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新人ベアマンの4位入賞は「この10年で最高のレース」来年に繋がる自信の蓄積【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第12回】
2025年11月6日
2025年シーズンで10年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。北米2連戦ではポイントを重ね、ハースはコンストラクターズ選手権で8位に浮上した。特にメキシコシティGPでは新人のオリバー・ベアマンが4位とチームの最高順位タイの結果を残したことが、チームの実力を証明し、2026年にも繋がる大きな自信を築くことになったという
またこの2連戦の前後でハースはTPC(Testing of Previous Cars/旧型車を用いたテスト)を行い、イギリスのシルバーストン・サーキットでは坪井翔が、オランダのザントフォールト・サーキットではリザーブドライバーの平川亮が参加した。坪井にとっては今年の8月に富士スピードウェイで行われたTPC以来2回目の参加で、今回は雨のなかでのドライブになったという。今回のコラムでは、アメリカ大陸2連戦とTPCを小松代表が振り返ります。
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■2025年F1第19戦アメリカGP
No.31 エステバン・オコン スプリント予選19番手/スプリントDNF/予選17番手/決勝15位
No.87 オリバー・ベアマン スプリント予選16番手/スプリント15位/予選8番手/決勝9位
■2025年F1第20戦メキシコシティGP
No.31 エステバン・オコン 予選12番手/決勝9位
No.87 オリバー・ベアマン 予選10番手/決勝4位
第20戦メキシコシティGPは、オリーが4位、エステバンが9位と、ダブル入賞で終えることができました。4位というのはオリーにとってのベストリザルト、ハースとしては最高順位タイ(編注:2018年のオーストリアGPでロマン・グロージャンが4位に入賞)の結果です。メルセデスやマクラーレンなどトップチームと戦って実力で勝つことができて、これ以上ないくらい嬉しかったです!
まずはレースを振り返ろうと思います。メキシコシティGPの決勝レースはソフト〜ミディアムの1ストップ戦略をベースに戦うつもりでした。最初のピットストップを終えて、第2スティントでは5番手オリー、6番手アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、7番手ジョージ・ラッセル(メルセデス)、8番手オスカー・ピアストリ(マクラーレン)という並びになりました。もしこの4台が誰も2回目のピットストップをしなかったら、僕たちよりも遅いタイミングでピットストップをしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は4台のDRSトレインにはまって僕たちを抜けなかったと思います。オリーはタイヤをきちんとマネージメントしていい状態だったので、3位に入賞できていたかもしれません。


でも実際は、47周目にアントネッリとピアストリが2回目のピットストップをしました。このままオリーとラッセルだけが1ストップで走り続けた場合、ピットストップ後に追い上げてくるであろうフェルスタッペンに1台ずつ抜かれると思ったので、ここで僕たちはアントネッリたちをカバーするために2ストップ戦略に切り替えて、4位を狙うことにしました。48周目にラッセルがピットに入るという情報も無線で入ってきていましたし、正しい判断だったと思います。目の前の状況を見て、自分たちは今何をしなければいけないのかを考えてやった結果なので、これもチームの成長のひとつです。
そして何より、この2回目のピットストップを2.3秒という時間で終えることができました。ラッセルと同時ピットインでかなりプレッシャーがあったのですが、今シーズン最速のピットストップでした。メルセデスの作業時間は3.2秒だったので、ここでラッセルをさらに約1秒突き放すことができたのも大きかったです。こういう作業ができるというのはみんなの自信に繋がりますからね。今は24戦すべてでそれができるわけではありませんが、“できるに違いない”ではなく“できる”と証明できました。
第3スティントでは最初にラッセルに追われることになったものの、ラッセルがタイヤを傷める一方、オリーはここでもうまくタイヤをマネージメントできていました。最後はピアストリが速くて迫ってきましたけど、それでもオリーはたとえバーチャルセーフティカー(VSC)がなかったとしてもギリギリで抑えきれたと思います。この10年のなかで最高のレースでした。

一方でエステバンの方は当初の予定通り1ストップで走り切りました。第19戦アメリカGPではチームがハードタイヤを読み切れず、エステバンのレーススタートタイヤの選択を間違えてしまいました。メキシコではフリー走行2回目できちんとアメリカGPの課題をこなして、ミスから学び、レースタイヤを選択するまでのプロセスを改善することができました。このように今回のメキシコシティGPは、すべてにおいてこれからのチームのベンチマークになるレースだったと評価しています。
こういうレースをメキシコでやれたというのも、またひとつ大きな成長です。アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスは標高2000m以上の高地にあるので、空気が薄くてパワーユニット(PU)やブレーキの冷却に厳しく、ダウンフォースも減るコースで、数年前はまともに戦えていなかったのが、今は戦えるようになったのです。当たり前のことを当たり前にやれる体制になった結果、メキシコでは2年連続でダブル入賞だったので、もっともっとよくしていけると思っています。
それから、クルマのベースラインとなるデザインをきちんとできるようになったことも活きていますね。冷却性能に限って言うと、ベースデザインによるところが大きいので、シーズン中のアップデートだけでどうにかなる話でもありません。いいベースのデザインに加えてアップデートが機能していて、今回の結果に繋がったわけです。これもチームの自信に繋がります。

よく「アメリカGPでのアップデートにはどんな意味があるのか?」と聞かれましたが、ただ選手権の順位を上げることだけを目標にしたアップデートではないのです。今年の第12戦イギリスGPに続いて、アメリカGPでもこれほどいいパッケージを用意することができたという事実が自信になり、これがこの先に活きてくると信じています。このパッケージはイギリスGPで学んだことをベースに、クルマのバランスを改善し、より高速での安定性を増し、ドライバーが自信をもって運転できるクルマに仕上げました。
2026年は新しい規則が導入されて、クルマは空力とPUともに刷新されます。何が起こるかわかりませんし、大変な状況に直面することも予測されます。そんな時にこそ“自分たちは過去にこういうことができた”という自信が重要になってきます。ですから、このようなプロセスを証明できたことは大きいと思っています。
残り4戦、コンストラクターズ選手権の6位から9位まではまったく差がなく拮抗しています。これまでの経験をすべてつぎ込み、1戦1戦、目の前のことに集中してすべてを引き出していきます。応援よろしくお願いします!



■「未経験のサーキットに対応する」を目的に坪井が2度目のTPC参加
今年はトヨタとのパートナーシップでTPC(Testing of Previous Cars/旧型車を用いたテスト)のプログラムを作りました。これは(トヨタの会長である豊田)章男さんと一緒に目指している『いい文化を創り、そのなかで人を育てる』ということを実現する核となるものです。そのなかで日本人ドライバーにもF1へ道のりを作り、可能性があることをわかってもらいたいのです。
その一環として、富士に続いてシルバーストンで行ったTPCでも坪井を乗せました。残念ながら当日は雨もありなかなかパッとしない路面状態だったので、きちんとした彼の評価は難しいです。しかし、目的であった「新しい環境で走ったことのないヨーロッパのサーキットに対応する」ということに関してはある程度の評価はできたと思っています。今年はこれで終わりですが、来年もさらにプログラムをより充実したものにしていきたいと思っています。もちろん、坪井もこのプログラムの一員としてしっかりと育成していきます。
今年最後のTPCはザントフォールトで平川が走行を担当しましたが、残念なことに最後のアタックで、高速コーナーでクラッシュを喫する結果になってしまいました。クラッシュの原因の詳細をここで触れるのは避けますが、複数の事柄が絡んだ結果だと認識しています。ここまでTPCでは様々な成果をあげていましたし、平川自身もいい感じで積み上げてきたと思います。ですから今年最後のアタックをクラッシュで終えたのは残念ですが、1年を通じて見ると、素晴らしい意義のある初年度だったと評価しています。

(Text : Ayao Komatsu)
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| 10/25(土) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
| フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
| 10/26(日) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
| 予選 | 結果 / レポート | |
| 10/27(月) | 決勝 | 結果 / レポート |
| 1位 | ランド・ノリス | 357 |
| 2位 | オスカー・ピアストリ | 356 |
| 3位 | マックス・フェルスタッペン | 321 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 258 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 210 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 146 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 97 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 41 |
| 10位 | アイザック・ハジャー | 39 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 713 |
| 2位 | スクーデリア・フェラーリHP | 356 |
| 3位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 355 |
| 4位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 346 |
| 5位 | ウイリアムズ・レーシング | 111 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 72 |
| 7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 69 |
| 8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 62 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 60 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 20 |
| 第19戦 | アメリカGP | 10/19 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |


