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ミスと難しいマシンで苦戦の1年。リーダーシップを示した僚友とは「終盤に戦えてよかった」【角田裕毅分析2025年総集編】
2025年12月31日
2025年の第2戦中国GP直後に、レッドブルが「第3戦日本GPからリアム・ローソンに代わって、角田裕毅を起用する」という発表を行ったとき、多くの日本のモータースポーツファンは角田に日本人ドライバーとして4度目のF1表彰台を夢見たに違いない。
しかし、その夢は残念ながら、実現することはなかった。なぜ、角田はレッドブルであれほどまでに苦戦を強いられたのか。そこには、3つの要因が潜んでいたように思う。
ひとつ目が、角田のミスだ。レッドブルに移籍した直後は慎重だった角田が、攻めに転じたのがヨーロッパラウンド初戦の第7戦エミリア・ロマーニャGPだった。初日8番手。チームメイトで初日5番手のマックス・フェルスタッペンとは0.092秒差だったことを考えれば、予選Q3進出はもちろん、フェルスタッペンに予選で勝てる可能性があった。
しかし、それがミスを誘発してしまう。金曜日の夜に施したセッティング変更が外れ、土曜日のフリー走行3回目で17番手に低迷した角田は、セットアップを基本的に金曜日のものに戻して予選に臨むこととなった。その最初のアタックで角田はQ1を1セットのタイヤで通過しようとプッシュしたために、ふたつ目のシケイン(ビルヌーブ・シケイン)でコントロールを失って横転し、グラベルで跳ねながらリヤからウォールにクラッシュした。
「Q1からヒーローになろうとしたのが間違いでした。1セットのソフトタイヤで突破しようと気負いすぎてしまいました」
マシンはメカニックの懸命な作業によって修復された。しかし、このクラッシュによって、コストキャップ下の現在のF1では想像以上に代償は高くついた。エミリア・ロマーニャGP以降、チームは最新パーツをフェルスタッペンに優先して投入するようになったからだ。特に大きかったのが、マシンのパフォーマンスを左右する新しいフロアを使用できなかったこと。第9戦スペインGPでは予選20番手。第11戦オーストリアGPでも予選18番手に沈んだのは、進化が止まったマシンと格闘していたからだった。
その苦しい期間もチーム代表がクリスチャン・ホーナーからローレン・メキースに代わって改善された。メキースはレッドブルの代表に着任して最初のグランプリとなった第13戦ベルギーGPの予選から、新いフロアを角田も使用できるよう指示を出した。これにより、第5戦サウジアラビアGP以来となる予選Q3に進出した。

ところが、今度はチームがミスを犯した。ベルギーGPの決勝レースでは、ウエットからドライに路面コンディションが切り替わるタイミングで、チームはフェルスタッペンに続いて、角田もピットインさせるダブルピットストップを行う準備をしていたが、そのピットインの指示を無線でレースエンジニアのリチャード・ウッドから角田へ出すのが遅れ、角田はホームストレートを通過。角田は翌周ピットインしたが、大きくポジションを落とし、入賞を逃してしまった。
チーム側のミスはその後も続いた。第20戦メキシコシティGPではピットストップ時にリヤジャッキが入らないトラブルで約10秒ロス。第21戦サンパウロGPでは10秒のタイムペナルティ消化中にピットクルーがマシンに触れ、さらに10秒のペナルティが追加された。極め付けは第22戦ラスベガスGPで、予選で使用するタイヤの空気圧が完全に誤った状態となっていたため、まともに走ることができず、19番手に終わった。
ピットクルーはふたりのドライバーとも同じスタッフだが、ピットインを知らせるレースエンジニアやタイヤの空気圧を管理するタイヤマンは同じチームでもドライバーによって担当は異なる。2024年から2025年にかけて、レッドブルはかなり多くのスタッフが流出しており、そのしわ寄せが角田に回ったことで、ミスが連発したのではないかと考えられる。

ただし、それらを考慮しても、チームメイトのフェルスタッペンは最終戦までチャンピオンシップ争いをした。その差はどこにあったのか?
角田はフェルスタッペンについて、こう語る。
「(最終戦の)5戦前までは(マシンの仕様が2台で違っていたので)比べるのはフェアではないと思います。(マシンの仕様が近づいた)最後の5戦は少し(フェルスタッペンに)近づくことができたと思います。もちろん、それでもまだ彼の方が速かったですが、彼はグリッドのなかで最高のドライバー。毎回、コンスタントにパフォーマンスを発揮するのは、すごいなと思いました。そんな彼とシーズン終盤に何回かいい勝負ができたのでよかったです」

もちろん、フェルスタッペンのドライビングテクニックが現役ナンバー1クラスであることは間違いない。だが、フェルスタッペンのすごさはコース上での走りだけではない。それを浮き彫りにしたのが、サンパウロGPだった。
このグランプリで角田は予選19番手に沈んだが、じつはフェルスタッペンも16番手でQ1敗退の憂き目に遭っていた。フェルスタッペンがQ1で姿を消すのは、2021年9月のロシアGP以来、約4年ぶり。レッドブルの所属ドライバーふたりが揃ってQ1で敗退するのは、F1参戦初年度の2006年10月の日本GP以来の2度目の惨事だった。つまり、レッドブルのマシンは少しでもセッティングを外すとタイムが出ない乗りにくいマシンだったことが判明した。
ところが、このレースは角田とフェルスタッペンで対照的な結果となる。17番手からスタートした角田は17位でフィニッシュしたのに対して、セッティングを変えてピットレーンからスタートしたフェルスタッペンは3位まで挽回することに成功した。このレースはフェルスタッペンがいかにレッドブルのマシンを理解し、エンジニアと一緒になって改善するリーダーシップを持っているのかを見せつけることとなった。

もちろん、2016年から10年間チームに在籍しているフェルスタッペンと1年目の角田を比較するのはフェアではない。ただ、エンジニアやチームのミスをただ批判するのではなく、最終的に自分がいい結果を得るために、チーム内でどのように振る舞えばいいのか。フェルスタッペンを間近で見ていた角田にはそのいい手本がいくつもあったはずだ。
2026年、角田はテスト&リザーブドライバーとしてコクピットの外から、F1を学ぶことになる。その経験は、角田が今後再びF1のレースに復帰するために、決して無駄になることはない。




(Text : Masahiro Owari)
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| 12/5(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
| フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
| 12/6(土) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
| 予選 | 結果 / レポート | |
| 12/7(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
| 1位 | ランド・ノリス | 423 |
| 2位 | マックス・フェルスタッペン | 421 |
| 3位 | オスカー・ピアストリ | 410 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 319 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 242 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 156 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 150 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | カルロス・サインツ | 64 |
| 10位 | フェルナンド・アロンソ | 56 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 833 |
| 2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 469 |
| 3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 451 |
| 4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 398 |
| 5位 | アトラシアン・ウイリアムズ・レーシング | 137 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 92 |
| 7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 89 |
| 8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 79 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 70 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 22 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |
| 第24戦 | アブダビGP | 12/7 |


