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グラウンドエフェクトが生む“闇”。伊仏両紙が指摘する課題「F1は今や1コーナーまでのレースだ」

2025年10月22日

 レッドブルのメカニックのひとりは、マシンがフォーメーションラップを開始した後、グリッド上で何をしていたのだろうか? また、スタートはF1有史以来、レースの決定的な瞬間であり続けてはいるが、今日その重要性はさらに高まっている。それは何故か? ふたつの話題にまたがる『グラウンドエフェクト』の功罪について、フランス、イタリアの両紙による興味深い指摘を見てみよう。


 レッドブルはサーキット・オブ・ジ・アメリカズの日曜、メカニックのひとりがマシンのスタート後にグリッドに戻ったため、罰金を科された。フランス大手『L’〓quipe(レキップ)』によれば、ランド・ノリス(マクラーレン)をはじめとする一部のドライバーは、少なくとも2年前からこの方法……つまりマーカーを用いたグリッド停止位置の誘導、確認方法を採用しているという。

 2022年にグラウンドエフェクト“クルーザー”が登場して以来、シングルシーターは巨大化し、ドライバーがシートに座っている間は周囲がほとんど見えない。これはとくにヘルメットの底部に装着され、頭部を肩の高さで保つ安全装置ハンスシステムが横方向の動きを制限することで顕著になる。


 グラウンドエフェクトは、床下のトンネルを通って車体の下を流れる空気によって車体の下に真空状態(ベンチュリー効果)が生じ、吸引効果が発生して車体が地面に張り付く。物理法則はシンプルで、クルマが速くなればなるほど、この現象はより強力になる。


 この事実詳細は、例えばニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)などより小柄なノリスにとってなおさら重要だ。この英国人ドライバーは、今季のバーレーンでスタート時のグリッドポジションが悪かったとしてペナルティを受けた。


 自分の停止位置を示す小さな白いスクエアを越えることなく最適なポジションを確保するため、ドライバーたちは壁がそれほど遠くない場合は、白い線の数センチ手前に引かれた黄色い線を目印にする。その傍へ、ドライバーの指示に従いメカニックが壁に絶縁(養生)テープを貼る。


 そしてオースティンの日曜、予選2番手だったノリスはコース左側、ピットレーンを守るゲート──とくにピットレーン出口を守る壁のすぐ近くにいた。この巨大ゲートは、スチュワードが激しい衝突からピットのサインガード守るため走行セッション前に慎重に閉じるものだ。


 スチュワードの調査によると、マシンがフォーメーションラップに出発し、集団が去ったあと、レッドブル最後のチームメンバーはガレージに戻るためにコースを横切ったが、なぜか再びゲートの側に戻った。マックス・フェルスタッペンのマシンがいた場所ではなく……。


 これもレースではおなじみの妨害工作のひとつで、ある種の“いやがらせ”に近い行為だが、ノリスのテープを剥がし停止位置の視認を混乱させようとしたためと思われる。現時点でこれを禁止する規則や規定はないが、罰せられたのはスポーツマンシップにもエレガントさにも欠けるこの行為ではなく、禁止されているにもかかわらずコースに戻った行為の方だった。

レースではおなじみの妨害工作のひとつで、ある種の“いやがらせ”に近い行為ではある
パドックで過ごす面々のなかには、ライバルに対し禁止されていない領域でわずかでもアドバンテージを稼ごうとする思考回路を持つ者がいる

 パドックで過ごす面々のなかには、ライバルに対し禁止されていない領域でわずかでもアドバンテージを稼ごうとする思考回路を持つ者がいる。今回はその端的な例だが、それは無線であれ、車体設計であれ、精神面への揺動であれ、方法には事欠かないし、それがF1の歴史だと言ってしまってよいほどだ。


 一方で、この小柄なドライバーと2022年に始まったレギュレーションサイクルの組み合わせで生じた事案以外にも、イタリアが誇る老舗モータースポーツ総合誌『autosprint.it(アウトスプリント)』は、本来ならオーバーテイクの機会の増加、そして何よりもダーティエアの中でのマシンのレース能力の向上という点で非常に有望に見えたこの車両規定が、レースの本質的な部分をさらなる危機にさらしているとも指摘する。


 現行グラウンドエフェクト規定で過ごした3年間を経て「オーバーテイク操作が再び極めて複雑になっている」とした同誌は「明確に言えば、オーバーテイクはドライビング技術の頂点であるべきで、困難で、激しい戦いを強いられ、結果が不確実でなければならない」と宣言。日曜をライバルの背後6位で終えたジョージ・ラッセル(メルセデス)の言葉を引用した。


「F1は今や1コーナーまでのレースだ。グリッドオフ(発進)はうまくいった。マックスがランドをカバーしてくれた。彼がシャルル(・ルクレール/フェラーリ)から身を守るためアウト側を回るだろうと思っていたが、そうはならなかった。彼の後ろに引っかかってしまい、ルイス(・ハミルトン/フェラーリ)とオスカー(・ピアストリ/マクラーレン)に追い抜かれてしまった。本当にフラストレーションが溜まったよ」とターン1への自身の走行を振り返りながら総括したラッセル。


 オースティンで見られた、成功率の低い難しい操作や走行ラインの選択肢といった、コース上のオーバーテイクの難しさに関する話題に戻ると、ラッセルは次のように付け加えた。


「タイヤのデグラデーションは発生していない。トップ6の最速マシンと最遅マシンの差はわずか0.3秒だ。通常、オーバーテイクには少なくとも0.5秒の差が必要なんだ。だからもし最初のコーナーを過ぎて3番手だったら、表彰台に上がれたはず。ところが実際には6番手で過ごし、そのままフィニッシュしてレースを終えた」


 大柄かつ鈍重そうな挙動のマシンが、路面に吸い付きながら走る。いかにリヤウイングを開こうとも、相手が同じ条件で揃えば相対差も生めない。それゆえに予選こそが間接的に週末の重要な局面となる。


「予選であと0.20秒速ければ、決勝ではフロントロウからスタートし、おそらく2位でフィニッシュできていた」と続けるラッセル。


「予選……つまり最初のコーナーこそが非常に重要で、2回のピットストップを行ったレースは記憶にない。残念ながら、レースは連続して行われてしまうんだ」

現行グラウンドエフェクト規定で過ごした3年間を経て「オーバーテイク操作が再び極めて複雑になっている」
「F1は今や1コーナーまでのレースだ」とジョージ・ラッセル(メルセデス)


(autosport web)


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ドライバーズランキング

※アメリカGP終了時点
1位オスカー・ピアストリ346
2位ランド・ノリス332
3位マックス・フェルスタッペン306
4位ジョージ・ラッセル252
5位シャルル・ルクレール192
6位ルイス・ハミルトン142
7位アンドレア・キミ・アントネッリ89
8位アレクサンダー・アルボン73
9位ニコ・ヒュルケンベルグ41
10位アイザック・ハジャー39

チームランキング

※アメリカGP終了時点
1位マクラーレン・フォーミュラ1チーム678
2位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム341
3位スクーデリア・フェラーリHP334
4位オラクル・レッドブル・レーシング331
5位ウイリアムズ・レーシング111
6位ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム72
7位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム69
8位ステークF1チーム・キック・ザウバー59
9位マネーグラム・ハースF1チーム48
10位BWTアルピーヌF1チーム20

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