エンジン関連部品の交換修復を経て予選へ。チームプレーで僚友の“勝負を決めた”アタックを実現【角田裕毅F1第24戦展望】
2025年12月7日
「最初の新品タイヤでのアタックがあんなにパフォーマンスを上げてくれるとは少し驚いたよ。おそらく、ユウキのトウ(スリップストリーム)が効いたんだと思う。すごくいいラップだった。彼が走行を1回譲ってくれたのは本当にありがたかった」
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)にとって、ホンダ・レーシング(HRC)のパワーユニットを搭載したマシンでの最後のアタックとなったF1第24戦アブダビGPの予選。見事ポールポジションを獲得したフェルスタッペンは、チームメイトの角田裕毅に感謝した。
角田は言う。
「マックスにトウを使わせることは予選前に言われていました」
しかし、その予選前のフリー走行3回目で角田をアクシデントが襲う。セッション残り8分で、角田がピットアウトしてピットレーンを走行中、メルセデスが安全ではない状態でアンドレア・キミ・アントネッリをピットアウトさせ、角田のマシンと接触した。角田は1周して自力でピットに戻ることができたが、フロアやサイドポッドにダメージを負ってしまう。さらに最後に行う予定だった予選に向けたシミュレーションができないまま、予選に臨むこととなった。

「FP3での接触事故で、フロアを旧スペックに変えなければならなかったのは痛手でした」と言う角田。HRCの折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)によれば、「エンジンそのものにはダメージはなかったものの、エンジンを動かす部品がいくつかサイドポッド周辺にあって、それらがダメージを受けたため、交換や修復作業が必要でした」という状況となった。

なんとか予選までにそれらの作業は完了したものの、折原GMですら「さすがに今回はQ3に残るのは難しいかもしれない」という思いが頭をよぎるほど、状況は角田に厳しかった。
しかし、角田は「1ラップ1ラップ、最大限のパフォーマンスを発揮すること」に集中していた。角田はQ1を15番手、Q2も10番手とギリギリで通過することに成功。Q3に進出した角田は1回目のアタックで、予選前に話し合った、フェルスタッペンにスリップストリームを与えるという仕事を実行に移した。
中古のソフトタイヤを履いてコースインした角田は、1本目のストレートの立ち上がりでフェルスタッペンとの距離をレースエンジニアから伝えられると、ストレートの途中から加速。さらにシケインを立ち上がったところで再びフェルスタッペンの位置を無線で確認してから加速していった。
角田のレースエンジニアを務めるリチャード・ウッドはこう話す。

「ここは2本のストレートがシケインをはさんで連続するので、最初のストレートで5秒程度の間隔で前を走ると、2本ともトウを使わせることができるんだ。もちろん、1本目の効果は2本目ほど大きくないけど、ふたつ足すと大きいんだ」
フェルスタッペンのレースエンジニアを務めるGPことジャンピエロ・ランビアーゼは、角田のスリップストリームの効果はタイムだけではなかったことを次のように明かす。
「1本目にトウを使ってそこそこのタイムを出しておくことで、最後のアタックにリラックスして臨めるんだ。逆にライバルは1回目のアタックでマックスがいいタイムを出したため、最後のアタックにプレッシャーがかかった。今回のポールポジションは1回目のアタックが勝負を決したと言ってもいい。まさにチームプレーだった」
リラックスして最後のアタックに臨めたフェルスタッペンはこう振り返る。
「1回目のタイムですでにターゲットに迫っていたから、逆に2回目のアタックで、あれよりいいタイムを出せるか不安だった。でもコーナーでさらにタイムを削ることができた」

逆にフェルスタッペンにスリップストリームを使わせるために、1回目のアタックを断念した角田は、アタックの機会が最後の1回のみとなったことと、トラックリミット違反でそのタイムも抹消されて10番手に終わった。それでも、レッドブルでの最後の予選を次のように振り返った。
「今日のような状況でも最大限パフォーマンスを発揮して、マックス(にスリップストリームを使わせて、彼のアタック)を助けられたのはよかったと思います。マックスが5度目のドライバーズチャンピオンを獲得する手助けができるなら、それが最優先です」
最後まで、角田はこのチームのために走る覚悟のようだ。

(Text : Masahiro Owari)
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| 12/5(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
| フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
| 12/6(土) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
| 予選 | 結果 / レポート | |
| 12/7(日) | 決勝 | 22:00〜 |
| 1位 | ランド・ノリス | 408 |
| 2位 | マックス・フェルスタッペン | 396 |
| 3位 | オスカー・ピアストリ | 392 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 309 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 230 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 152 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 150 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | カルロス・サインツ | 64 |
| 10位 | アイザック・ハジャー | 51 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 800 |
| 2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 459 |
| 3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 426 |
| 4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 382 |
| 5位 | ウイリアムズ・レーシング | 137 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 92 |
| 7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 80 |
| 8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 73 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 68 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 22 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |
| 第24戦 | アブダビGP | 12/7 |




