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技術陣を再建し、実力で表彰台も見えた2025年/トヨタは信念を貫く仲間【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第13回】
2025年12月26日
2025年シーズンで10年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。経験のあるエステバン・オコンと新人オリバー・ベアマンという新たなラインアップでシーズンに臨んだハースは、選手権8位という結果で1年を終えることになり、昨年よりもひとつ順位を落とした。しかし小松代表は、開幕戦で抱えた問題を一丸となって解決したり、2年続けてクルマのパフォーマンスを上げることに成功したチームの技術陣を称え、この2年における成長が見えたと高く評価した。
今回のコラムでは、そんな2025年シーズンを小松代表が振り返ります。
────────────────────────────────
■2025年F1ドライバーズ選手権
No.31 エステバン・オコン:15位(38ポイント)
No.87 オリバー・ベアマン:13位(41ポイント)
■2025年F1コンストラクターズ選手権
マネーグラム・ハースF1チーム:8位(79ポイント)
2025年シーズンを振り返ってみると、本当にもうめちゃくちゃ大変でしたね。アップダウンがあって、よくも悪くもジェットコースターみたいな1年でした。
第1戦オーストラリアGP(エステバン13位、オリー14位)で直面したVF-25の問題が本当にショッキングな状態で、最低なパフォーマンスでの開幕となりました。でもすごくよかったのは、その状態からみんな一丸となってあれだけ早く解決策を見つけ出せたことです。僕はF1で22年働いていますが、このようなスピードで対応できた前例はちょっと覚えていません。いいチームに育っているなと実感しました。

反対に悪かったことというのは、クルマのバウンシングの問題の解決に時間を費やしたため、なかなか絶対的なパフォーマンスが上がらなかったことです。またクルマが速くなってきてからは、その速さをレースの結果に繋げられなかったというのが反省点です。たとえば、第8戦モナコGP(エステバン7位、オリー12位)でオリーが赤旗中に他車を追い抜いたことで10グリッド降格ペナルティを受けたことがそうです。ほかにも、第12戦イギリスGP(オリー11位、エステバン13位)ではクルマを速くすることだけにフォーカスしたアップデートを行って、それがとてもよかったので、“きちんとクルマの開発ができる”ということを2年続けて証明できた一方で、オリーが赤旗時にピットエントリーでクラッシュしてペナルティを科されたり、雨のレースではどうにかリカバーしようと思って結果にこだわりすぎてめちゃくちゃなレースをやってしまったというすごく大きな反省点がありました。その結果ポイントも獲りこぼしたので、イギリスGPはいいことと悪いことが両方あったイベントでした。
ただこのイギリスGPでちゃんとしたアップデートができたから、開発はこの方向でいけるという手応えもあって、第19戦アメリカGPに素晴らしいアップグレードを持ち込むことにも繋がりました。あれもすごく効きましたね。
最終的にシーズンの最後には5番目くらいに速いクルマがあったと思います。2年連続でそういうクルマを作ることができたというのは、もう本当にすごいことです。2026年はどんなシーズンになるかまったくわかりませんが、どんなに大変でも、大きな問題があったとしても、 2年連続でこんなに速いクルマを作れたことや、メルボルンで直面した問題をみんなで解決できたということが自信になるはずです。

結果として2025年の獲得ポイントは79で、コンストラクターズ選手権は8位となりました。2024年は58ポイントを獲得して7位だったので、選手権の順位をひとつ下げたことになります。昨年よりもポイントを多く獲得できたことを評価するのか、順位を下げたことを反省するかの匙加減は難しいところです。選手権6位という自分たちが目指していたところにいけなかったというのが現実なので、そこから目を逸らしてはいけません。今年のクルマの実力を常に出し切っていたら当初の目標であった選手権6位は見えていましたし、ポイントも100ポイントに届いていたと思います。シーズン序盤にクルマの速さが足りなかったり、先に書いたようにモナコやイギリスでチームやドライバーのミスがあったりと、いろいろなところでポイントを獲りこぼしたので、そういう点はシビアに見つめ直して改善していくことが必要です。
一方で、チームのみんなには自信を持ってほしいんですよね。79ポイントというのは、ハースの10年間の活動のなかで2番目に多いですし(一番多かったのは2018年の93ポイントです)、それをこの近代F1で稀にみる拮抗したフィールドで獲れたというのは評価に値します。僕はチームの成長を促すためにあえてとても厳しい目標を立てましたけど、終わってみると6位は現実的だったなと思うところがあるので、そういう点はポジティブに捉えています。
2025年のベストレースは、もちろんオリーが4位に入賞した第20戦メキシコシティGPですね。実力で表彰台が見えたレースでしたから。これはメキシコシティGP後のコラムにも書きましたけど、メキシコシティは標高が高くて空気が薄いのでダウンフォースは全然効かないし、冷却にも厳しい特殊な場所です。ですから、こういう言い方はよくないですが、2023年までの僕たちにとってメキシコは捨てレースでした。当時のポテンシャルでは全戦をカバーすることができなかったので、メキシコ以外にも超ローダウンフォース仕様が必要になるイタリア(モンツァ)、超ハイダウンフォース仕様のモナコも同じ扱いでした。
それが2024年、2025年とメキシコシティGPが捨てレースではなくなりました。今年はモナコやモンツァはまだいまいちよくなかったですが、それでも1年を通してすべてのサーキットをかなりいいレベルでカバーすることができました。チームの底力はすごく上がりましたし、創設1年目からハースにいる人間としては成長したなと思います。


また2025年は新しいドライバーラインアップで臨んだシーズンでもありました。新人のオリーの方は、シーズン終盤の第18戦シンガポールGP以降、コンスタントにいい結果を出せるようになってきて、すごく成長が見られました。メキシコで4番手を走っていた時も、ずっとすごいドライバーからプレッシャーを受けていたにもかかわらず、それを感じさせない走りをしてくれましたし、いいドライバーに育ちましたね。
エステバンの方は反対に、シーズン序盤は頑張ってポイントを獲っていたけれど、中盤以降はオリーが徐々によくなるにつれて、自信を失って予選の結果が悪かったです。せっかくQ3に進めるクルマがあるのにQ1敗退というのもありましたし、今年のレースはどのサーキットでもすごくオーバーテイクが難しかったので、予選結果がよくなかったことでポイントも獲れないということがありました。
レースペースについてはふたりともあまり遜色ないのですが、オーバーテイクの面で見ると、オリーの方が元気がいいなという感じですね。エステバンはもうちょっとガツガツ行くと思っていたのですが、悪い意味で大人しかったというか……。そういうところでも彼らの違いがあって、いい面も悪い面も両方出たかなというのが全体的な評価です。


■「文化を育てる」信念を貫く仲間のトヨタと共に長期的な取り組みを実施
トヨタとの提携については、僕はずっと「いい環境で人を育てて文化を創っていきたい」と言い続けています。昨年10月の会見でも話しましたが、僕は(トヨタ自動車の会長である豊田)章男さんと初めてお会いした時に、「F1に参戦したり辞めたりしていたら、文化を創ることができないじゃないですか」とお話ししました。でも、章男さんという方を知り、素晴らしい思いを持っている方だというのがわかったので、一緒に文化を創るために長期的な取り組みをしています。僕は信念を貫きたいというのがあるので、それを貫いてチャンピオンになりたいんです。その仲間が章男さん、そして彼の率いるトヨタだと思っています。

また僕は30年以上海外にいて、どれほど日本人がアウェーの環境で戦えないかというのも嫌というほど見てきました。ホームのすごく居心地のいい環境だと実力を出せるのに、ちょっとそこから出ると戦えない人たちが多いんです。だから「どんな環境に行ってもその人の持つ実力をすべて出せるような人を育てましょう」とも章男さんと話しました。そういう人材を育てるための環境として、F1はこれ以上ない場所だと思っています。
そのほかにもマーケティング面とか、ハースの物語をどう伝えようとかいうことにも取り組んでいます。チームのみんなに新たな意識を持ってもらってこの挑戦に挑んでいます。 “ハースとはどういう人たちの集まりで、どういうチームであるのか”というところから始まり、しっかりと意識を共有しながらチームを作っていくというのはともてクリエイティブで楽しい作業です。スポーツですから成績に一喜一憂しがちですが、僕たちがやっていること、やろうとしていることに信念を持って、長い目でしっかりと育てていきたいと思います。

(Text : Ayao Komatsu)
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| 12/5(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
| フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
| 12/6(土) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
| 予選 | 結果 / レポート | |
| 12/7(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
| 1位 | ランド・ノリス | 423 |
| 2位 | マックス・フェルスタッペン | 421 |
| 3位 | オスカー・ピアストリ | 410 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 319 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 242 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 156 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 150 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | カルロス・サインツ | 64 |
| 10位 | フェルナンド・アロンソ | 56 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 833 |
| 2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 469 |
| 3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 451 |
| 4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 398 |
| 5位 | アトラシアン・ウイリアムズ・レーシング | 137 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 92 |
| 7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 89 |
| 8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 79 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 70 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 22 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |
| 第24戦 | アブダビGP | 12/7 |


