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【F1チーム別技術レビュー:メルセデス】期待外れだったサスペンションの改良。グラウンドエフェクトカーを最後まで理解できず
2025年12月29日
2025年F1トップチーム各マシンのパフォーマンスと開発戦略を、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが分析した。それぞれのチームはなぜ成功し、あるいはなぜ失敗したのか。今回は、コンストラクターズ選手権2位のメルセデスにフォーカスする。メルセデスは、グラウンドエフェクト時代の4年間を、タイトル争いに挑むことができないまま締めくくった。
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W16はメルセデスが期待した立て直しを実現できず、グラウンドエフェクト時代を静かに、失意のうちに終えることになった。
2024年のメルセデスは、W15で復調の兆しが見えたかに思われた。しかしW16では明確な前進を示すことができなかった。2025年の1グランプリあたりの平均獲得ポイントは19.54点で、前作W15(19.50点)とほぼ同水準に留まっている。
2023年の惨憺たるW14(18.59点)を上回ってはいるものの、ゼロポッドで大きな批判を浴びたグラウンドエフェクト初年2022年のW13(23.4点/GP)には及ばなかった。このW13こそが、結果的に2022〜2025年における“最良のシルバーアロー”として記憶されることになるわけだ。
2025年シーズン、W16はグリッド上で3番目に速いマシンという評価を得て、コンストラクターズ選手権2位の結果を残した。トト・ウォルフ代表にとって、2025年は不満の1年だった。

「我々はタイトルを獲ることができなかった。この4シーズン、ランキング3位、2位、4位、そして再び2位という結果を残した。完全な失敗ではない。しかし満足できるものは何もない。なぜならこの4年間、常に他の1チームが圧倒的に我々より先行していたからだ」
■誤った出発点と迷走
ウォルフ代表は、その原因について率直に次のように語っている。
「そもそも最初から、誤った前提でスタートした。その後、問題をひとつずつ解決しようとしたが、それを取り除いて整理しようとするたびに、新たな問題が現れた。さらに風洞と実走行の相関を、最後までうまく取ることができなかった」
「何度も希望的観測を抱き、数多くの理論を構築した。しかし実際に戦えるだけの明確なアドバンテージをもたらしてくれたものはひとつもなかった。ライバルたちが、単純に我々より良い仕事をしたということだ」

レッドブルと自分たちを比較し、ウォルフ代表は次のように述べた。
「レッドブルを見てほしい。浮き沈みはあったが、夏以降に起きたことは、何が機能していないのかを特定し、シーズンを完全に立て直す方法を理解していること、少なくともその実例を示している。我々は4年間、それを一度も成し遂げることができなかった」
■不安定すぎたマシン
シーズン全体を通じて、W16はマクラーレンやレッドブルを継続的に脅かすには、あまりにも不安定だった。
モントリオールやシンガポールで勝利を挙げる一方、調子を落とすと一気にグリッド4番手の勢力へと後退する――そんな浮き沈みの激しさが、このマシンを象徴している。
もっとも、W16には確かな長所も存在した。条件が噛み合えばバランスに優れ、ドライバーの操作に素直に反応し、異なるドライビングスタイルにも対応できる懐の深さを備えていた。しかしそのポテンシャルは、温度依存性の高さによって常に制限されていた。気温が低いほど、W16のパフォーマンスは向上したのである。

モントリオールのように、路面が滑らかで横方向の負荷が小さいサーキットでは、メカニカルグリップを最大限に引き出し、タイヤを労わることができた。しかし気温が上がり、タイヤへの負担が増すと、競争力は急速に失われた。
テクニカルディレクターのジェームズ・アリソンは、その本質をこう端的に語っている。
「今のF1は、タイヤ温度をいかに制御できるかで勝負が決まる」
莫大なリソースと一流のエンジニア陣を擁しながら、メルセデスは最後までこの“条件付き競争力”から脱却できなかった。戦略開発責任者のシモーネ・レスタも、控えめな表現ながら、「タイヤマネジメントの面では、残念ながら目立った改善はなかったね」と事実を認めている。
■失敗したサスペンションと、成功したフロントウイング
イモラで導入された新しいリヤサスペンションのジオメトリーは、状況を好転させる切り札となるはずだった。狙いはアンチダイブ効果の向上、すなわちブレーキング時のリヤの持ち上がりを抑え、車高を安定させることだった。
しかし結果は、期待とは逆だった。サスペンションアームの取り付け点を変更したことで、特に高速域においてマシン全体のバランスが崩れてしまったのだ。この仕様はモナコとバルセロナで一度見送られ、カナダで再導入されたものの、最終的にはハンガリーで完全に廃止された。特にアンドレア・キミ・アントネッリにとって、このサスペンションの挙動は非常に扱いづらいものだった。

一方で効果的なアップデートもあった。シーズン後半に投入された、より柔軟性を高めたフロントウイングである。ベルギーGPで導入されたこの改良版は、最高速を犠牲にすることなく空力負荷を最適化することを目的としていた。
開発エンジニアたちはメインプレーン全体ではなく、上部フラップを重点的にたわませる設計を選択した。これにより、FIAの柔軟性テストをクリアしつつ、技術指令前に近い空力挙動を取り戻すことに成功したのだ。
ジョージ・ラッセルが勝利したシンガポールでは、オンボード映像から上部フラップの明確なたわみが確認されており、複合素材に関する緻密な研究の成果として、一定の柔軟性が維持されていたことが示された。ここからライバルたちのメルセデスへの疑惑も生まれたが、チームはそれらに正式に反論している。

コンストラクターズ選手権2位という結果にもかかわらず、W16が記憶に残るシルバーアローになることはないだろう。
ウォルフ代表は、最後にこう総括している。
「我々はこのグラウンドエフェクトカーを、本当の意味で理解することができなかった。だからこそこの時代が終わり、新しい方向へ進めることを前向きに受け止めている」
(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)
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| 12/5(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
| フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
| 12/6(土) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
| 予選 | 結果 / レポート | |
| 12/7(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
| 1位 | ランド・ノリス | 423 |
| 2位 | マックス・フェルスタッペン | 421 |
| 3位 | オスカー・ピアストリ | 410 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 319 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 242 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 156 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 150 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | カルロス・サインツ | 64 |
| 10位 | フェルナンド・アロンソ | 56 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 833 |
| 2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 469 |
| 3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 451 |
| 4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 398 |
| 5位 | アトラシアン・ウイリアムズ・レーシング | 137 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 92 |
| 7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 89 |
| 8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 79 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 70 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 22 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |
| 第24戦 | アブダビGP | 12/7 |


