトルク(充電)にしか使えない」と定められている。
そうなると、残るターボラグ解消法はエンジン回転数を高く保つことしかない。そのため、国際自動車連盟(FIA)は開幕直前にレギュレーションを変更。すべてのマシンがグリッドに整列したあと、スタートライトが作動する前にブルーのパネルを5秒間表示する『Pre Start(プレスタート)』が導入された。この5秒間にドライバーたちはエンジンの回転数を高い状態に維持することで、ターボラグによる失速を回避することになった。

それでもアントネッリとローソンはスタート時に失速した。これはエンジン回転数とクラッチ操作のバランスが適正ではなかったか、フォーメーションラップでタイヤの温度を適正な領域に入れることができなかったことが原因として考えられる。
また、ほかのドライバーたちはスタート時の発進はよかったものの、直後に失速した。これには別の理由が考えられる。
2026年から導入されたテクニカルレギュレーション第5条2項12では「MGU-Kの使用はスタンディングスタート時、車速が時速50kmに達した後に可能となる」と明記されている。つまり、発進は問題なかったのに直後に失速したのは、時速50kmに達した後に使用できるはずのエネルギーが足りなかったといういわゆる「電欠」を起こしていた可能性が高い。
なぜ、スタート直後に電欠していたのか? それはスタート時にタイヤとブレーキの温度を適正な領域に入れるために、昨年までと同じ感覚でフォーメーションラップでバーンアウトしすぎたために、想定よりも電気を使用したことが考えられる。
またフェラーリのスタートがオーストラリアGPだけでなく、第2戦中国GPのスプリントでも相対的にメルセデスよりもよかったのは、フェラーリがメルセデスよりも小型のターボを搭載して低めのギヤレシオを採用している可能性も考えられる。
アウディのジョナサン・ウィートリー代表は、今年のスタートの難しさを次のように語った。
「今年はフォーメーションラップで管理すべきことが山ほどある。単に周回してグリッドに並び、スタートを切るだけとは程遠いんだ。タイヤとブレーキの温度も適正な範囲に保ち、エネルギー管理も適正な範囲に保たなければならない。開幕戦ではいくつかの教訓を得たし、FIAは現在もスタート手順の改良に取り組んでおり、それによって状況は改善されるはずだ」
このように今年のF1はスタートで例年以上に波乱が起きる可能性がある。中国GPのスプリントではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が大きく出遅れた。果たして、2戦目の決勝レースはどんなスタートとなるのか注目しよう。
(Text : Masahiro Owari)
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| 1位 | ジョージ・ラッセル | 25 |
| 2位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 18 |
| 3位 | シャルル・ルクレール | 15 |
| 4位 | ルイス・ハミルトン | 12 |
| 5位 | ランド・ノリス | 10 |
| 6位 | マックス・フェルスタッペン | 8 |
| 7位 | オリバー・ベアマン | 6 |
| 8位 | アービッド・リンドブラッド | 4 |
| 9位 | ガブリエル・ボルトレート | 2 |
| 10位 | ピエール・ガスリー | 1 |
| 1位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 43 |
| 2位 | スクーデリア・フェラーリHP | 27 |
| 3位 | マクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チーム | 10 |
| 4位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 8 |
| 5位 | TGRハースF1チーム | 6 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 4 |
| 7位 | アウディ・レボリュートF1チーム | 2 |
| 8位 | BWTアルピーヌF1チーム | 1 |
| 9位 | アトラシアン・ウイリアムズF1チーム | 0 |
| 10位 | キャデラックF1チーム | 0 |





