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【F1チーム別技術レビュー:マクラーレン】MCL39を2025年最強マシンにした5つの要素
2025年12月30日
2025年F1トップチーム各マシンのパフォーマンスと開発戦略を、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが分析した。それぞれのチームはなぜ成功し、あるいはなぜ失敗したのか。今回は、2025年コンストラクターズ&ドライバーズ両選手権を制したマクラーレンMCL39にフォーカスした。
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数多くの改良を辛抱強く積み重ねた結果、マクラーレンMCL39は、比較的早期にマシン開発を止めたにもかかわらず、2025年シーズンを通して圧倒的な優位性を示した。
通算14勝、13回のポールポジション、34回の表彰台。MCL39は2025年シーズンにおける絶対的なベンチマークとなった。シーズン全体にわたる純粋な速さを示した下の比較表(バルセロナに近い距離のサーキット換算でのタイム差)を見ても、その支配力は明白である。

前身モデルは2024年シーズン、すでにコンストラクターズタイトルをもたらしていたが、2025年型マシンは単に残された弱点を修正しただけではない。マクラーレンの技術プロジェクトそのものの基盤を、根本から再定義した存在だった。
チーム代表アンドレア・ステラは、「MCL39は従来のマシンコンセプトを明確に超える存在になると、初めからわかっていた」と語る。
「2025年マシン、MCL39には多くの革新的要素を導入する決断をした。いくつかの分野で、我々のエンジニアリングの限界に近づいていたことを痛感していたからだ。しかしこの変更には、勇気と強い意志を必要としたよ」

■天才的ひらめきよりも、積み重ねの成果
外部からの一部評価とは異なり、マクラーレンの支配は単一のアイデアに依存したものではない。MCL39の成功は、マシン全体のバランスとタイヤマネジメントを最適化する、数多くの解決策を一貫した思想のもとで積み上げた結果である。いわゆる“魔法の一手”は存在しないということだ。
MCL39を極めて速いマシンにした、5つの主要要素は以下のとおりだ。
1)独自のフロントサスペンション
2本の分離されたアームによって仮想的な操舵軸を形成する、マクラーレン独自のフロントサスペンションを採用。
2)可変キャンバーを生かすリヤサスペンション
車体の動きに応じてより大きなキャンバー変化を許容し、コーナー立ち上がりでの追加グリップを生み出しつつ、他の性能を犠牲にしない設計。
3)強められたアンチダイブ/アンチスクワット特性
他チームよりも顕著な制動時の沈み込み抑制(アンチダイブ)と、加速時の車体浮き上がり抑制(アンチスクワット)効果を持つサスペンション。
4)極めて効率的な冷却性能
冷却効率の高さにより、ボディワークの多くを閉じることが可能となり、空力効率の向上につながった。
5)卓越したタイヤ温度管理
ブレーキからリヤホイールへの熱伝達を抑えることで、タイヤ温度を理想的にコントロール。
MCL39のフロントウイングに関しては、撓みすぎという疑惑がシーズン前半に囁かれていた。しかしフロントウイングの柔軟性テストが厳格化されたスペインGP以降も、MCL39の強さは揺るがなかった。MCL39の優位は、まさに上述した複数の要素が相互に作用した結果であり、フロントウイングのような単一要因でないことが、このエピソードからも明らかと言える。

■空力効率を軸とした設計思想
マクラーレンは、極めてコンパクトなメカニカル・パッケージングを生かし、空力開発の自由度を大きく高めた。その結果、過大なドラッグに悩まされていた前世代とは異なり、はるかに高効率なマシンを作り上げた。
中高速コーナーが連続するサーキット――すなわちF1カレンダーの大半のサーキット――で圧倒的な強さを発揮しつつ、レース距離を通してタイヤを労わる特性も兼ね備えていた。しかしエンジニア出身のステラ代表は、この万能性が当初からの明確な目標ではなかったと語る。
「我々が集中したのは、冷却効率、効率的なダウンフォース生成、そしてタイヤとの相互作用という基本要素だけだった。するとその結果として、多様な条件下での適応力と安定性を得ることができた」
もっとも、MCL39がすべての局面で最強だったわけではない。
「シルバーストンのような超高速コーナーでは、我々はベストではなかった。レッドブルやフェラーリの方が優れていた場面もあった。カナダのように低速コーナーが多く縁石を多用するサーキットでも、最強とは言えなかった。しかし、基本に忠実なアプローチによって、非常に堅牢なパッケージを築くことができたのだ」
■マクラーレンの戦略的判断
シーズン序盤、MCL39はフロントエンドの扱いにくさから、やや繊細な一面を見せていた。しかし、カナダGPで導入されたアップデートによって挙動は安定。ランド・ノリスは即座に新仕様を採用した一方、オスカー・ピアストリは自身のドライビングスタイルに合うとして、従来仕様を使い続ける選択をした。
夏休み前の段階で、マクラーレンは盤石に見えた。だが矢継ぎ早に大型アップデートを投入するレッドブルが、徐々に差を詰めてきた。そうしたなか、マクラーレンのエンジニアたちは別の道を選ぶ。すなわち、来季2026年マシンへの全面的な開発の切り替えだった。
「空力効率を1ポイント向上させるだけでも、我々は何週間も必要とした。それだけ2025年マシンの開発は、限界領域に達していたんだ。一方、2026年マシンでは、毎週のように大きなダウンフォースを追加できていた。そこで成熟しきったコンセプトで小さな利益を追うよりも、早期に開発を止める決断をした」
開発停止後も、MCL39は勝利を争い続けた。ノリスはメキシコとブラジルで勝利を挙げ、最終戦で初戴冠を果たした。MCL39は、その完成度の高さを最後まで証明し続けたのだった。
(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)
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| 12/5(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
| フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
| 12/6(土) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
| 予選 | 結果 / レポート | |
| 12/7(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
| 1位 | ランド・ノリス | 423 |
| 2位 | マックス・フェルスタッペン | 421 |
| 3位 | オスカー・ピアストリ | 410 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 319 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 242 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 156 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 150 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | カルロス・サインツ | 64 |
| 10位 | フェルナンド・アロンソ | 56 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 833 |
| 2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 469 |
| 3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 451 |
| 4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 398 |
| 5位 | アトラシアン・ウイリアムズ・レーシング | 137 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 92 |
| 7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 89 |
| 8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 79 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 70 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 22 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |
| 第24戦 | アブダビGP | 12/7 |


