PU交換の正当性を主張するレッドブルと、“グレーゾーン”を強調したマクラーレンの舌戦に幕【代表のコメント裏事情】
2025年11月26日
2025年F1第22戦ラスベガスGPではマクラーレンとレッドブルがコース上だけでなく、コース外でも舌戦を繰り広げた。
事の発端は、ラスベガスGPの2週間前に行われた第21戦サンパウロGPで、レッドブルが予選Q1で敗退したマックス・フェルスタッペンのパワーユニットのエレメントを全交換したことだった。レースには勝ったものの、マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、新品のパワーユニットでピットレーンからスタートしたフェルスタッペンが3位でフィニッシュしたことに納得していなかった。

「このようなパワーユニット交換は、レギュレーション上、問題かどうか疑わしい。我々が同じことをしない理由のひとつは、財務規則上の扱いを避けられないからだ。もし性能向上を理由に交換したなら、コストキャップに含めるべきだと個人的に思っている。このエンジン交換がコストキャップに含まれるのかどうかを明確にしておきたい」
しかし、サンパウロGPの直後に開催されたF1コミッションでこの話題は議題に上らなかった。そのため、ラスベガスGPは、この話題についてのマクラーレンvsレッドブルの舌戦第2ラウンドとなった。ラスベガスGPでは、金曜日に国際自動車連盟(FIA)によって行われたカー・プレゼンテーションの取材対象チームにマクラーレンとレッドブルが含まれていたからだ。ただし、その取材に対応したのはチーム代表ではなく、それぞれのチームの技術部門を代表するスタッフだった。レッドブルはチーフエンジニアのポール・モナハンで、マクラーレンはテクニカルディレクター(エンジニアリング)のニール・ホールディだ。

まず、筆者がモナハンに、ステラのサンパウロGP後の発言についてレッドブルの見解を尋ねた。モナハンは「これは誰かが手榴弾を投げ込むようなものだ」と冗談を言った後、こう続けた。
「この世界ではよくあること。逆の立場でも、我々は同じことをしただろう。だから、驚いてはいない。ただ、我々が行ったことは(コストキャップが導入された)2022年以降も、他チームも行っている。今回の判断は正当なものであり、まったく問題ない」
その10分後に行われたマクラーレンのカー・プレゼンテーションの囲み取材では、別のメディアがホールディにレッドブルがサンパウロGPで行ったパワーユニット交換について尋ねた。
ホールディは、マクラーレンとレッドブルの立場の違いを説明した上で、現在のコストキャップのガイドラインには本質的に不公平なグレーゾーンが存在していることを強調した。

「(レッドブルのように)ワークスチームの場合はパワーユニットサプライヤーから無償で高性能エンジンを手に入れられるのに対して、我々はワークスチームではないので、無償ではないから、性能向上を目的としたエンジン変更はできないんだ。これは明らかにワークスチームが利用できる特権だ」
筆者の認識ではホンダがF1参戦を終了した2022年以降は、パワーユニットは無償ではなく、レッドブルが対価を支払って購入していることになっている。したがって、サンパウロGPでレッドブルがフェルスタッペンに5基目を投入したのは無償だったからではなく、コストキャップに余裕があったと考えるほうが自然だ。
ただし、この論争は2026年以降は行われなくなる。というのも、コストキャップはチームだけでなく、パワーユニットマニュファクチャラーにも導入されるからだ。
モナハンとホールディの囲み取材の後に開かれたFIAの木曜日の会見に出席した、FIAでシングルシーター部門を統括するニコラス・トンバジスは、こう語った。
「FIAとしてこの問題への関与を避けているのは、エンジン交換時にチームやPUメーカーとテレメトリーデータが信頼性問題を示唆しているか否かを議論しなければならない状況だからだ。それが真の信頼性問題か戦略的変更かを論じる専門性が我々にはない。明らかにどちらかの領域に属する場合もあるが、境界領域では判断が困難だ。これが現行規定(財政・技術・スポーツ規定の組み合わせ)の弱点であり、我々はコストキャップへの影響を議論せずに変更を認める方針を取ってきた領域である」
「しかし、来年はPUメーカーとチーム双方にコストキャップが導入されることで、この問題は解決される見込みだ。なぜならPUメーカーがエンジンを交換すれば、その都度、エンジン1基分のコストがかかることになるからだ。来年にはこの問題は完全に解決され、議論の的ではなくなるだろう」
こうしてブラジルで始まったマクラーレンとレッドブルの舌戦は、ラスベガスで幕を閉じた。


(Text : Masahiro Owari)
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| 11/23(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
| 1位 | ランド・ノリス | 390 |
| 2位 | オスカー・ピアストリ | 366 |
| 3位 | マックス・フェルスタッペン | 366 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 294 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 226 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 152 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 137 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | アイザック・ハジャー | 51 |
| 10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 49 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 756 |
| 2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 431 |
| 3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 391 |
| 4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 378 |
| 5位 | ウイリアムズ・レーシング | 121 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 90 |
| 7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 73 |
| 8位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 72 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 68 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 22 |
| 第19戦 | アメリカGP | 10/19 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |


