フェラーリのシャルル・ルクレールは、銀のトロフィーを手にしてシーズンを終えることはできなかったかもしれないが、彼はほぼ間違いなくそれよりも満足のいくことを成し遂げた。それは、クリスマスの間中、ジョージ・ラッセル（メルセデス）の頭のなかに家賃を払いもせず住み着くことだ。

　F1のシーズン終了時の恒例行事であるシークレットサンタは、通常はドライバー同士がちょっとしたプレゼントを贈り合う、冗談や笑いに満ちた健全な行事だが、そのなかでルクレールはとんでもないことをすることにした。ラッセルの名前を引いたルクレールは、伝統的な香りのキャンドルやチョコレートのトリュフを避け、代わりにラッセルの個人的な悪夢の特注の記念品を選んだ。それは、第15戦オランダGPで起きた、物議を醸したふたりのクラッシュの額入り写真だった。

　当時ラッセルが激しく異議を唱えたこのクラッシュで、ルクレールはラッセルからポジションを奪った。3カ月が経った今でもこの物議を醸したオーバーテイクは、ラッセルにとって静電気のようにパチパチと音を立てている。傷がしっかりと癒されたことを確認するために、ルクレールはデジタルフォトフレームでスローモーションのビデオリプレイを流し、事実上ラッセルにオランダGPでの悲痛な思いを高解像度で追体験させることになった。

　明らかに不意を突かれたラッセルは、ようやく理解したようで、信じられないといった様子で笑うことしかできず、「言葉が出ないよ……」と締めくくった。実際、そう思わない人がいるだろうか？

　プレゼント交換が完璧に行われたのは、精度が高かったからだ。ザントフォールトのオーバーテイクはただの追い越しではなかった。ラッセルは当時、ルクレールが文字どおりの意味でも、スポーツ的にも限界を超えたと確信し、激怒していた。スチュワードはそれを違うように見ていたが、その痛みは消えなかった。

　ルクレールはっきりと覚えており、その瞬間をフレームのなかに収めることで、激しいコース上の対決を、マスタークラスのお祭り騒ぎに変えた。まさに、ライバル関係は本物ではあるものの、個人的なものではないことを両方のドライバーが知っている場合にのみ成立する、冗談のような冷やかしだ。

　ラッセルは、名誉のためにも、それを黙って放置しなかった。ドライなカウンターパンチの機会を決して逃さなかったラッセルは、すぐに反撃し、同じレースの週末に自らのパンチラインを掘り起こした。

「彼にクリスマスの挨拶を送ろうかな？　いや、キミ（アンドレア・キミ・アントネッリ）が彼をレースから外す写真を送ろうと思うよ！」

　これは痛いところを突くだろう。このやり取りは、バイザーの下の珍しい一面を垣間見せてくれた。時速300kmであらゆる手段を尽くして戦うふたりのエリート競技者が、ヘルメットを外すと楽しそうに互いをからかう姿だ。これは、F1の最も激しいライバル関係には、しばしば笑いが伴い、時には額縁もついていることを思い出させるものだ。

　しかし、たとえそれが今シーズンの最も思い出深い贈り物になったとしても、その記念品がラッセルの家の誇りとなることはないだろう。