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ブリアトーレやアロンソが証言台に呼ばれる可能性。マッサによる『クラッシュゲート』訴訟は今後もF1界を揺るがす/F1コラム

2025年12月24日

 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、元F1ドライバー、フェリペ・マッサが、2008年F1チャンピオンシップおよびシンガポールGPについて、FIA、F1、元F1最高責任者バーニー・エクレストンに対して起こした訴訟に注目した。


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 ロンドン高等法院は、11月、フェリペ・マッサが2008年のF1世界選手権に関して起こした訴訟について、予備的審理を終えた。


 背景を簡潔に振り返ろう。2008年のF1世界選手権はルイス・ハミルトンがフェリペ・マッサに1ポイント差で勝利した。長年にわたり、この苦い敗北を気高く受け止めてきたマッサであるが、いわゆる『クラッシュゲート』事件を理由に、2008年F1シンガポールGPのリザルトは、その年の選手権から除外されるべきだと考えるようになった。

ネルソン・ピケJr.(ルノー)
2008年F1シンガポールGP クラッシュしたネルソン・ピケJr.(ルノー)

 このレースでは、ルノーのセカンドドライバーであったネルソン・ピケJr.がチームの指示で意図的にバリアへクラッシュし、その結果としてセーフティカーが導入され、チームメイトのフェルナンド・アロンソの勝利が実現した。


 シンガポールでマッサは無得点に終わり、ハミルトンは3位でフィニッシュしている。もしシンガポールGPが2008年世界選手権の成績にカウントされなければ、マッサが最多ポイント獲得者となるわけだ。


 マッサは、このレースは本来世界選手権から除外されるべきだったにもかかわらず、当時のF1最高責任者バーニー・エクレストンとFIA会長マックス・モズレーが、スポーツへの悪影響を避けるためにこの問題を黙殺したと主張している。そのためマッサは現在、エクレストン、FOM、そしてFIAを相手取り、約6400万ポンド(約135億円)の賠償金と、自身を2008年世界チャンピオンとして認定することを求めて提訴した。


 被告側は、この訴えは却下されるべきだと主張していたが、裁判所はこの件を本案審理で扱うべきだと判断し、判事はマッサが賠償金を受け取る可能性は十分にあるとの見解を示した。一方で、2008年の世界選手権タイトルをマッサに授与することはできないとも明言している。

2008年F1ブラジルGP フェリペ・マッサ(フェラーリ)

 今後、誰が法廷に召喚されるのかは非常に興味深い点である。審理が行われるのは、おそらく2027年以降になるだろう。当時FIA会長だったマックス・モズレーは2021年に死去しており、2008年にFOMの会長を務めていたバーニー・エクレストンは2027年には97歳を迎える。


 さらに興味深いのは、誰が証言台に立つのかという点である。2008年当時、マッサの上司はフェラーリのジャン・トッドであり、彼は2010年にFIA会長に就任し、2021年までこの役割を果たした。また当時のフェラーリのチーム代表はステファノ・ドメニカリで、現在はFOMのトップである。


 2009年に『クラッシュゲート』の首謀者であったことが明らかになったルノーのチーム代表フラビオ・ブリアトーレとスポーティングディレクターのパット・シモンズは、このスポーツから追放されたが、現在は復帰している。ブリアトーレはルノー傘下のアルピーヌのエグゼクティブ・アドバイザーを務め、シモンズは新チームであるキャデラックのコンサルタントに就任した。現在もF1で現役を続けるアロンソも、証人となる可能性がある。法廷では、実に興味深いシーンが見られそうだ。

フェルナンド・アロンソとフラビオ・ブリアトーレ
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)とフラビオ・ブリアトーレ(アルピーヌのエグゼクティブアドバイザー)


(Text : Peter Nygaard)


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