F1チーム代表の現場事情/ザウバー:母国で試練続きのボルトレートを支えたウィートリー。不可能に近いマシン修復を指揮
2025年11月17日
大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、サンパウロGPでのキック・ザウバー代表ジョナサン・ウィートリーに焦点を当てた。
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12カ月前、キック・ザウバーの展望は決して明るいものではなかった。チームはニコ・ヒュルケンベルグとガブリエル・ボルトレートという魅力的なドライバーラインナップの確保には成功していたが、数多くの未知数が残っており、2025年はアウディが完全参入する2026年に向けた移行期の年にすぎなくなるという見方が強かった。
移行期という印象をさらに強めていたのは、新しいチーム代表が加わることになっていたものの、それが今シーズン開始後になるという事実だった。ジョナサン・ウィートリーは、ベネトンとレッドブルでの実績により、F1において非常に尊敬されている人物であるが、チーム代表の役職に就くのはこれが初めてだった。そして彼がザウバーでの業務開始が許されるのは4月になってからだった。

しかし、移行期という印象が変わるまでに、さほど時間はかからなかった。バルセロナでの大型アップグレードがチームの競争力を向上させ、それ以降は頻繁にポイントを獲得するようになったのだ。だが、それがサンパウロでの週末に一定のプレッシャーをもたらすことになった。
ボルトレートは今シーズンの新たなスターのひとりであり、ルーキーながら年間を通して印象的な走りを見せ、夏には定期的にポイントを獲得していた。ハイライトはハンガリーでの6位入賞だったが、その後は結果を出すことが少し難しくなり、イタリアで8位、メキシコシティで10位に入るにとどまっていた。
ボルトレートが母国ブラジルでのレースで注目の的になるだろうことは明らかだった。その分、彼は重圧も背負っていた。インテルラゴスの観衆の前で再びポイントを獲得するという期待をかけられていたのだ。
ウィートリーは自分のドライバーに寄せられる関心の高さを十分に認識しており、チームに対して、その週末、ボルトレートをしっかりサポートするよう促していた。そのため、ボルトレートがトラック上で必要なことに集中し準備する時間を確保できるよう、スポンサーやメディア対応の一部を断るという判断もしていた。
しかし、FP1が始まり、マシンが初めてガレージから姿を現した時に、ウィートリーはボルトレートへの応援の規模の大きさを、本当の意味で理解することになった。

ピットウォールに座っていたウィートリーは、正面のメインスタンドから湧き上がる大歓声に圧倒された。ボルトレートが単にピットに戻ってピットストップ練習をしたり、セットアップ変更を行っただけで、大きな歓声が上がったのだ。それは特別な瞬間だったが、同時に、クリーンな週末を過ごすことを目指しているチームにとって大きなプレッシャーにもなった。

土曜日のスプリントレース終盤、ボルトレートは大クラッシュを喫した。ウィートリーは何よりもまずドライバーの安全を確認し、ボルトレートがメディカルセンターに向かうとすぐに、彼が予選で再び走れるよう、マシンの準備に全力で取りかかるよう、チームに指示した。

その時点では、不可能な任務に見えた。わずか3時間でマシンを新たに組み上げるというのは普通では考えられないことだ。ところがザウバーはそれをやり遂げる寸前までこぎつけた。Q1終了直前にボルトレートがマシンに乗り込むところまでいったのだ。
最終的には、接続の問題によってマシンが時間内にガレージを出ることができず、ボルトレートは予選を走ることができなかった。しかしこの週末のそこまでのパフォーマンスにより、レースで走ることは許可された。
しかし決勝も良い展開にはならなかった。ボルトレートはオープニングラップでランス・ストロール(アストンマーティン)との接触事故により、母国での週末を早々と終えることになったのだ。

ウィートリーは、この一連の出来事全体を学習経験と捉えており、ボルトレートにとって、今回難しい状況に立ち向かったことが、今後のキャリアに役立つはずだと考えている。
高いプレッシャーに直面し、多額のコストがかかった週末の後も、ウィートリーには休む時間はなかった。アウディが2026年のマシンのリバリーコンセプトを発表するスペシャルイベントが控えていたからだ。
視線はすでに未来へと向けられている。ウィートリーは、ブラジルでボルトレートが被った痛みが、長期的には彼に大きなプラスをもたらすことを願っている。

(Text : Chris Medland)
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| 1位 | ランド・ノリス | 390 |
| 2位 | オスカー・ピアストリ | 366 |
| 3位 | マックス・フェルスタッペン | 341 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 276 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 214 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 148 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 122 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 43 |
| 10位 | アイザック・ハジャー | 43 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 756 |
| 2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 398 |
| 3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 366 |
| 4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 362 |
| 5位 | ウイリアムズ・レーシング | 111 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 82 |
| 7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 72 |
| 8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 70 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 62 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 22 |
| 第19戦 | アメリカGP | 10/19 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |


