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他車の不運に助けられつつも、ミスなく走り10位入賞。SCとタイヤ規則で“差の出にくい”戦いに【角田裕毅F1第23戦分析】
2025年12月1日
今回のF1第23戦カタールGPのレースは、ほかのグランプリとは異なる特別なルールで行われた。それは、1セットのタイヤで走行できる周回数が、最大で25周だということだ。
このルールに関して、ピレリは次のように説明している。
「この決定は、FIAとF1との合意のもと、チームとの定例会議で議論され、各グランプリの2週間前に配布されるイベント特有の処方を含む通常の技術文書によってピレリから確認される。レース週末の開始時に供給される各タイヤセットは、非常に高いエネルギー負荷、熱ストレス、摩耗という点でタイヤに厳しいルサイルで、最大25周まで使用できる。周回数はすべての走行セッションにわたり累積でカウントされ、セーフティーカー(SC)やバーチャルセーフティカー(VSC)下の周回も含まれる。グリッドに向かう周回、フォーメーションラップ、スプリントと決勝のチェッカー後の周回は含まれない」
カタールGPは57周で争われるため、1セットで25周しか走行できないとなると、2ストップが必須となる。ドライバーのタイヤのマネージメント能力やチームのピットストップ戦略に差が出にくい状況のなかで、レースはスタートが切られた。

予選14番手のガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)が前戦ラスベガスGPでペナルティを受けて5グリッド降格したことにより、予選結果よりひとつ前のポジションである15番手からレースを開始した角田裕毅(レッドブル)。スタートでアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)をかわしたものの、直後にルイス・ハミルトン(フェラーリ)とエステバン・オコン(ハース)にかわされ、16番手に後退した。
コーナーが連続するルサイル・インターナショナル・サーキットはコース上でのオーバーテイクが難しいうえ、前を走るマシンが数珠繋ぎとなる、いわゆる『DRSトレイン』状態となったため、角田がポジションを上げるには、前を走るドライバーより早めにピットインして新品タイヤに履き替えて速いラップタイムを刻んで結果的に前に出るアンダーカットを仕掛けるしかなくなった。
しかし、7周目にピエール・ガスリー(アルピーヌ)とニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)が接触し、セーフティカーが導入されたことにより、7周目にマクラーレン勢2台とエステバン・オコン(ハース)を除く全車がピットイン。これにより、残りは50周のレースとなり、必然的に戦略は17台が32周目に2度目のピットストップを行うこととなった。
こうなると、角田にとってはポジションを上げるのが難しいレース展開となった。そんな状況のなか、いくつかの幸運によって、角田はポイント争いの輪のなかに入った。
まず、接触事故によってヒュルケンベルグがリタイアし、ガスリーも最下位に転落したため、労せずして14番手へ。さらに8周目の一斉ピットインによって、チームメイトのタイヤ交換作業が終了するまで待たなければならないハミルトンをピットストップでかわすことに成功。また、オコンがスタート時にシグナルがブラックアウトする前に動いたとして、5秒ペナルティを受けた。これにより、16番手だった角田のポジションは12番手へと上がる。
32周目の2度目のピットストップ時には、オリバー・ベアマン(ハース)が左リヤタイヤ交換に手間取り、最後尾に後退。これで角田は事実上11番手に浮上した。

さらに残り2周となったところで6番手を走行していたアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)が左フロントタイヤをパンクさせてスローダウン。これで角田はポジションを10番手に上げてチェッカーフラッグを受けることに成功した。
今回の角田の入賞は前を走るドライバーの不運に助けられたことが大きな要因だったが、ミスをするドライバーやチームが多かったこのレースで、角田とレッドブルがミスを犯さなかったことも事実。予選でQ1敗退しながらも、諦めずに走った結果、転がり込んだ幸運もまたレースなのである。
スプリントの4点に加え、決勝レースでの1点の合計5点を加点した角田のドライバーズポイントは33点となった。これはデビューイヤーに獲得した32点を上回る自己最多得点となった。もちろん、本人はこの程度の成績で満足はしていないはずだ。ただし、シーズン途中に移籍し、マックス・フェルスタッペンですら手こずることがあったマシンと、チームの度重なるミスに見舞われながら、ここまでやってきたことは評価されるべきだろう。


(Text : Masahiro Owari)
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| 11/30(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
| 1位 | ランド・ノリス | 408 |
| 2位 | マックス・フェルスタッペン | 396 |
| 3位 | オスカー・ピアストリ | 392 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 309 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 230 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 152 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 150 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | カルロス・サインツ | 64 |
| 10位 | アイザック・ハジャー | 51 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 800 |
| 2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 459 |
| 3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 426 |
| 4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 382 |
| 5位 | ウイリアムズ・レーシング | 137 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 92 |
| 7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 80 |
| 8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 73 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 68 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 22 |
| 第19戦 | アメリカGP | 10/19 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |


