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ルクレールをいら立たせたブレーキのオーバーヒート。フェラーリの根本的なパフォーマンス不足に起因する問題か

2025年10月10日

 F1シンガポールGPで、ブレーキマネジメントの問題がフェラーリのレースパフォーマンスを損ない、SF-25の効率性に欠陥があることが露呈した。マリーナベイ・サーキットはブレーキへの負荷が大きいコースではあるが、フェラーリほど深刻なブレーキのオーバーヒート問題を抱えたチームは他になかった。

 シャルル・ルクレールのオンボード映像を通してレース全体を確認すると、彼のレースエンジニアからの無線指示によって、5周目の時点ですでにブレーキマネジメントを強いられ、ブレーキングゾーンで攻めることを許されず、レースの大半を“リフト・アンド・コースト”に費やしていたことがわかる。


 F1チームがドライバーに指示するこの“リフト・アンド・コースト”とは、ブレーキングエリアより手前でスロットルを戻し、惰性で走らせることで、これによりブレーキへの負担を軽減することができる。


 シンガポールでは、ルクレールは5周目の時点でこの走法を指示されていた。レース序盤は燃料が多く車重が重いため、初期段階でのリフト・アンド・コーストは珍しくはなく、当初はそれほどペースに影響しているようには見えなかった。彼はオスカー・ピアストリ(マクラーレン)にはおいて行かれたものの、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)の前には安定してとどまっていたのだ。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2025年F1第18戦シンガポールGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 しかし17周目にはリヤブレーキが再びオーバーヒ−ト。そのために以後の3周にわたって、ルクレールは左右のリヤブレーキを交互に保護するよう指示を受け、当然ながらより多くのリフト・アンド・コーストを行うよう求められた。


 21周目には「徐々にプッシュを始めていい」と無線が入ったが、28周目と29周目には再び「リヤブレーキを保護せよ」との指示が飛び、リフト・アンド・コーストが再開された。


 その10周後、状況はさらに悪化した。リヤを守るためにブレーキバランスを前寄りにした結果、今度はフロントブレーキがオーバーヒートし始めたのである。これによってルクレールはコーナー進入で思うように攻めることができなくなり、後方のアントネッリにとっては接近しやすい状況となった。


 51周目までに状況は絶望的となった。ついに4つのブレーキディスクすべてがオーバーヒートし、ターン16でアントネッリに簡単に抜かれて5番手の座を明け渡すことになったのだ。さらに3周後、ルイス・ハミルトンを先行させたルクレールは、無線で怒りを爆発させた。彼はレース後も、まず無線でチームに対してフラストレーションを示した後、メディアと対面した際には比較的穏やかにではあったが、やはり不満を表した。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2025年F1第18戦シンガポールGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 フェラーリは、予選と決勝のセッティングを決める段階で、ブレーキ冷却用のダクトの開口部を過度に狭めていたともいわれている。


 エアインテークが小さいほど空力面のメリットがある。空力効率がわずかに向上するのだが、その効果はごく小さいものだ。それでも全体のタイム差が非常に小さいなか、フェラーリは、設計上の制約を抱えたSF-25のパフォーマンスを少しでも上げるために、リスクをとろうと考えたのかもしれず、それが行き過ぎた可能性がある。しかし冷却不足がルクレールのレースを台無しにし、最終的にはハミルトンのマシンの左フロントブレーキディスクが故障して、彼は順位を落とす結果になった。

ルイス・ハミルトン(フェラーリ)
2025年F1第18戦シンガポールGP ルイス・ハミルトン(フェラーリ)

 次戦の舞台オースティンは、ハードブレーキングが必要なポイントが4カ所あるコースだ。フェラーリはシンガポールでのような混乱を再び繰り返さないように、空力効率とブレーキ温度の最適な妥協点を見出す必要がある。



(Text : GrandPrix.com)


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