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“基本に忠実”で中団トップの7位入賞。新規則初戦は予想通り「エネルギーがすべて」【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第2回】
2026年3月11日
今年で11年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表が、ついにレギュレーションが大きく変わった新時代のF1開幕戦を迎えた。第1戦オーストラリアGPではオリバー・ベアマンが中団勢トップの7位に入賞し、ハースにとってこれ以上ない成績の開幕戦となった。しかしその一方で、新しい技術規則のもとで導入されたパワーユニット(PU)の使い方に関しては、懸念していた通りエネルギーに頼る割合が非常に大きく、ドライバーとクルマの関係性が逆転していると小松代表は指摘した。
今回のコラムでは、第1戦オーストラリアGPを小松代表が振り返ります。
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■2025年F1第1戦オーストラリアGP
No.87 オリバー・ベアマン 予選12番手/決勝7位
No.31 エステバン・オコン 予選13番/決勝11位
2026年シーズンの開幕戦が終わりました。前回のコラム(編注:「当たり前がそうではなくなった」新規則、カギはバッテリー管理。開幕戦へのマインドセット【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第1回】/2026年3月5日掲載)の最後にも書きましたが、開幕戦に向けてチームには「やるべきことを簡素化して、基本に忠実にやる」と伝えていて、結果としてそれができたと評価しています。レースではセーフティカーの出動や赤旗中断など、いろいろなことが起こる可能性があり、その時に冷静にきちんとした判断を下すことができれば結果はついてくると思っていたのですが、その通りになりました。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チーム)がグリッドにつけず、アイザック・ハジャー(オラクル・レッドブル・レーシング)は序盤にリタイアとなり、トップ4チームの6台のすぐ後ろ、7位にオリー(編注:オリバー・ベアマンの愛称)が入賞したということは、中団勢の争いで勝ったということです。オペレーションを「基本に忠実にやる」ということをなんとかやりきれたと思います。レース中の2回のピットストップもそれぞれ2.5秒、2.8秒と3秒以内でやれましたし、基本をきちんとやっていれば結果を出せることを証明できました。これがみんなの自信に繋がるのは確かです。
プレシーズンテストではBWTアルピーヌF1チーム、アウディ・レボリュートF1チーム、ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チームと戦っているという感触でしたが、実際に開幕戦でもこの3チームとの戦いになりました。この戦いの場にいれること自体僕はすごく嬉しいですし、ハースと他チームとの差はそれほど大きくないと思います。予選ではレーシングブルズが一番速くて、アウディ、ハース、アルピーヌという並びになりましたけど、オリーもエステバンもパフォーマンスを出しきれなかった部分があるので、それがなければレーシングブルズとほぼ互角の速さで戦えていたと思っています。
レースでは序盤からエステバンはピエール・ガスリー(BWTアルピーヌF1チーム)と戦っていましたが、残念ながらクルマのバランスがいまいちでペースが上がらず負けてしまいました。オリーはスタートで失敗したものの、その後順位を上げアービッド・リンドブラッド(レーシングブルズ)の後ろ、8番手まで来ました。しかし彼らのディプロイメント(電気エネルギーの回収と放出による駆動アシスト)がすごくよかったので、ターン1やターン3、ターン11では直線スピードが速くて、オーバーテイクはすごく難しかったです。だからオリーには、無理に追い抜こうとせずに、リンドブラッドのタイヤがもう少しタレるのを待って、絶対に追い抜けるという状況でのみブーストモードを使って抜くように指示をしました。

この時のチームとドライバーのコミュニケーションも焦らずよくできたと評価しています。今回戦っていた相手はみんな違うパワーユニット(PU)を使っていて、レーシングブルズはレッドブル・フォード製、アウディは自社製、そしてアルピーヌはメルセデス製です。常にGPSを見ながら、誰がどの区間で速いのかを把握して、なるべく正解の情報をドライバーに随時伝えて戦うことができました。
僕が一番心配していたのは(これも前回書いたことですが)、メルセデスPUユーザーが全開で走った時にどれくらい速くなるかということです。メルセデス本家が土曜日のフリー走行3回目を全開で走ってどれだけ速かったかを見ればわかりますよね。僕はあれをずっと恐れていたのです。しかしメルセデスPUカスタマーのアルピーヌやウイリアムズは、今の段階ではそれほどテストの時と競争力は変わらなかったので、まあホッとしています。

ちなみに、ハースの僕を含むこの4チームの代表は、みんなかつてフラビオ・ブリアトーレのもとで仕事をした経験があります。レーシングブルズのアラン・パーメインは僕のルノー時代の上司で、今アルピーヌにいるスティーブ・ニールセンも以前ルノーにいました。アウディのジョナサン・ウィートリーはベネトン時代からです。彼は2005年末にルノーを離れてしまったので僕は一緒に働いたことはありませんが、共通の仲間が多いのでよく知っています。フラビオはエンストン(旧ルノーF1/現アルピーヌF1本拠地)に縁のある4人が戦っているのを見て、まるで自分の子供が育ったかのようだと喜んでいました(笑)。
■エネルギーに左右されるオペレーション。現状は「戦いながら学んでいる」
新しい技術規則が導入されて最初のレースを戦って感じたのは、率直に言うと、懸念していた通りという感じでした。つまり、エネルギーに対する依存度が高すぎるということです。見に来てくださっている観客のみなさんの目の前でクルマの順位が入れ替わるというアクションが増えるのはいいことだと思いますが、結局はエネルギーがすべてで、ドライバーやF1で働いている人間が不満を持ってしまうのもそれが理由です。
オーストラリアGPはバッテリーの管理をしながら実際に戦う最初の機会となりましたが、ドライバーたちは結構難しそうにしていました。今のところは、やりながら学んでいるという状況です。たとえばコース上のどこかでオーバーテイクをしようと思ってブーストモードを使って、その代償が次のストレートでどれくらいあるのか、というのもまだドライバーが感覚としてわかっているわけではありません。

何かの規則を作る際、規則のうちのある一面、もしくはあるひとつの分野だけが突出しているレギュレーションというのはあまりいいものではありません。昔はタイヤに関する規則が突出していて、タイヤが勝負のすべてでした。2014年にハイブリッドPUが導入された時はハイブリッドのエンジンがすべてで、グラウンドエフェクトカーの時代は空力とタイヤがすべてでした。今は電気がすべてを左右してしまうので、電気に頼る割合を減らすべきだと考えています。そうすればバッテリーの差のみでオーバーテイクをする、されるということも減りますし、バッテリーを浪費しないためにフルスロットルで走らないなんてこともなくさないといけないと思っています。あまりにがんじがらめになっている規則を取り払って、もっとチームやドライバーの自由度を高めた方がいいと思います。
ちょっと言葉は悪いかもしれないですが、今の状況では、ドライバーがシステムの奴隷になっていると感じます。システムを機能させるために「ここでスロットルオフしないといけない」、「ここで全開で踏んではいけない」となっていますが、それは本来のレースの姿ではない気がします。本当はドライバーが好きに使えるような道具を与えなければいけないんです。ドライバーが使いたい時に使えるオプションとして電気を与える、つまりバトルのための引き出しを増やす、というふうにするべきだと思います。

この後すぐに連戦で第2戦中国GPがありますが、その後に今後の方針について話し合いをすることになっています。でも中国GP終了後に規則を変えるのが正しいのかというと、僕は少し疑問です。というのも、オーストラリアGPの舞台であるアルバートパーク・サーキットはエネルギーの回収がすごく難しいコースなので、この規則の影響を大きく受けました。次の上海インターナショナル・サーキットはアルバートパークほど難しくないでしょうし、その次の鈴鹿でのエネルギー回収はこのふたつの中間くらいの難易度だと予想しています。いろいろなサーキットでレースをして、データを集めて、何を変えなければいけないのかを考えるべきなので、中国GP後に何かを変えるのは時期尚早かもしれません。規則を何度も変えるのはよくないので、変える際はよく吟味して一度だけできちんと根本的な問題を解決するべきです。
エネルギーマネジメントの面でいうと、週末のオペレーションはやっぱりすごく大変です。僕たちはオーストラリアGPの金曜日が全然ダメで、チームには少し厳しいことも言いました。そこから土曜日の朝に立て直して、なんとかうまく予選を戦えたのでよかったですが、次の中国GPはスプリントがあります。スプリントの週末は、フリー走行を終えたらすぐにスプリント予選があるので、1時間のセッションでどこまで詰められるか、それが次戦に向けての一番大きなチャレンジになります。より一層基本を大事に、もう一歩レベルの高いオペレーションをすることを目標に戦いたいと思います。

(Text : Ayao Komatsu)
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| 3/6(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
| フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
| 3/7(土) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
| 予選 | 結果 / レポート | |
| 3/8(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
| 1位 | ジョージ・ラッセル | 25 |
| 2位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 18 |
| 3位 | シャルル・ルクレール | 15 |
| 4位 | ルイス・ハミルトン | 12 |
| 5位 | ランド・ノリス | 10 |
| 6位 | マックス・フェルスタッペン | 8 |
| 7位 | オリバー・ベアマン | 6 |
| 8位 | アービッド・リンドブラッド | 4 |
| 9位 | ガブリエル・ボルトレート | 2 |
| 10位 | ピエール・ガスリー | 1 |
| 1位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 43 |
| 2位 | スクーデリア・フェラーリHP | 27 |
| 3位 | マクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チーム | 10 |
| 4位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 8 |
| 5位 | TGRハースF1チーム | 6 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 4 |
| 7位 | アウディ・レボリュートF1チーム | 2 |
| 8位 | BWTアルピーヌF1チーム | 1 |
| 9位 | アトラシアン・ウイリアムズF1チーム | 0 |
| 10位 | キャデラックF1チーム | 0 |


